こんにちは、SEの川崎です。
『新卒2年目 SE 社員が贈る 仮想デスクトップのキソ!』シリーズ、スピンオフ版の第2段は、第7回の補足として、VMware App Volumes ™ (App Volumes)に関する記事を2回にわけてお届けいたします。
App Volumes については、以前にも ブログ記事 がありますが、今回はインストール方法なども含めてもう少し具体的に見ていくことで、こんな用途で実際に使えそうだなというイメージをつけていただければと思います。
なお、本記事の内容はバージョン 2.10 をベースとして記載いたしますので、ご了承ください。(バージョン 3.0 のリリースノートにて本番環境での使用に 2.10 を推奨しているため)
§1.App Volumes の用途と利用シーン
§1-1.利用シーン
App Volumes の機能に入る前に、まずは App Volumes がどんな場面で役に立つのか、見ていきましょう。
仮想デスクトップのキソ!ブログの別の回でも扱っておりますが、「リンククローン」や「流動割り当て」という言葉は覚えておいででしょうか。リンククローンは、マスターVMとそのスナップショットからレプリカVMとその差分によって多数の仮想デスクトップを展開する方式で、OSイメージの管理やストレージ容量の削減で効果がありました(図1 – ①)。
流動割り当ては、各ユーザに対して特定のデスクトップを固定して割り当てず、ログオフ後に接続する度に異なるデスクトップ仮想マシンに接続する方式でした。これは、用意する仮想マシンが少なくてすむという利点がありました(図1 – ②)。
§1-2.App Volumesで解決される課題とは?
一見メリットが多いリンククローン×流動割り当てという方式ですが、App Volumes を利用しない、これまでの方法を前提として考えた場合には、いくつか課題がありました。
その主要なものがアプリケーションのインストールに関わる課題です。まず流動割り当てでは、仮にある仮想マシンにアプリケーションをユーザがインストールしても、次のログインで別のマシンにログインしては意味がなくなってしまいますので、専用割り当てにする必要があります。また、リンククローンで展開された仮想マシンは、更新や再構成の操作のたびに差分ディスクがリフレッシュされてしまい、アプリケーションは管理者がマスターイメージにインストールする必要がありました。(**通常ディスクや移動ユーザプロファイル、persona managementを利用してもアプリケーションインストール領域は通常は対象外になります、図2 – ①) しかしながら、ユーザ個別に利用するアプリケーションを全て管理者が代行してインストールすると、マスターイメージが肥大化しますし、管理者の工数も増えてしまいます(図2 – ②)。部署など特定の業務との関連のアプリケーションに絞ったとしても、全社に対してVDIを展開するような場合には、マスターイメージがいくつも存在し、その管理もそれなりに煩雑になってしまいます(図2 – ③)。
これらの課題がApp Volumesで解決されます。App Volumes を利用した環境では、部署に固有のアプリケーションはAppStack化する(図3 – ①)、ユーザ固有のアプリケーションはWritable Volumesによって保持する(図3 – ②)、といった方法をとることで、マスターイメージは共通の一つのイメージに統一した上で、各ユーザには必要なアプリケーションを提供することができます (図3 – ③)。
§2. App Volumes を使おう
§2-1.App Volumes 2.10 の環境構成
はじめに、App Volumes を利用する際の全体像を見てみましょう。今回は VDI 環境の場合を例に、追加される関連コンポーネントを確認します。
なお、今回は App Volumes のコンポーネントに注目しているため、View 部分については簡略化しています。また、App Volumes は物理環境に対しても使用可能ですが、今回は扱いませんので詳細は弊社ドキュメントを参照ください。
2-2. 各コンポーネントの役割
App Volumes Manager (Windows Serverにインストール): App Volumesの中核コンポーネントとして、管理者向けのWebコンソールを提供し、App Volumes管理、AppStackやWritable VolumesのAssignに利用します。 |
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App Volumes Database: AppStack、Writable Volumes、ユーザ、コンピュータ、それらの紐付けなどに関する構成情報を格納するSQLサーバデータベース |
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App Volumes Agent: AppStackやWritable Volumesの割り当てを受けるWindows デスクトップにインストールするソフトウェア。 |
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Provisioning Computer: AppStack作成用コンピュータ。AppStackを Attach してアプリケーションをインストールする際に利用します。 |
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AppStack: 一つまたは複数の仮想デスクトップにAttachされることで、ユーザは仮想マシンにもとからアプリケーションがインストールされていたかのようにアプリケーションを利用することができます。 |
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Writable Volume: ユーザごとに用意される、読み書き可能なボリュームです。ユーザのログインに応じて仮想マシンにAttachされ、セッションが変わってもユーザに固有の情報を保持するために使われます。保存内容としては、ユーザのインストールするアプリケーションとその設定情報、アプリケーションのライセンス情報、ユーザとコンピュータのプロファイル、データファイルになります。 |
2-3. 構築の大まかな流れ
構築のおおまかな流れとしては下記の5ステップになります。
- App Volumes Managerをインストール
Windows Server にISOファイルをマウントし、App Volumes Manager をインストールします。
- App Volumes Managerを構成
App VolumesのWebコンソールに接続し、構成作業を行います。
Active Directory、App Volumes の管理者グループ、vCenter Server、AppStack や Writable Volumes のテンプレートを格納するデータストア、などを登録します。
- App Volumes Agentをインストール
仮想デスクトップにISOファイルをマウントして、App Volumes Agentをインストールします。インストールの設定中にApp Volumes Manager を指定します。
- AppStack を準備
AppStack を作成して、必要とするユーザに割り当てます。詳しくは次回扱います。
- Writable Volumesを準備
必要とするユーザに対して Writable Volumes を作成します。こちらも詳しくは次回扱います。
2-4. 環境ができあがるとどう見えるか
では、できあがった環境を確認してみましょう。
まずはWindows OS 内部から、ディスクの管理でマウントされているボリュームがどう見えるか確認します。
次に vSpehere Web Client から確認します。
おわりに
さて、今回はここまでのご紹介になります。続く”その2”では App Volumes の肝となる AppStack と Writable Volumesについて、作成方法などもう少し詳しいところを確認し、その上でユーザは実際にはどのように便利に利用できるのか、を説明して参ります。次回も楽しみにお待ちください!
新卒2年目社員が贈る 仮想デスクトップのキソ!
第1回 仮想デスクトップと Horizon 6 ( with View)
第2回 仮想デスクトップの基本構成
第3回 プール作成と割り当て
第3.5回 View Composer の仕組み
第4回 接続方法と接続元端末
第5回 公開アプリケーションのキソ
第5.5回 ThinAppによるアプリケーション仮想化のキソ
第6回 スケールアウト対応
第7回 完結編、仮想デスクトップと関連ソリューション総まとめ
第 8.1 回 App Volumes を使ってみよう その1
第 8.2 回 App Volumes を使ってみよう その2