こんにちは。 前回に引き続き、新卒 2 年目の椨木(たぶき)です。
今回の新卒ブログ、“VMware Horizon 6 (with View)” (以下 “Horizon” とします)についてのキソをご紹介するものですが、第1回目から第3回目の記事では、デスクトップ環境を『まるまる』仮想化する方法についてお話してきました。この方式(VDI方式と呼びます)を使用すると、ユーザ一人ひとりに仮想デスクトップ環境(仮想マシン)を割り当てる事になるため、一つのデスクトップ内で複数のアプリケーションを起動し、使用する事ができます。しかし、一方で
『Web アプリケーションを使用したいだけなのでブラウザが使えれば問題ない!』
など、特定のアプリケーションのみを使用させたい・使用したい場合があるかと思います。
ここでは、そういった際に有用となるHorizon の機能の一つ、『Remote Desktop Service (RDS) を用いたアプリケーション配信(公開アプリケーション)』をご紹介します。
§1. Horizon Client からアプリケーションを起動する! ~公開アプリケーション~
Remote Desktop Service を用いたアプリケーション配信を使用すると、ユーザはHorizon Client から「デスクトップ環境」ではなく「アプリケーション」を使用できる様になります。
Horizon Client に表示されたアプリケーションのアイコンをクリックすると、目の前にアプリケーションが現れますが、このアプリケーションは仮想サーバ(Microsoft Windows Server)内で展開されたアプリケーションの画面情報のみがネットワークを通じて手元の端末で表示されている状態です。
図1はHorizon Client からアイコンをクリックしてMSペイントを表示させたものです。
図1: Horizon を利用したRDS方式アプリケーション配信
この『Remote Desktop Service を用いたアプリケーション配信』機能は一般には『公開アプリケーション』方式と呼ばれており、技術的にはMicrosoft の Remote Desktop 方式を利用して、アプリケーションを配信します。この方式はVDIとは異なり、複数のユーザが共有して一つの仮想マシン (Windows Server) にインストールされたアプリケーションを使用する事ができます。
ここからは、『Remote Desktop Service を用いたアプリケーション配信』機能を『公開アプリケーション』と呼んでご紹介します。
§2. 公開アプリケーションの特徴
「アプリケーションだけを配信する」公開アプリケーション、その大きな特徴2点をご紹介します。
■ライセンス料金の削減に寄与
これは第1回目の記事のサーバVDI と同様の理由なのですが、Windows 7 やWindows 8.1のようなクライアントOSを使用したVDIを使用するためには、「VDA」と呼ばれる買い切りできないライセンスが必要になります。
この買い切りできないライセンスが、VDIを使用すると大変高価になってしまう印象を持たれる一因となっていました。
公開アプリケーションはWindows Server OSを利用するので、VDAライセンスではなく、 RDS Device/User CAL /Windows CAL を使用すればよくなるため、導入時のコストを抑える事ができます。
また、複数のユーザで一つの仮想マシンを共有する様になるので、ユーザに対する仮想マシンの台数がVDI使用時より大幅に削減され、結果として仮想マシンを載せるためのESXi ホストの台数やホストを動作させるための電気代を削減する事が可能です。
■ 簡単に使用したいアプリケーションにアクセス
ユーザに使用させたいアプリケーションが非常に限定されている場合、デスクトップから毎回アプリケーションを選択するVDI方式よりも、アプリケーションの画面をいきなり見ることの出来る公開アプリケーションの方が簡単にアプリケーションを使用する事ができます。
公開アプリケーションは、
- 閉じられたネットワーク内のデスクトップPCからVDIのネットワークを通してWebブラウザ「だけ」使用したい
- 外出中、出張中に出先から社内アプリ「だけ」を使用できる様にしたい
など、特定のアプリケーションを使用できる環境を作成したいお客様に多くご採用いただいています。
§3. デスクトップ仮想化方式の使い分け
Horizon は、VDIはもちろん、公開デスクトップや公開アプリケーションにも対応したデスクトップ環境仮想化製品ですので、「どういった時にどのような方式を取れば良いのか解らない!」という方も居るのではないでしょうか。ここでは、様々なデスクトップ仮想化方式の使い分けの基準をご紹介します。
まずクライアントOSでしか動作しないアプリケーションを使用するユーザ「のみ」にクライアントOS VDIを割り当て、それ以外のユーザにはサーバOSを用いる方式を採用することで、VDAライセンスを最小限に抑えます。
次に、「サーバ VDI」と「公開アプリケーション」の使い分けですが、「VDI」は一つのデスクトップ環境を一人のユーザが専有する方式、「公開アプリケーション」は一つの仮想マシンを複数のユーザで共有する方式です。したがって、「公開アプリケーション」を使用すると、一つの Windows Server が落ちてしまった場合の影響範囲が「VDI」よりも大きくなる傾向があります。
よって、ユーザ単位で性能を保証したい場合や OS(仮想マシン) の停止に伴う影響範囲を小さくしたい場合には「サーバVDI」、それ以外の場合には「公開アプリケーション」を使用する事が望ましいです。
また、マルチセッション(複数のユーザが同一アプリケーションを使用する方式)に対応していないアプリケーションを使用する場合は「VDI」方式を採用する必要があります。
このように、ユーザの使用用途に合わせて正しく割り当てる仮想デスクトップ方式を決める事で、ライセンスコストはもちろん、サーバ台数の削減も行う事ができます。
§4. まとめ
今回は「公開アプリケーション」についてご説明いたしました。
ユーザが使用したい、あるいは管理者がユーザに使用させたいアプリケーションが限定的である場合に、非常に有効な機能である事がお解かりいただけたかと思います。
この「公開アプリケーション」方式、これまでにご紹介してきた仮想デスクトップのコンポーネントにRDSホストを追加するだけで実現できます。
詳しい環境の構築方法については、2014年10月1日の記事をご覧ください。
図4: vSphere + Horizon で多様なデスクトップ環境を実現
「VDI」や「公開アプリケーション」、様々な方法を駆使して、ユーザのニーズにあったコストパフォーマンスの良い仮想デスクトップ環境を作りましょう!
新卒2年目社員が贈る 仮想デスクトップのキソ!
第1回 仮想デスクトップと Horizon 6 ( with View)
第2回 仮想デスクトップの基本構成
第3回 プール作成と割り当て
第3.5回 View Composer の仕組み
第4回 接続方法と接続元端末
第5回 公開アプリケーションのキソ
第5.5回 ThinAppによるアプリケーション仮想化のキソ
第6回 スケールアウト対応
第7回 完結編、仮想デスクトップと関連ソリューション総まとめ
第 8.1 回 App Volumes を使ってみよう その1
第 8.2 回 App Volumes を使ってみよう その2