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最適な"ポリシー"の設定~VMware vCenter Operations Manager活用法(最終回)~

こんにちは、VMwareの塚田です。
早いもので、連載「VMware vCenter Operations Manager活用法」も今回(第5回)が最終回です。今回のテーマは、「ポリシーの設定」です。

vC Opsが仮想基盤を正確に分析できるかどうかは”ポリシー”の設定次第

これまでの連載において、VMware vCenter Operations Mangaer(以下、vC Ops)は「仮想基盤にあと何台の仮想マシンを追加可能か?」や「リソースを無駄遣いしている仮想マシンはないか?」などの疑問に答えられる情報を提供する事、そして「リソースの需要予測」を支援する事が可能である事を紹介して参りました。
これらを行うため、vC Opsは仮想基盤を構成するサーバやストレージのリソースの利用状況、仮想マシンの構成等の情報を収集し分析し続けています。その分析を通して、仮想マシンの平均的な構成やリソースの需要や、仮想基盤のリソース使用量の推移を算出しています。
ここで、vC Opsが仮想基盤の情報を収集、分析することについて、次のような疑問が湧いて来ませんか?四半期末毎、または半年に1回のみ起動するバッチ処理専用の仮想マシンがあるのだが、それのCPU使用率やメモリ使用量も織り込んで計算してくれるのだろうか?

  • 四半期末毎、または半年に1回のみ起動するバッチ処理専用の仮想マシンがあるのだが、それのCPU使用率やメモリ使用量も織り込んで計算してくれるのだろうか?
  • CPUとメモリに一時的に高い負荷がかかるバッチ処理を受け持つ仮想マシンの場合、そのような「負荷のピーク」を正しく読み取り、ノイズを排除するような仕組みを持っているのだろうか?
  • 開発環境用仮想マシンはメモリのオーバーコミットを積極的に行い、統合率を上げたい。一方、本番環境用の仮想マシンはオーバーコミットをしたくない。このように相反する方針を両立した仮想基盤のキャパシティ管理ができるのだろうか?

実は、上記のような時々起動される仮想マシンの統計情報を正しく読み取ったり、仮想マシン毎に異なるワークロードを正確に解析したりする事はvC Opsにとって非常に重要です。そうしないと、仮想マシンの平均構成を誤って過少に算出したり、仮想基盤リソースへの需要を過少に見積もってしまったりすることが起きかねません。
また、3番目の疑問も重要です。仮想基盤上で処理されるワークロードは一様でないため、「オーバーコミットをしてもよい仮想マシン」と「オーバーコミットをさせたくない仮想マシン」が同時に存在することも当然あり得ます。
そこでvC Opsでは、仮想マシン毎に異なるワークロードの特性を把握し、それぞれのワークロードの特性に合ったリソースの使用量や容量の見積もりができるようにするための設定、「ポリシー」を定義します。また、CPUやメモリ等のキャパシティ管理を行う際、リソースのオーバーコミットを許容するか否か、許容する場合にはオーバーコミットさせる目標も「ポリシー」で定義可能です。
そして、定義されたポリシーを仮想マシンに関連付けすることにより、それぞれに合った分析を行います。

vC Opsのポシリーの設定する

仮想マシンのためのvC Opsのポリシーを構成する大まかな手順は以下の通りです。

  1. 仮想マシンやESXiホストの分類分けする
  2. 上記の分類ごとに適したvC Opsのポリシーを作成する
  3. 作成したポリシーを仮想マシンやESXiホストへ関連づける
  4. vC Opsによるデータ収集および分析結果を確認する

以下では、vC Opsのポリシー作成の詳細について説明いたします。

仮想マシンやESXiホストを分類分けする

まず、仮想マシンやESXiホストをそれが処理するワークロードや期待される SLAに応じて分類分けします。
下の表に分類分けの例を挙げてみましたのでご参照ください。

本番(バッチ型)

本番(インタラクティブ型)

開発環境

ワークロードの特性

特定の時間帯のみ高い

定常的に高い

業務時間のみ
(平均的には低い)

サービス例 バックアップ、週次・月次レポートなど ウェブサーバー 開発環境
リソース配分 CPUオーバーコミット:低
メモリオーバーコミット:なし
CPUオーバーコミット:中
メモリオーバーコミット:なし
CPUオーバーコミット:高メモリオーバーコミット:あり

ポリシーを作成する

上記で分類した仮想マシンやESXiホストごとに適切なポリシーを作成します。作成するためには、vC OpsのvSphere UIから[設定]→[+]をクリックし、ポリシーの編集ダイアログを表示させます。
vcops_6_fig1
ここでESXiホストや仮想マシンのワークロードに応じたポリシーの作成例を3点ご紹介致します。

