2023年2月より新しいクラウドストレージサービス「VMware Cloud Flex Storage」が東京リージョンでリリースされました。 今回は、このサービスの採用を検討する際にチェックしておきたい仕様を整理してご紹介します。尚、VMware Cloud Flex Storage の概要はブログ「VMware Cloud Flex Storage とは」をご覧ください。
目次
ストレージ基盤のアーキテクチャ
VMware Cloud Flex Storage は、VMware Cloud on AWS の Software-Defined Data Center(SDDC)環境にデータストアを提供するサービスです。クラウドストレージ基盤は「Scale-out Cloud Datastore」と呼び、VMware Cloud on AWS の SDDC 環境対して最大 400 TiB の実効容量を提供します(図1)。
Scale-out Cloud Datastore は、物理的にパフォーマンス層とキャパシティ層の2階層で構成されています。パフォーマンス層には NVMe SSD キャッシュを実装し、ストレージ I/O の性能を担保します。キャパシティ層には、データの完全性(Data Integrity)機能などデータを安全に処理する仕組みが実装されています。また、バックエンドストレージには高い拡張性を備えた Amazon S3 を採用しています。尚、Scale-out Cloud Datastore は、契約するユーザーの専用ストレージとして物理的に独立した状態で提供されます。
図1 VMware Cloud Flex Storageストレージ基盤のアーキテクチャ
次に、VMware Cloud Flex Storage と VMware Cloud on AWS の接続構成に目を向けてみましょう。Scale-out Cloud Datastore は、ユーザーが指定する AWS リージョンに展開されます。この時、指定するリージョンにはあらかじめ VMware Cloud on AWS の SDDC が必要です。実際に VMware Cloud Flex Storage を利用する時、SDDC 内のクラスタを構成する物理ホストからストレージ領域を NFS 接続でマウントして利用します(図2)。
図2 VMware Cloud Flex Storage の接続構成イメージ
SDDC のクラスタとストレージの構成
VMware Cloud Flex Storage には、2つのコンポーネントが含まれています。1つはデータストアとして利用するストレージ領域(Scale-out Cloud Datastore)、もう1つはユーザーインターフェイス(UI)機能です。UI 機能はリージョンごとに1つだけ展開されます。
VMware Cloud Flex Storage のストレージ領域は、必ず VMware Cloud on AWS の SDDC と1対1の関係で展開します。尚、SDDC 環境には複数のクラスタを展開できますが、それら複数のクラスタから1つのストレージ領域をマウントすることも可能です(図3)。
図3 VMware Cloud Flex Storage と SDDC(複数クラスタ)の構成例
もし、 SDDC が複数存在する環境においてそれぞれの SDDC からデータストアを利用したい場合は、同じ数だけストレージ領域を展開する必要があります(図4)。尚、 SDDC とストレージ領域を「多対1」のような関係で構成することはできません。
図4 複数 SDDC の構成例
ストレージの展開場所と構成パターン
次に、VMware Cloud Flex Storage を展開する AWS のリージョンや AZ の関係について、現時点のサービス仕様から整理しましょう。前述の通り、VMware Cloud Flex Storage を利用する際にはあらかじめ VMware Cloud on AWS の SDDC が存在している必要があります。一方、サービスの仕様上、展開可能なストレージ領域の個数に上限があります。現時点では、1つのリージョン中には最大6つのストレージ領域が展開できます。そのため、導入する際には SDDC の数や利用するリージョンおよび Availability Zone(AZ)の構成に配慮してください。
図5 シングルリージョン(シングル AZ)の構成パターンイメージ
同様に、現在の仕様では一つのリージョンの中で最大4つまで AZ を分けて利用することができます(図6の左側)。尚、複数の AZ を利用しても、1つのリージョン内で展開できるストレージ領域の上限(最大6つまで)は変わりません。また、1つの VMware Cloud サービスの組織の中でリージョン自体を分けて利用することも可能です(図6の右側)。リージョンを分けて展開すると UI 機能が分かれますが、操作方法が変わるわけではないので運用上大きな障壁になることはありません。
図6 マルチ AZ の構成パターンイメージ
利用可能な仮想マシンの最大構成
最後に、利用可能な仮想マシン数と仮想ディスク数の最大構成について整理しておきましょう。現時点の仕様では、VMware Cloud Flex Storage の NFS データストアを利用できる仮想マシン数は最大 1000 です。
一方、NFS データストアに配置されている仮想ディスクの中で、仮想マシンが起動しているアクティブな仮想ディスク数は、最大 3000 までサポートされています。これらの最大構成の値は将来変更される可能性がありますので、ご利用の際にはリリースノートやドキュメント、VMware Configuration Maximums ページ をご確認ください。
図7 VMware Cloud Flex Storage の NFS データストアで利用可能な仮想マシンの最大構成
まとめ
今回は、VMware Cloud Flex Storage の主な仕様や構成パターンについてお伝えしました。比較的シンプルなアーキテクチャであるため、気軽に利用を開始できる点もメリットの一つです。尚、サービスの仕様は将来変更される可能性がありますので、アップデートがあれば随時 Blog 等でお知らせします。最新の情報はリリースノートなど下記の各種ドキュメントも併せてご覧ください。
関連情報リンク
- ブログ「VMware Cloud Flex Storage とは」
- ブログ「VMware Cloud on AWS の最新アップデート(VMware Explore 2022 の発表内容)」
- VMware Cloud Flex Storage リリースノート
- ドキュメント
- SLA ドキュメント
- 最大構成情報「VMware Configuration Maximums」