今回は、VMware が提供する DRaaS 「VMware Cloud Disaster Recovery」が注目されている理由や採用するメリットについてご紹介します。
目次
- 災害対策の悩み
- ここが違う!クラウドの災害対策
- VMware が提供する2つの DRaaS
- VMware Cloud Disaster Recovery が注目されている理由
- 要件に合わせて選べるクラウドインフラ
- まとめ
災害対策の悩み
ビジネスの継続を目的として IT の災害対策を導入することはとても重要です。しかし、災害対策には大規模な予算が必要になるのが一般的です。その理由は、本番サイトと同等のインフラを備えたデータセンター(リカバリサイト)を遠隔地に準備する必要があるためです(図1)。また、リカバリサイト側のインフラは、有事の際にいつでも利用できる状態を維持する必要があるため、インフラの監視やライフサイクル管理(バージョンアップ、パッチ適用など)の運用業務も発生します。
図1 従来の「災害対策の悩み」
さらに、データセンターの IT システムには、ハードウエア製品のサポート期限をきっかけとしたシステム更改が数年毎に発生します。災害対策環境を導入した後は本番サイトとリカバリサイトの両方でシステム更改を繰り返すことになります。災害対策環境を維持するためには、長期的にも多くの予算が必要です。
ここが違う!クラウドの災害対策
そこで注目されているのがクラウドを活用した災害対策サービス(DRaaS)です。VMware が提供する DRaaS を利用すれば、リカバリサイト用のデータセンターの契約やインフラの調達および構築は不要です(図2)。同様に、数年に一度のシステム更改も発生しません。また、クラウドサービスのインフラは VMware が運用するので、これまでのような厳重なインフラ監視も不要です。さらに、データのバックアップやレプリケーション機能、フェイルオーバー機能などは DRaaS が提供しますので、災害対策用ソフトウエアを個別に調達する必要もありません。
図2 従来の災害対策と VMware が提供する DRaaS の違い
インフラ管理者にとっても DRaaS を採用するメリットはあります。VMware の DRaaS で使用するインフラは vSphere で構成されているので、既存環境と同じく vCenter から仮想マシンを管理できます(図3)。これまで培ったスキルがそのまま活かせるため、スムーズかつ短期間で導入できます。
また、クラウド側のネットワークやストレージには VMware NSX や vSAN が採用されているので、オンプレミスの設計概念をそのままリカバリサイトに持ち込みやすいというメリットがあります。その結果、災害対策のインフラ設計がシンプルになり、事業継続計画も立てやすくなります。
図3 既存オンプレミス環境と親和性の高い VMware の DRaaS
VMware が提供する2つの DRaaS
VMware は 2つの DRaaS を提供しています。1つは VMware Site Recovery Manager をベースとした「VMware Site Recovery」です。もう1つは、2020年から提供を開始した「VMware Cloud Disaster Recovery」です。
図4 VMware が提供する2つの DRaaS
この2つのサービスの大きな違いはバックアップデータを保持する場所です。VMware Site Recovery (図4の左側)では、バックアップデータはクラウドインフラの中のストレージ(vSAN)に保持されます。
一方、VMware Cloud Disaster Recovery(図4の右側)の場合は、専用に準備されているクラウドストレージにバックアップデータを保持します。バックアップデータを専用ストレージに保持すれば、クラウドインフラは常設しておく必要がなくなるためコスト削減効果が期待できます。この理由から、DRaaS を検討している企業の皆さまから問い合わせが多いのが VMware Cloud Disaster Recovery です。
VMware Cloud Disaster Recovery が注目されている理由
VMware Cloud Disaster Recovery は、災害対策に必要な制御機能とバックアップデータを保持するクラウドストレージを提供するサービスです。このサービスのコスト削減効果を理解するために、まずは課金の仕組みについて整理しましょう。
VMware Cloud Disaster Recovery は、災害対策の保護対象とする仮想マシンの台数とそのバックアップデータの容量に対して課金します。一方、フェイルオーバー先のリカバリサイトには、VMware Cloud on AWS のクラウドインフラ「Software-Defined Data Center(SDDC)」を利用します。つまり、VMware Cloud Disaster Recovery の課金とは別に、リカバリサイトのクラウドインフラにも課金が発生します(図5)。
図5 VMware Cloud Disaster Recovery のコンポーネントと課金対象
ここで注目すべきは、VMware Cloud Disaster Recovery の場合、有事の際だけリカバリサイトのインフラを展開して仮想マシンを復元できる点です。クラウドの特徴を活かして必要な時だけ利用すれば良いので、コスト削減効果が期待できます。
もう少し補足しましょう。VMware Cloud Disaster Recovery の場合、バックアップデータは専用のクラウドストレージに保持されます。平常時は、リカバリサイトのインフラは準備せずにレプリケーション(定期的なバックアップ処理)だけ実行しておきます(図6)。
図6 VMware Cloud Disaster Recovery の運用イメージと課金対象(オンデマンド方式選択時)
有事の際、オンデマンドでクラウドインフラを展開します(図6の「DR 発動フェーズ」)。この時点からクラウドインフラには課金が発生します。その後、フェイルオーバー処理を実行してクラウドストレージのバックアップデータから仮想マシンを素早くリカバリサイトに復元します。
本番サイトが復旧したら、クラウド上のデータを本番サイトに戻して仮想マシンを復元します(図6の「復旧フェーズ」)。この時、リカバリサイトのクラウドインフラは削除できます。従量課金の対象であるクラウドインフラは、必要な時だけ利用して不要になれば削除しておくことができるので、コスト削減効果が期待できるというわけです。
要件に合わせて選べるクラウドインフラ
VMware Cloud Disaster Recovery の場合、要件や予算に応じてリカバリサイト側のクラウドインフラの構成が選択できます。例えば、コスト削減を優先しつつ災害対策を導入したい場合は、有事の際だけクラウドインフラを展開する方法が選択できます(図7の左側 -「オンデマンド」)。
一方、ビジネスの継続性を重視して RTO をできる限り短くしたい場合は、リカバリサイトに必要最低限のクラウドインフラをあらかじめ展開しておき、有事に備えることができます(図7 の右側 -「パイロットライト」)。尚、クラウドインフラのリソースは災害対策以外の目的で利用できます。平常時からクラウド側にもアプリケーションを動かしておけば、リソースの無駄は生じません。
図7 VMware Cloud Disaster Recovery で選択可能なリカバリサイトの構成
まとめ
今回は、クラウドを活用した災害対策サービスで注目度の高い VMware Cloud Disaster Recovery をご紹介しました。VMware Cloud Disaster Recoveryを活用すれば大規模な初期投資を抑えつつ災害対策を導入できます。さらに、この DRaaS の仕組みを応用して、ランサムウエア被害から素早く復旧する機能も提供しています。ビジネスの継続性をさらに高める効果が期待できますので、ぜひご検討ください。
関連情報リンク
- ブログ「ランサムウェアの復旧対策が重要な理由」(2023年8月)
- ブログ「VMware Ransomware Recovery とは」(2023年8月)
- ブログ「VMware Cloud Disaster Recovery の活用方法」(2023年7月)
- ブログ「VMware Cloud Disaster Recovery の最新アップデート」(2021年6月)
- ブログ「VMware Cloud Disaster Recovery の最新アップデート」(2021年4月)
- ブログ「VMware Cloud Disaster Recovery の発表」(2020年10月)
- ブログ「オンデマンドな災害対策 VMware Cloud Disaster Recovery」(2020年11月)
- VMware Cloud Disaster Recovery の価格
- VMware Cloud Disaster Recovery – TCO 計算ツール(英語)