VMware Cloud on AWS クラウド

無停止クラウド移行のシンプルなオペレーション(VMware HCX のライブマイグレーション)

今回は、データセンターの仮想マシンを無停止でクラウドへ移行する流れについて、操作画面とともにご紹介します。具体的には、VMware HCX(以下 HCX)を使用して、仮想マシンを起動したまま VMware Cloud on AWS へ移行してみます。HCX に関しては、ブログ「VMware HCX とは」と「VMware HCX の移行機能」も併せてご覧ください。

 

目次

 

 

 

移行環境

今回は、移行用の環境として VMware Cloud on AWS の2ヶ所のリージョンに Software-Defined Data Center(SDDC) を作成しました。そのうち1つを移行元(データセンター)、もう1つを移行先(クラウド)に見立てて操作します(図1)。

図1 移行環境(VMware Cloud on AWS を利用)

 

移行元 SDDC に仮想マシンを配置します(図2)。仮想マシンは2つのルータを経由してインターネットに接続できます。一方、仮想マシンが使用しているネットワークセグメント「192.168.1.0/24」は、移行先に予め延伸しておきます。仮想マシンの OS に定義されている Default Gateway は、移行元のルータを指定していることを覚えておいてください。

尚、vMotion 機能を使って無停止で移行するため、仮想マシンの IP アドレスと MAC アドレスはそのまま保持されます。予めネットワークを延伸しておくことで、移行後も接続性が維持されます。

図2 移行環境のネットワーク構成(移行前)

 

この環境を構成している HCX のコンポーネント(仮想アプライアンス)を見てみましょう。複数の仮想アプライアンスが両サイトに配置されており、一部のアプライアンスは VPN でサイト間を接続しています。この VPN は、それぞれ移行データ転送とネットワーク延伸の通信で使用されます(図3)。

一方、移行のオペレーションですが、管理者は「vSphere Client」と VMware Cloud on AWS の管理インターフェイスである「VMC コンソール」を使用して操作します。

図3 今回のクラウド移行環境

 

移行元と移行先の vCenter を見てみましょう。移行元に4台の仮想マシンが配置されています。リソースプールはどちらも同じ名前で構成しています(図4)。

図4 移行前の仮想マシンの配置

 

 

 

移行の流れ

この環境におけるクラウド移行(無停止移行)は、大きく3つのステップで進めます(図5)。HCX を利用すれば多くのプロセスが自動化されるため、移行の準備や操作に関わる管理者の負担が少なくなります。ここから下記移行ステップに沿って、具体的な操作を解説します。

図5 無停止移行の移行ステップ(Replication Assisted vMotion Migration の場合)

 

 

 

[ステップ1] 移行プロセスの実行

それでは、HCX の無停止移行機能「Replication Assisted vMotion Migration」を使って仮想マシンを移行してみましょう。この機能は、最初にレプリケーション機能(vSphere Replication)でデータを移行先にコピーします。コピーが終わってから vMotion を使って仮想マシンを移動させます(図6)。これらのプロセスは、HCX によって完全に自動化されています。

尚、データコピーはバックエンドで実行されるので、仮想マシンを停止する必要はありません。複数の仮想マシンのデータも同時並行でコピーできるので、多くの仮想マシンを効率よく移行できます。

図6 HCX Replication Assisted vMotion Migration 機能の移行プロセス

 

はじめに HCX の管理インターフェイスにアクセスします。vSphere Client で 移行元の vCenter にアクセスして、ショートカットメニューにある HCX アイコンを開きます(図7)。HCX アイコンは、HCX のインストール時に作成されます。

図7 vSphere Client の HCX アイコン

 

HCX アイコンを開くと HCX の管理インターフェイスが開きます。その管理インターフェイスの「Migration」メニューから「MIGRATE」ボタンをクリックします(図8)。

図8 HCX の管理インターフェイス(Migration の開始)

 

その後、移行内容を定義する画面に変わるので、移行対象の仮想マシンを選びます(図9)。

図9 HCX の移行操作画面(仮想マシンの選択)

 

次に、移行先で仮想マシンが使うリソース(リソースプールやフォルダ、データストアなど)を選びます。その後、移行機能を選びます。今回は「Replication Assisted vMotion」を選択します(図10)。

