Sustainability Thought Leadership

Earth Month:CO2排出量削減の取り組みとデジタル化のジレンマ

`この記事はジョー・バグリーが執筆した記事の翻訳版です。

4 月は「Earth Month」として、私たち世界中の人々が一度立ち止まり、地球の現状や地球保護のためにさらに何ができるのかを考える月です。テクノロジー業界に身を置く多くの人々にとっても、地球環境や地球保護について考えることは、現代のビジネスに内在するジレンマに目を向けることにつながります。

成長を持続して競争力を維持するために、あらゆる業界の組織が、デジタルトランスフォーメーションに関する取り組みを懸命に進めています。新しいビジネスモデルを開拓し、新たなトレンドに追随していく中で、さまざまな企業がブロックチェーンや仮想現実、エッジコンピューティング、機械学習、AIなどの革新的なテクノロジーを熱心に取り入れています。

しかし、このような計算負荷の高いテクノロジーへの依存度が高まると、CO2排出量削減の妨げになります。正確な数値については人によって意見が分かれるものの、デジタル化を支えるデータセンターがグローバルレベルで大量の電力を消費し、航空産業と同じ規模でCO2を大気中に排出しているという事実を否定する人はいません。しかも排出されるCO2の量は、2025年までに2倍に増加すると予想されています。

そのためテクノロジー業界には、企業が事業におけるCO2排出量を削減しつつ、同時にデジタルテクノロジーも活用できるように支援する責任があります。これらのことを念頭に置きながら、テクノロジー企業が取り組みを強化すべき4つの重要な領域について説明します。

 

  1. スタート時点から本質的なサステナビリティを考慮する

すべての新しいデジタル製品やサービスにおいて、エネルギー効率の高いコーディングを起点に、サステナビリティを組み込むことを前提にするべきであると考えています。VMwareではこれを、「本質的なサステナビリティ」と呼んでいます。この方法は、製品やサービスごとのライフサイクル全体で、エネルギー消費やCO2排出量、電子廃棄物、水の利用量などの、さまざまな環境影響要因を常に考慮する設計・開発アプローチの1つです。実際のところ、後の段階でリバースエンジニアリングを行うよりも、より持続可能性のあるエコシステムを最初から構築するほうが簡単です。たとえばビットコインの場合、クリプトマイニングの炭素集約度を後から引き下げることは絶対にできません。というのも、炭素集約度があらかじめシステムに組み込まれているからです。

 

  1. サプライチェーン全体でサステナビリティを推進する

どの企業も、商品やサービスを生み出す側にもなれば、消費する側にもなります。つまり、どのテクノロジー企業もサプライチェーンを通じて、サステナビリティについて正の連鎖を生み出すことができる機会があり、顧客のCO2排出量削減を支援することができます。

たとえば、当社を含む一部のテクノロジー企業では、サプライヤーにサステナビリティ対応を求める「責任ある調達」の手法を導入しています。このような要件を契約に盛り込むことで、サプライチェーン内でサステナビリティが次々と引き継がれていくことができます。

同様に、テクノロジー企業が自社の製品やサービスにサステナビリティを組み込み、それらを販売するパートナーにもサステナビリティを求めることで、別の方向から同じ効果を生み出すことも可能です。そして、カーボンニュートラルなサプライチェーンの実現を目指すことができます。

具体例として、VMware のZero Carbon Committed Cloud パートナーイニシアティブを紹介しましょう。このイニシアティブでは、100%再生可能なエネルギーでデータセンターを運用することや、2023 年までにカーボンニュートラルを達成することを約束しているVMwareエコシステムのクラウドパートナーを、CO2排出量を抑えたサービスを求めているお客様と結び付けます。また、お客様のサプライチェーンのCO2排出量削減の支援に加え、まだサステナビリティに取り組んでいないVMwareのクラウドパートナーに、取り組みのインセンティブを与える仕組みも用意しています。

 

  1. 事業運営にサステナビリティを組み込む

テクノロジー業界においてCO2排出量を削減するためには、それぞれの関係者が自社においてグローバルレベルでビジネス手法や事業に、環境サステナビリティを組み込む必要があります。VMwareでは、自社の事業とサプライチェーンでCO2排出量を実質ゼロにすることを 2030 年までに達成する取り組みを続けており、着実に大きな成果を上げています。

VMwareをはじめとする多くのIT企業が、ビジネスの成長を、CO2排出量やリソースの消費量と切り離して考えることを目標にしています。この目標を達成するには、まず組織ごとにCO2排出量を把握、監視、分類する必要があります。

排出量におけるスコープ1では、熱源や車両など企業が所有するリソースに起因して発生するものを指します。スコープ2は、企業が間接的に排出している CO2 排出量を意味し、主に他社が発電した電気を購入するケースが該当します。スコープ3は、通常最も大規模かつ扱いが難しく、サプライチェーンに立ち返って見直す必要があります。サプライヤーから製品を購入したときや、顧客が自社の製品を使用したときなどに発生する排出量であり、間接的に企業の責任となるものです。

当然、多くの企業ではコントロール可能なスコープ1、2の排出量をすぐに削減することができます。たとえば、利用するエネルギーや自動車を、再生可能エネルギーや電気自動車に変更すればよいのです。しかし、コントロールがほとんどできないスコープ3の排出量は、扱いがずっと困難になります。そのため排出量削減の責任は経営幹部に負わせることが正しい対処法です。

 

    4. 業界全体で協力し、サステナビリティを推進する

テクノロジー業界の場合、コラボレーションが大掛かりになればなるほど、劇的な変化をもたらす可能性のあるデジタルツールやテクノロジーの開発が加速します。たとえば、VMwareなどの約40社のIT企業が参加する European Green Digital Coalition(EGDC)というイニシアティブは、欧州委員会や欧州議会からの支援を受けています。すべてのメンバー企業が、早急なアクションが必要であることや、持続可能な未来を実現するソリューションが存在することを認識しており、ソリューションの開発に向けてそれぞれの役割に取り組むとともに、率先して模範を示すことにも熱心です。

EGDCが当初から見据えているのは、発電や建設、製造、農業、輸送などの分野で事業を行う企業、スマートシティのためのソリューションの開発に携わる企業をサイエンスベースの手法で支援することや、デジタルソリューションが環境に与える実質的な影響を判断することです。

 

 

気候変動が懸念される状況であっても、デジタルシフトを止めることはできません。だからこそテクノロジー企業は、ITが環境に与える影響を軽減することに率先して取り組む必要があると考え、その多くが自社の最新の取り組みを公開するタイミングに、Earth Monthである4月を選んでいます。私たち各々が踏み込んだ目標を設定し、透明性を高め、コラボレーションを強化し、あらゆるステークホルダーとのやり取りを増やし、コミュニティを拡大していかなくてはなりません。私たち全員がそれぞれの役割を果たせば、企業、そして社会は、デジタルソリューションのメリットを享受し続けながら、地球温暖化への対策もできるようになるはずです。