Sustainability

VMware が Green Software Foundation(グリーン ソフトウェア財団)に加盟

アンドリュー・ウーズナム(Andrew Woosnam

2022 年 1 月 20 日

 

干ばつ、熱波、海面上昇、氷河の融解、さまざまな動物種の絶滅。こうした自然災害がすでに世界各地で発生しています。私たちが日々の暮らしや働き方を今すぐ抜本的に改めないかぎり、今後さらに悪化していくのは間違いありません。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による直近のアセスメントでは、気候変動による最悪の事態を回避するには、世界規模での二酸化炭素排出量を 2030 年までに半減する必要があると警告しています。残された短い年数の間に、世界が力を合わせて有意義な変化を起こさなければなりません。たとえば、データセンターにおいて効率性の向上や再生可能エネルギーの利用を図り、データセンターの運用に伴う二酸化炭素排出量を削減することも、大きな貢献になります。

近年の調査で、2020 年におけるデータセンターの年間エネルギー使用量は世界全体で 205 TWh に達したと推定されています。これは全世界の電力消費量のおよそ 1% に相当します。さらに EPA の計算によると、米国で 205 TWh の電力を発電した場合、およそ 1 億 4,500 万トンの二酸化炭素が発生します。これは、2,600 万世帯に電力を供給する、160 億ガロンのガソリンを燃やす、あるいはスマートフォンを 17 兆回充電した場合の二酸化炭素発生量に相当します。1 年間にこれほどの量の二酸化炭素を吸収し、蓄えるには、1 億 7,800 万エーカー分の成熟林が必要です。これはテキサス州全体よりも広い面積です。

この 10 年で、データセンターのトラフィック量とワークロード量が大幅に増加しました。世界中でデジタル化が進んでいることを考えると、今後も増加傾向は続くと予想されます。IPCC が定めた 10 年目標の達成に向け、テクノロジー業界としての責任を果たすためには、トラフィックとワークロードの増加による影響を軽減しつつ、これらをサポートする方法を見つける必要があります。持続可能なデータセンター/クラウドを構築するためのアプローチは次のとおりです。

  • IT インフラストラクチャの利用率とエネルギー効率を最適化し、世界規模でのワークロードの実行に必要となるエネルギー総量を最小限に抑える
  • 実行に必要なコンピュート リソースが最小限ですむソフトウェアの設計、開発、コーディングを行う
  • いかなる場合であっても、可能な限り、再生可能エネルギー由来の電力を使用してワークロードを実行する

これらを実現するため、このたび VMware は Green Software Foundation(GSF)に加盟いたしました。GSF は Linux Foundation の下に設立された非営利団体であり、持続可能なソフトウェアの構築の重要性を強調し、このメッセージをテクノロジー業界全体で共有することを目的としています。GSF の新しいメンバーとして、VMware は、Microsoft、Accenture、GitHub、NTT データ、ThoughtWorks、Globant などのメンバー企業とともに「グリーン ソフトウェア」の実現を目指し、人、標準、ツール、ベスト プラクティスからなる信頼性の高いエコシステムの構築にあたります。サステナビリティは責任あるソフトウェア開発に欠かせない理念であり、セキュリティ、パフォーマンス、コスト、アクセシビリティと同様に重視すべき取り組みであると私たちは考えています。

グリーン ソフトウェアの原則

「グリーン」なソフトウェアとは、その運用の結果として排出される温室効果ガスを最小化するように設計され、管理されるソフトウェアを指します。グリーン ソフトウェアを開発する際の指針として、GSF は次の 8 つのグリーン ソフトウェア エンジニアリング原則を掲げています。

  1. 二酸化炭素:二酸化炭素効率の高いアプリケーションを構築する
  2. 電力:エネルギー効率に優れたアプリケーションを構築する
  3. 二酸化炭素強度:電力を消費する際の二酸化炭素強度がもっとも小さくなるようにする
  4. 内包二酸化炭素:ハードウェア効率の高いアプリケーションを構築する
  5. エネルギー比例性:ハードウェアのエネルギー効率を最大化する
  6. ネットワーク:データ量を削減し、ネットワーク経由でのデータ転送距離を短くする
  7. 需要形成:脱炭素指向のアプリケーションを構築する
  8. 測定と最適化:段階的に最適化して、全体的な二酸化炭素効率を高める

