VMware Cloud on AWS は、VMware が管理する Software-Defined Data Center (SDDC) をクラウドで提供するサービスです。サービスの基本料金は、物理ホストの台数に応じて従量課金されます。今回は、VMware Cloud on AWS の利用を開始する際に選択可能なホストの構成パターンについて解説します。
目次
サービスの料金体系
VMware Cloud on AWS の基本サービス料金は、利用する物理ホストの台数と利用期間に対して発生します。支払い方法は「オンデマンド」や「1年サブスクリプション」、「3年サブスクリプション」の3種類が提供されており、要件に合わせて最適なプランを選択できます(図1)。
図1 VMware Cloud on AWS の課金対象と支払い方法
例えば、ホストを3台だけ固定的に1年間利用する場合、オンデマンドで契約するよりも1年サブスクリプションで契約する方が支払い価格は低くなります。同様に、3台のホストを3年間利用する場合は、1年サブスクリプションよりも3年サブスクリプションで契約する方が価格は低くなります。具体的なサービス価格に関しては、こちらのサイトで公開していますのでご覧ください。
一方、「VMware Site Recovery」や「NSX Advanced Firewall」などのアドオンサービスを利用する場合は、ホストとは別に利用料金が発生します。アドオンサービスの料金は本稿下部にリンクを掲載していますので、そちらをご覧ください。詳しくは VMware の担当営業にお尋ねください。
クラスタの種類
VMware Cloud on AWS を利用する時、最初に1つのクラスタを作成します。この最初のクラスタが SDDC を構成します。VMware Cloud on AWS で構成可能なクラスタには3つの種類があります(図2)。目的や用途に応じて最適なクラスタを作成して利用できます。クラスタの概念については、過去のブログ「VMware Cloud on AWS のソフトウエア構成とリソース管理」および「VMware Cloud on AWS の vSAN 構成」をご覧ください。
図2 クラスタの種類
シングルホストクラスタ
1台のホストでクラスタを構成するのがシングルホストクラスタです。シングルホストクラスタは検証目的の利用を想定して提供されているので、SLA は適用されません。シングルホストクラスタの支払い方法は「オンデマンド」で、利用開始から最大60日まで連続で利用できます。60日以内であれば、ホストを追加して標準クラスタへ変更し、本番環境として利用することができます。
標準クラスタ
1つの Availability Zone(AZ)の中に作成されるのが標準クラスタです。標準クラスタは最小2台のホストで構成できます。本番環境での利用を想定しており、SLA(保証される可用性は99.9%)が適用できます。標準クラスタは、世界中で最も多く採用されている標準的な構成です。一つのクラスタ内に最大16台までホストを追加できます。
ストレッチクラスタ
2つの AZ を使用して1つのクラスタを構成するのがストレッチクラスタです。ストレッチクラスタは最小2台のホストで構成できます 本番環境での利用を想定しており、サービスインフラに高い可用性を求める場合に適した構成です。SLA が適用でき、保証される可用性は最大99.99%です。片方の AZ に障害が発生した場合、全てのワークロードが正常な AZ へ自動的にフェイルオーバーする仕組みを備えています。
例えば、検証目的であれば最低1ホスト(シングルホスト構成)で クラスタ を構成できます。ただし、この構成には SLA が適用されません。シングルホスト構成では SLA が適用されないので、本番環境では利用できない(利用を避けるべき)とご理解ください。VMware Cloud on AWS の SLA については、過去のブログ「VMware Cloud on AWS のストレージポリシー」をご覧ください。
ホストの種類
クラスタを作成する時、そのクラスタを構成するホストの種類を選択します。ホストは、アマゾン ウェブ サービス(AWS) で提供されている EC2 ベアメタルインスタンス の「i3.metal」または「i3en.metal」が選択できます(図3)。2022年10月より新しいインスタンス「i4i.metal」が利用可能になりました。詳細は、ブログ「新しいホストタイプ I4I インスタンスの提供開始」をご覧ください(2022年12月追記)。
