カテゴリー:環境・社会・ガバナンス(ESG)•この記事は 4 分で読めます
シリーズ「Down to Earth」:実際のところ、ESG に真剣に取り組むビジネスは存在するのか?
ジョー・バグリー(Joe Baguley)•2022 年 1 月 18 日
環境、社会、ガバナンスに貢献する取り組みを指す「ESG」は、多くの人々の話題に上り、多くの組織がその実現に向けて活動しています。2020 年には、ESG に取り組むファンドが投資家から集めた金額が毎月平均 10 億ポンドに達しました。
しかし多くの企業は依然として、ESG に対するビジョンを自社の戦略にどのように具体的に落とし込むかという大きな課題を抱えています。
これは「何をすべきか」、「実際に何を優先すべきで、その理由は何か」、「最も重要なことをどのように実行するか」という情報が不足しているためです。ビジネスに ESG の視点を取り入れたいと考えても、実際には何から手を付ければよいのかがはっきりしないという状況です。
このたび私は、新しいコンテンツ シリーズとなる「Down to Earth」の栄えある最初の寄稿者となる機会を得ました。ここでは、さまざまな分野の第一線で活躍されている方々のお力を借りながら、責任ある組織改革の実現に向けて、目標と現実のギャップを埋められるよう、明確で具体的な指針を提供していきます。
そもそも ESG は、CSR 2.0 とは明らかに一線を画すものです。ESG は、企業がより持続可能で、包括的で、社会的責任を果たすための変革に取り組むことで存在意義を示すよう求める消費者からのプレッシャーの高まりに応え、しかも数値で示せる形で行うことを指します。
このことを念頭に置いて、まず今回は、ESG のビジョンを経営陣に説いたうえで、ビジネスの成功につなげる方法について見ていきます。最終的には、ESG がビジネス的にも意義を持ち、商業的な成功に結びつくよう、ビジネスの一翼を担う本質的な要素に落とし込む必要があるためです。
ESG の提案方法
私は、ESG のビジョンを説明する際に、主に 3 つのステップがあると考えています。
ステップ 1:変革のリーダーとなる
ESG においては、社外(投資家、顧客)、社内(経営陣、従業員)、その中間に位置する人々(サプライヤー、コミュニティ)など、さまざまなステークホルダーが存在します。すべてのステークホルダーが、企業が導入する ESG 戦略に関心を抱き、また影響を受けることになります。
そのため、最もシンプルに考えれば、ESG とは変革のためのプログラムであり、経営トップが主導する必要があります。複数の調査によると、現在 ESG 戦略の責任者となっているのは CEO や CFO です。以前なら、企業のサステナビリティ(持続可能性)に関する責任は人事部門やオフィス管理者、もしくは特に熱意のある従業員に委ねられていたことを考えると、大きな変化が訪れています。
そこで最初のステップは、経営レベルで ESG の変革をリードする責任について認識してもらい、経営層が ESG の戦略的意義を考慮しなくてはならない理由を説明することです。また、社内でも ESG と業務の関連性が高く、意欲的なステークホルダーを特定して、ビジネス全体にかかわる熱意や必要性を示すとともに、変化を取り入れるための実践的な方法を探り、包括的な戦略を策定します。VMware はこのアプローチにより、2030 年までに達成すべき 30 の部門横断的な ESG 目標を策定するための 2030 Agenda として、持続可能性、公平性、信頼性という 3 つのビジネス成果を達成するためのブループリントを掲げています。
ステップ 2:ビジネス プランを策定する
方向性を定めたら、実現への道筋をステークホルダーに示す必要があります。
すでに、ESG がビジネスに不可欠であることを示す膨大な数のデータや事例が公開されています。このような資料を利用して自社の信念を強調し、ビジネス プランとの多角的な関連性を周知しましょう。