ポシリーの作成例1: 本番環境用ESXiホスト向けポリシー

vcops_6_fig2

ポリシーの作成例2:  開発・テスト環境用ESXiホスト向けポリシー

vcops_6_fig3

設定内容の詳細については下の表を参照して下さい。

設定項目

本番環境用ホスト向けポリシー 開発・テスト環境用ホスト向けポリシー
3a. 残り容量と時間 残り容量の算出方法(需要ベース、または割り当てベース) 需要ベース、および割り当てベース双方の方法で残り容量と残り時間を算出するよう全ての項目にチェックを入れる 需要ベースのみをチェックする
[急増とピークを考慮するために負荷を使用します] ピーク時の高負荷を分析に織り込むためチェックを入れる ピーク負荷は考慮しないため、チェックを入れない
3b. 使用可能な容量 [高可用性(HA)構成の使用と容量の縮小] ホストがHAクラスタのメンバーの時にチェックを入れる 同左
バッファとして予約する容量の割合(%) 使用率が100%にならないよう、10〜20%程度をバッファとして確保するよう指定する。負荷変動が大きいホストはバッファを多めに確保する(例:40%) 統合率を上げるため考慮しない(バッファを確保しない)
3c. 使用量の計算 CPUオーバーコミット比 1から2程度に(最大でも4程度) 割り当てベースの残り容量分析を選択した場合のみ設定する。4 以上も設定可能。
メモリのオーバーコミットの割合 オーバーコミットしない場合は0%に 20%程度
ディスク容量のオーバーコミットの割合 同上 同上
4c. 低負荷および高負荷 CPU需要、およびメモリ需要のピークの考慮 ピークとして認識するしきい値を70%程度に設定
ピーク負荷が継続する時間を指定(例:4時間) [全範囲]を選択

ポシリーの作成例3: 仮想マシン向けポリシー

適切なポリシーを設定し、仮想マシンへ関連づけることにより、節約可能なリソースをより正確に算出できるようになります。
vcops_6_fig4

設定大項目

設定項目

設定値、および説明

3b. 使用可能な容量 [高可用性(HA)構成の使用と容量の縮小] チェックしない(仮想マシンには無関係)
バッファとして予約する容量の割合(%) 仮想マシンの需要がCPUやメモリの割り当て値を超えるまでの時間(残り時間)をケインさするために利用。負荷変動が大きい仮想マシンは高め(30% – 50% )に設定
4b. VMが過剰サイズとなる状況 CPU, およびメモリ需要がしきい値 ワークロードが低負荷状態と見なす値を設定(15%程度)
4c. VMが不足サイズとなる状況 CPU, およびメモリの需要のしきい値 需要平均を上回ると見なす値を設定(例:50%以上)
需要平均を超過する負荷が持続する時間 ピーク負荷が持続する時間(1〜8時間程度)を設定

ポシリー設定例4: 統計処理の対象期間の設定

vC Opsは、仮想マシンやESXiホストのリソースの利用状況は需要のデータを分析して仮想マシンの平均的なプロファイルを算出したり、キャパシティ残量を計算したりしますが、その計算対象となるデータの期間をポリシーによって指定することが可能です。これを適切に設定することにより、例えば1ヶ月に1回、または四半期に1回だけ起動されるような仮想マシンの需要や構成も正確に分析することが可能になります。
vcops_6_fig5
非傾向ビューの間隔、および間隔数を調整することにより、過剰サイズVMや過小サイズVMなどの長期的統計を取る期間を設定することが可能です。
デフォルト値は[日単位]および30[間隔]です。すなわち、直近30日間のデータが統計処理の対象です。これは週単位、および52間隔まで設定可能です。すなわち直近1年間のデータを統計処理の対象にすることが可能です。

ポリシーと仮想マシンやESXiホストを関連付ける

最後に、作成したポリシーを管理対象の仮想マシンやESXiホストへ関連付けます。
vcops_6_fig6

 ポリシーによる分析結果を確認する

ポリシーを仮想マシンやホストへ関連付けると、vC Opsはデータを収集し分析を行います。その分析結果が妥当なものかどうか確認してみましょう。
ポリシーが適切であれば、vC Opsが算出する仮想マシンの平均プロファイルや残り容量の計算結果はより正確になります。下の図は、ピーク負荷を考慮しないポリシーを使って分析した結果とピーク負荷を正しく考慮したポリシーを使って計算した結果の差異の例を示しています。
vcops_6_fig7
このように、ポリシーの内容を精査し、それを適切な仮想マシンやESXiホストへ関連づけることはとても重要です。

連載終了にあたり

本連載では、5回に渡りVMware vCenter Operations Managerの活用方法を紹介、提案して参りました。
vC Opsは、仮想基盤を導入したもののそれの有効活用に困ってらっしゃる基盤ご担当者、あるいは限られた人数でより多くの仮想マシンを管理したい運用ご担当者の課題の解決を支援致します。本連載では4つの課題の解決法とポリシーの設定方法をご紹介しました。それらが少しでも皆様の課題解決のお役に立てれば幸いでございます。
連載におつき合いいただきありがとうございました。
~VMware vCenter Operations Manager活用法~
第1回 あとどのくらい仮想マシンを載せられるか?(リソース残量を知る)
第2回 どこにリソースの無駄が発生しているのか!(リソースの無駄の把握と削減)
第3回 より多くの仮想マシンを安全に載せていく(統合率を上げていく)
第4回 将来、物理リソースがどのくらい必要か?(需要予測)
第5回 使用環境における”ポリシー”の設定
vC Ops簡単操作ガイド