最後に、この画面で選択した内容を確認する「Validation」ボタンでチェックし、問題なければ「GO」ボタンをクリックすれば移行プロセスが開始されます。

図10 HCX の移行操作画面(リソースマッピング)

 

この後は、仮想マシンの移行プロセスが終了するまで待つだけです!直感的に操作できるように作られているので、迷うことなく進められます。

 

 

 

[ステップ2] ステータスの確認

移行プロセスを開始した後は、タスク画面のインジケーター等で移行の進捗を確認できます。移行プロセス全体の進捗やエラーの有無なども一目でわかります(図11)。

図11 HCX の移行ステータス画面(スイッチオーバーフェーズ)

 

仮想マシンの移行が完了すると「Migration Completed」と表示されます(図12)。

図12 HCX の移行ステータス画面(移行完了後)

 

移行完了後に vCenter を見ると、選択した仮想マシンが移行先に移動していることを確認できます(図13)。

図13 移行後の仮想マシンの配置

 

この時点で仮想マシンの「移動」は成功しましたが、移行作業はまだ残っています。それは、ネットワークの切り替えです。現時点ではネットワークが延伸されたままなので(図14)、この延伸されたネットワークを削除して通信経路を移行先へ切り替えます。

図14 移行環境のネットワーク(仮想マシンの移動直後)

 

 

 

 

[ステップ3] ネットワークの切り替え

現時点のネットワーク環境を整理しておきましょう。仮想マシンは移行先に存在していますが、接続しているネットワークの Default Gateway は移行元に存在しています。

ここでネットワークセグメントの設定(VMware Cloud on AWS の管理インターフェイス「VMC コンソール」)を見ると、移行元はルータに接続されていますが、移行先はルータに接続されていないことがわかります(図15)。

図15 移行元と移行先のネットワーク設定(VMC コンソール画面)

 

この状態から移行元のネットワークを削除して、移行先のネットワークをルータに接続する作業を行います。はじめに、移行元のネットワークをルータから切り離します。VMC コンソールからネットワークの設定を「ルーティング」から「切断」に変更します(図16)。

尚、ここでは VMware Cloud on AWS 環境で操作していますが、実際の現場ではデータセンターのルータや L3スイッチ等でネットワークを切り離す作業を行います。

図16 ネットワークの設定(VMC コンソール画面)

 

これで、このネットワークは一時的にルータから切り離された状態になります(図17)。

図17 移行環境のネットワーク(データセンター側のネットワーク切断)

 

次に、ネットワーク延伸環境を削除します。HCX 管理インターフェイスの「Network Extension」メニューから対象のネットワーク延伸構成を選択して、「UNEXTENDED NETWORKS」をクリックします(図18)。

図18 HCX のネットワーク延伸解除(対象ネットワークの選択)

 

その後、最終確認画面が開くので、オプション「Connect cloud network to cloud edge gateway after unextending」にチェックを入れて「UNEXTENDED」ボタンをクリックします(図19)。このオプションを有効にすると、ネットワーク延伸を削除すると同時に移行先のネットワークを自動的にルータに接続することができます。操作はこれだけです!

図19 HCX のネットワーク延伸解除と Gateway Router との接続オプション

 

数分経過すると、ネットワーク延伸が完全に削除され、移行先のネットワークがルータに接続されます(図20)。これで、仮想マシンは外部ネットワークと再び接続できるようになります。

図20 移行環境のネットワーク(延伸解除と同時にクラウド側のルータに接続)

 

この時点で、ネットワークの設定を確認してみましょう。ネットワーク延伸を解除した直後では、移行先のネットワークが「ルーティング」に変わっていて、ルータと接続されていることが分かります(図21)。

図21 ネットワークの設定(自動的にルータと接続される)

 

最後に、まだ移行元にネットワークが存在していれば、それを削除します(図22)。また、必要に応じて移行先のネットワーク名を変更します。これで、移行作業はすべて完了です!

図22 ネットワークの設定(最後の設定)

 

 

 

まとめ

いかがでしょうか。クラウド移行は面倒な作業ではないことがお分かりいただけたと思います。HCX は、vCenter や NSX と連携しながら本来複雑な移行プロセスをバックエンドで自動的に実行します。その結果、管理者の操作は極めてシンプルになります。VMware Cloud on AWS と HCX は、短期間でお試しすることもできるので、ぜひクラウド移行をご検討ください。

 

 

 

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