事実、顧客ロイヤルティは ESG との結びつきを強めています。VMware の調査によると、消費者の 3 人に 1 人以上(35%)は、再生可能エネルギーの使用方法や温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロエミッション)への移行サポートを表明している企業の商品やサービスに、より多くの対価を支払う意思があることがわかっています。さらにその 3 分の 1 が、倫理ポリシーを公開していない企業との関わりやブランドの購入をやめると回答しています。
一方、多くの投資家も「善良な」商品やサービスへの投資を継続したいと考えるようになっていることは明らかで、今後 5 年間でサステナブル関連製品への投資額を 2 倍にしていく動きがあります。また、生命保険/年金を取り扱うスコットランドの企業である Scottish Widows は最新の発表で、ESG の基準を満たしていない企業から巨額の投資資金を引き上げていることを明らかにしています。企業が支持を得るには、ESG への関与を示す強力な信用情報がますます重要になっているため、自社のビジネス プランに ESG を織り込むことができるという確固たる証拠があるか、監査/調査を実施しましょう。
また、先進的な企業からもインスピレーションを獲得しましょう。現在、最も多様性に富む企業が、多様性に乏しい同業他社を上回る業績を上げる可能性はかつてないほど高くなっていることが、McKinsey による調査で確認されています。欧州における上場企業の自己資本利益率(ROE)は、2005 年から 2007 年の平均値で 10.3% であったのに対し、多様性に富む企業は 11.4% となっています。
ステップ 3:ルールブックを書き換えない
すべての企業が純粋な ESG 推進企業を目指して、ビジネスを一から作り直すことはもちろん不可能です。しかし実際、ほとんどの企業には、すでに何らかの形で ESG を推進できる素地がありますから、闇雲に[Ctrl + Alt + Delete]キーを叩いて再起動したり、新しい要素をビジネスに入れ込もうとする必要はありません。現在の自社のビジネスに適した ESG 推進でなければ、将来に向けて積極的に変化を取り入れ、生き残っていくことは困難です。
そこで、ESG の観点から現在のビジネス アプローチを組み立てる方法を検討し、社内で選抜したステークホルダーと協力して、実行可能な質問リストを絞り込んでいきます。たとえば、以下のような問いです。
- 今行っている取り組みの延長として、取り入れるべきこと、取り入れるべきでないことは何か。
- 既存の ESG 関連施策を試行し、拡大するうえで最も効果がある機会はどこにあるか。
- 自社のサプライチェーン(物理環境およびデジタル環境)への総合的な影響をどのように評価するか。
- 上記を進めたうえで、どのようにして改善方法を見出すことができるか。
- ESG により、自社の既存の価値観や目的をどのようにして高めることができるか。
今すぐ始めましょう
重要なのは、とにかく始めることです。ESG に積極的なブランドの 1 つとして世界的に知られるパタゴニア(Patagonia)は、今でも一部のコートの表地の製造工程で化石燃料を使用しています。それでも、その事実や、より良い製品の製造方法を今も模索していることを隠してはいません。顧客も、最初から企業に完璧を求めているわけではありません。
私が申し上げたいのは、今すぐ貴社が既に実施している多くの「善良な」取り組みを進化させ、ビジネスの成功につながる強力でインパクトのある ESG 戦略を策定していただきたいということです。
ここまでご紹介したヒントが、貴社独自の戦略を前進させるための出発点となれば幸いです。また、この「Down to Earth」シリーズのブログでは、より具体的で実践的な ESG 推進へのガイダンスを近いうちにお届けします。
VMware がお客様やパートナー様の ESG 目標達成に向けて行っているご支援の詳細は、ESG at VMware や、2021 年 ESG Report をぜひご覧ください。
執筆者について
VMware, Inc. ヨーロッパ、中東、アフリカ地域(EMEA)担当副社長 兼 最高技術責任者(CTO)
*US原文は下記URLよりご覧ください。(英語サイト)
https://news.vmware.com/down-to-earth/down-to-earth-a-commercial-case-to-take-esg-seriously