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Veeam Backup & ReplicationのvSANバックアップ(前編)

皆さん、はじめまして。株式会社ネットワールドでバックアップ製品のSEをしております臼井と申します。VMware vSANを導入するお客様の増加に伴い、多くのバックアップ製品を扱っている弊社にもvSAN環境のバックアップについて、お問い合わせいただく機会が増えてきました。そこで、VMware様のJapan Cloud Infrastructure Blogの場をお借りして、仮想環境のバックアップで多くの実績があるVeeam Backup & Replication(以下、VBR)を使用してのvSAN環境のバックアップについて掲載させていただくことになりました。
前後編の2回に分けて、vSAN環境でVBRを使うメリットや特徴をご紹介させていただきたいと思いますので、宜しくお願い致します。
Veeam(ヴィーム)って?
個人的には、Veeamという名前も仮想環境のバックアップとして日本で浸透してきたかなと勝手に思っているのですが、ご存じない方のために改めてご紹介させていただきます。
メーカーの正式名称はVeeam Softwareで、データ保護や監視ツールのソフトウェアを主に開発している会社です。本社はスイスのバールにあり、設立は2006年ですが、ここ数年で急速に顧客数や売り上げを伸ばしている注目のベンダーです。

Veeam Backup & Replicationとは?
VBRという製品を簡潔に言えば、VMware vSphere Storage APIs – Data Protection (通称、VADP)と連携して、仮想マシンを丸ごとバックアップする製品です。VMware様の製品で言うと、vSphere Data Protectionと同種の製品になります。vSphere Data ProtectionはvSphere 6.5での提供が最後になりましたので、今後のバックアップの選択肢の1つとしてVBRをご検討いただければ幸いです。

VBRの歴史は古く、2008年にVADPの前身のVMware Consolidated Backup対応のバックアップ製品としてバージョン1.0がリリースされました。その後、VADP対応や数々の機能追加や機能拡張を重ねて、現在は昨年末にリリースされたバージョン9.5 Update 3が最新バージョンとなっております。

他のバックアップソフトとVBRは何が違うのかというと、以下の3つの特徴が挙げられます。

✔アプリケーション対応
✔柔軟なリカバリ
ストレージ連携

それぞれの特徴を見ていきましょう。
特徴その1<アプリケーション対応>
VBRはVADPによるVMwareスナップショットと連携して仮想マシンをバックアップしますが、その際に、Active Directory, Exchange, SharePoint, MS SQL Server, Oracleについてはデータの整合性を保持してバックアップすることが可能です。

仮想マシンの静止スナップショットにより、VMware Toolsに含まれるVSS(Volume Shadow copy Service)を利用することで、ファイルシステムの整合性や一部のVSS対応アプリケーションの整合性を保持したバックアップできる製品もありますが、 VBRでは独自のVSSを提供しており、アプリケーションに合わせて、完全VSSバックアップの実施やバックアップ成功後のトランザクションログの切り捨て、カスタムスクリプトの実行などを行うことができ、より信頼性の高いバックアップを行うことが可能です。また、Oracleについては、Windowsだけでなく、Linux上のOracleにも対応しております。
特徴その2<柔軟なリカバリ>
VBRは仮想マシン単位でバックアップを行いますが、リストアは仮想マシン全体だけでなく、フォルダ・ファイル単位、仮想ディスク単位、アプリケーション単位など、シチュエーションに応じて様々なリストア方式を選択できます。
フォルダ・ファイルのリストアについては、17種類もの多数のファイルシステムに対応しております。アプリケーションについては、Active Directory のユーザーアカウントやExchangeのメールメッセージ、SharePointのドキュメントやSQL Server/Oracleはデータベースなど、粒度の細かいリストアをエージェントレスで実行することが可能です。



リストア操作も専用のリストアツールとして、Veeam Explorerが提供されており、直感的な操作が可能です。

特徴その3<ストレージ連携>
Veeam Softwareはアライアンスパートナーが多く、様々なベンダーのストレージと連携できることも大きな特徴です。プライマリストレージとして、Dell EMC, NetApp, HPE, IBM, Pure Storage等のハードウェアストレージのスナップショットと連携しての安定したバックアップやDell EMC Data Domain(Boost), HPE StoreOnce(Catalyst)といった重複排除ストレージと連携してバックアップすることもできます。
まず、ハードウェアストレージスナップショットとの連携ですが、仮想マシンのスナップショットのみを使用してVADPによるバックアップを行うと、スナップショット作成後の仮想マシンに対しての変更はスナップショットファイル(通称:デルタファイル)に変更ログが書き込まれ、バックアップが完了するまで保持し続けます。バックアップが長時間に及ぶケースや仮想マシンへの変更が多い環境ではスナップショットファイルの容量が肥大化し、データストアの空き容量不足やシステムのパフォーマンス低下などが起きる可能性があります。スナップショット削除時においてもスナップショットの統合処理に時間がかかるケースや仮想マシンが応答を停止する可能性があります。

スナップショットの仕組みや問題点については、下記のKBでも紹介されておりますので、参考にしていただければと思います。
-ESXi / ESX における仮想マシン スナップショットについて (1033239)
https://kb.vmware.com/kb/1033239
-vSphere 環境でスナップショットを使用するベスト プラクティス (1038295)
https://kb.vmware.com/kb/1038295
-仮想マシンのスナップショットを統合するのに必要な時間の推定 (2096780)
https://kb.vmware.com/kb/2096780
-スナップショットの削除で仮想マシンが長時間停止する可能性 (2079323)
https://kb.vmware.com/kb/2079323
このような問題を回避するには、ストレージスナップショットとの連携が有効です。ストレージスナップショットと連携することで、仮想マシンのスナップショット作成後にストレージスナップショットを作成し、仮想マシンスナップショットはすぐに削除されます。そのため、仮想マシンのスナップショットがある時間が最小限になり、前述の問題が起きる可能性も低くしてなります。仮想マシンスナップショットだけの場合とストレージスナップショットを組み合わせた場合をバックアップ時間の流れを比較すると下の図のようになります。

次に、重複排除ストレージとの連携です。VBR自身にも重複排除機能はありますが、重複排除ストレージと組み合わせることでバックアップデータ全体の重複排除され、より高い重複排除率を実現することが可能です。
また、vSphere Data ProtectionとData Domainを組み合わせた場合と同様、DD Boostを利用することにより、VBRサーバ上で重複排除処理を行い、Data Domain上に存在していないブロックのみを転送することでネットワークに流れるデータ量を削減でき、更に論理的な仮想合成フルバックアップ作成により、バックアップのパフォーマンスを高速化することも可能です。
vSphere Data ProtectionはData Domainのみの対応でしたが、VBRでは DD Boostと同様、Open Storage Technology (OST)を使う、HPE StoreOnceのCatalystとの連携も可能です。

ここに書き切れないほど、VBRならではの機能や特徴はまだまだ沢山ありますが、厳選してVBRの特徴を紹介させていただきました。後半は、いよいよvSAN環境でのVBRについてご紹介させていただきますので、お楽しみに。
Veeam Backup & ReplicationのvSANバックアップ(後編)
執筆者:
株式会社ネットワールド
SI技術本部 ストレージ基盤技術部
ストレージソリューション2課
臼井 守(Usui Mamoru)
■ネットワールド Veeam製品情報
https://www.networld.co.jp/product/veeam/
■ネットワールドらぼ (ネットワールド ブログ)
https://blogs.networld.co.jp/