図3 ホストの仕様(ホストあたり)
i3en.metal は、i3.metal よりも4.5倍のストレージ容量を搭載しています。例えば、比較的大容量のトレージが必要な場合は、i3en.metal でクラスタを構成すると仮想マシンの集約率が高められる傾向があります。尚、i3.metal と i3en.metal のホストを混在させてクラスタを構成することはできません(図4)。
図4 ホストタイプとクラスタ
クラスタを作成した後は、リソースの要求に合わせてオンデマンドでホストを追加・削除することができます。この点が従来のデータセンターでインフラを調達する考え方と大きく異なります。
常に変動するリソース要求がある場合や、一時的にリソースが必要になる場合でも VMware Cloud on AWS であれば柔軟かつ即座に対応できます。不要になったリソースはホストを削除することで課金を抑えることができるので、常にコストを最適化しながら運用できます。
ホストの最大構成
クラスタを構成するホスト数には制限があります。標準クラスタおよびストレッチクラスタはどちらも最小2ホストで構成できます。また、クラスタあたり最大16ホストまで増やせます(図5)。
図5 クラスタあたりのホスト台数
ホストの追加・削除操作は非常にシンプルです。VMware Cloud on AWS の管理コンソールである「VMC コンソール」で操作することもできますし(図6)、REST API や PowerCLI で実行することもできます。約15分でホストを追加できるので、突発的なリソースの増減にも素早く対応できます。
図6 VMC コンソール画面サンプル
尚、クラスタのリソース拡張や縮小(実際はホストの追加や削除)は、クラスタの種類によって少し制限事項が異なります。例えば、標準クラスタの場合は2ホストから16ホストまでいつでもホストを追加・削除できます(図7)。
図7 標準クラスタの拡張性
一方、ストレッチクラスタの場合は、2ホストから4ホスト構成に拡張できますが、2ホスト構成に戻す(縮小する)ことはできません。同様に、4ホストから6ホスト構成に拡張できますが、4ホスト構成に戻す(縮小する)ことはできませんので、利用される場合はご注意ください。
また、4ホスト以下と6ホスト以上の構成では保証される可用性が異なる点も留意してください。99.99%の可用性が必要な場合は、6ホスト以上で構成してください(図8)。
図8 ストレッチクラスタの拡張性
最適なホスト数の算出方法は?
VMware Cloud on AWS であればオンデマンドでホストを追加・削除できるので、従来のデータセンターの設計思想とは異なり、5年後のリソース要件を計算して予め多めにホストを準備する必要はありません。とは言うものの、最初にサービスを使い始める時に無駄なく最適なホスト数を計算しておきたいものです。
そこで役立つのが VMware Cloud on AWS 専用のサイジングツールです。具体的な使い方は、過去のブログ「VMware Cloud on AWS サイジングの解説」で紹介しています。このサイジングツールを活用すれば最適なホスト数を見積もることができるので、ぜひご活用ください。
まとめ
VMware Cloud on AWS は、オンデマンドや従量課金などクラウドの特徴を備えたサービスです。アプリケーションの要件に合わせてインフラの可用性の視点でクラスタを選択できます。また、オンデマンドでリソースの追加・削除ができるので、インフラの投資に無駄が生じません。VMware Cloud on AWS を活用すれば、IT コストの最適化を継続する運用に切り替えられます。ぜひご検討ください。
関連情報リンク
- VMware Cloud on AWS の価格サイト
- VMware Site Recovery の価格サイト
- NSX Advanced Firewall for VMware Cloud on AWS の価格サイト
- ドキュメント「VMware Cloud on AWS の SLA」
- ブログ「新しいホストタイプ I4i インスタンスの提供開始」
- ブログ「VMware Cloud on AWS のソフトウエア構成とリソース管理」
- ブログ「VMware Cloud on AWS の vSAN 構成」
- ブログ「VMware Cloud on AWS の vSAN ストレージポリシー」
- ブログ「VMware Cloud on AWS サイジングの解説」