ソフトウェアが気候に与える影響を軽減するには、さまざまな方法があります。たとえば、仮想化などの戦略をサポートする(物理リソースをより効率的に利用する)、インテリジェント スケーリングなどの管理ポリシーを適用する(不要な処理を実行しない)、脱炭素を意識してソースコードを記述する(再生可能エネルギー由来の電力供給が行われる時間帯に処理を実行し、化石燃料由来の時間帯は実行を控えるようにアプリケーションを設計する)などが考えられます。アプリケーションの実行に必要なリソース(コンピュート、ストレージ、ネットワーク)を最小限に抑えるための手法は、すべてグリーン ソフトウェアの範疇となります。GSF の使命は、これらの手法、メトリック、ツール、ベスト プラクティスを開発、改善、標準化し、開発者や運用担当者がより持続可能なアプリケーションとクラウドを実行できるようにすることです。

グリーン ソフトウェアに長年取り組んできた VMware

2003 年以来、VMware が誇るコンピュート仮想化テクノロジー ESXi が排出回避に直接貢献した二酸化炭素量は合計 12 億トンに達します(出典)。最近では、お客様が vRealize Operations の持続可能性ダッシュボードを使用し、ホストおよび仮想マシン レベルで二酸化炭素メトリックを可視化できるようにしました。VMware のお客様が構築、実行、管理しているワークロードは何百万にも及びます。VMware が承認するアプリケーションに求められる基本的な機能(セキュリティやアクセシビリティなど)として二酸化炭素効率を追加し、VMware がすでに手掛けている、ソフトウェアに起因する二酸化炭素排出の軽減へ向けた取り組みをさらに強化していきます。

グリーン ソフトウェアはまだ新しい分野です。VMware は仮想化および効率的な IT インフラストラクチャのエキスパートですが、グリーン ソフトウェアについては学ぶべきことがまだたくさんあります。それは私たちだけではありません。だからこそ、あらゆるステークホルダーのエコシステムと連携した取り組みが重要になります。VMware は GSF に加盟することで、弊社自身のソフトウェアにグリーン ソフトウェアの原則を取り入れるとともに、お客様ができる限り容易に同じ原則に基づいてソフトウェアを構築できるよう支援する方法を習得するための一歩を踏み出しました。

VMware は、自社およびお客様の事業における温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。この取り組みは VMware の 2030 アジェンダで定義されています。このアジェンダは、より公平、安全で持続可能な未来を築くための VMware のビジョンをまとめたものです。環境、社会、ガバナンス(ESG)の目標を VMware 全体で共有し、サステナビリティ、公平性、信頼性を向上させることを目指しています。VMware の目標は、従業員、お客様、サプライヤー、株主、コミュニティ、そしてこの地球上のすべての命に貢献するテクノロジーを構築することです。

今後は GSF のメンバーとしても、私たちの知識と経験を活かして VMware テクノロジーをさらに発展させ、お客様に貢献してまいります。GSF では、主要なステークホルダーが一致団結して、持続可能なソフトウェア開発へ向けた文化とツールの構築に取り組んでいます。VMware は早い段階から、コアなビジネス戦略の一環としてサステナビリティを取り入れてきましたが、現在ではお客様にとってもサステナビリティの重要性が増しつつあります。事実、Fortune 500 企業の 3 分の 1 が正式にサステナビリティ目標を掲げており、その数はさらに増え続けています。VMware の役割は、グリーン ソフトウェア開発を簡素化し、お客様がこれらの目標を達成できるよう支援することです。GSF に加盟した今、ともに連携して業界のあり方を見直し、グリーン ソフトウェアを例外ではなく「標準」にしたいと考えています。GSF と連携した今後のイベントやプロジェクトも随時お知らせいたします。ご期待ください。

 

アンドリュー・ウーズナム

アンドリューは VMware のモダン アプリケーション プラットフォーム部門のソフトウェア エンジニアです。VMware Tanzu の運用を容易にするためのプロジェクトを手掛けています。