Part1 の2回目は、バックアップを高速化する機能や RPO (Recovery Point Objective) を短縮するための Veeam のソリューションをご紹介します。
– Back Number –
Part1. VMware vSphere の Veeam バックアップ機能
#1 – Veeam の基本コンポーネントとバックアップ方法
#2 – バックアップの高速化や RPO 短縮のための Veeam のソリューション
Part2. VMware vSphere の Veeam リストア機能
Part3. VMware Cloud on AWS と連携する Veeam バックアップ&リストア
#7 – VMware Cloud on AWS でサポートされる機能およびオブジェクトストレージ連携
#8 – オブジェクトストレージを利用したオンプレミスバックアップのリストア
■バックアップをより高速化するための機能
「 Fast Clone 」と「 Veeam Advanced Data Fetcher (ADF) 」の2つの機能についてご紹介します。
◇Fast Clone 機能
Fast Clone は次の効果を促進する Veeam Backup &Replication のテクノロジーです。
①合成フルバックアップの作成と変換スピードの高速化
②同じバックアップリポジトリ上のフルバックアップファイル世代間で同じデータブロックを共有することによるディスク容量の節約
③複数のフルバックアップファイル保存時のストレージデバイス負荷の低減
Fast Clone では、ファイル間でデータブロックをコピーする代わりに、ストレージ上の既存のデータブロックを参照します。既存ブロックの参照のみのため、合成操作は数倍高速になります。弊社エンジニアが投稿するブログ「Veeam Backup & Replication v10でサポートされたLinux XFS」をぜひ参照ください。
図1:Fast Clone テクノロジー
◇Fast Clone をサポートするバックアップリポジトリのタイプ
Fast Clone はリポジトリの種類に応じて、 OS のバージョンやファイルシステムなどの要件や制限があります。たとえば Linux は XFS ファイルシステム、 Windows サーバは ReFS (3.1以降) ファイルシステムを使用します。
◇Veeam Advanced Data Fetcher (ADF) 機能
Veeam も他のバックアップベンダーと同様、 VMware vStorage APIs for Data Protection (VADP) を利用して仮想マシンのバックアップ処理を行っています。また Veeam Transport Service 内で VMware Virtual Disk Development Kit (VDDK) を使用します。
Veeam では、 VDDK の機能制限やパフォーマンス上の理由から、 ADF 機能によって次の機能強化を行っています。
- NFS データストアからバックアップするための独自 NFS クライアントの使用
- Hot-add を使用したバックアップ時の複数の仮想マシンディスクの並行処理
- リストア中の複数の仮想マシンディスクの並行処理
- VMFS メタデータの過剰な更新を回避するために、 Hot-add を使用したレプリケーションまたは仮想マシンリストア時の VDDK の回避
- Direct SAN を使用したリストアの許可
他には、エンタープライズレベルのストレージで 2 倍を超える読み取りパフォーマンスを実現するためにキューの深さを増やしたり、ストレージスナップショットからのバックアップをサポートしたり、などを行っています。
< 参考 > Virtual Disk Transport Methods
https://vdc-repo.vmware.com/vmwb-repository/dcr-public/17aee92f-6920-4675-b03c-8c85de455bb3/eb0d4676-c916-484a-b7e8-138a867db8a6/doc/vddkDataStruct.5.5.html
■ストレージスナップショットと連携するバックアップ機能
Veeam はストレージスナップショット連携機能を提供しています。ストレージスナップショット連携機能によって、仮想マシンバックアップ時の高速化やパフォーマンスの改善、 RPO の短縮を実現します。
◇仮想マシンスナップショットの課題回避
vSphere 環境の仮想マシンのバックアップでは仮想マシンのスナップショットを利用します。仮想マシンのスナップショット作成時に構成される、読み取り専用の仮想ディスクからバックアップデータをコピーします。バックアップデータを取得するには効果的ですが、次の課題もあります。
- 差分ディスクへの更新量が多い場合、 コミットに時間がかかり、 VM Stun が起きる原因となる
- 仮想マシンのスナップショット取得時にパフォーマンス ( IOPS などの性能 ) が劣化する
Veeam はストレージのスナップショットと連携することにより、仮想マシンのスナップショット維持時間を短縮し、先に挙げた課題を回避するとともにバックアップを高速化します。
図2:仮想マシンのスナップショット維持時間の比較
◇ストレージスナップショット連携機能
ストレージスナップショットと連携することにより、図3 のようなバックアップスケジュールを計画することができます。
- 毎日午後 8 時に通常のバックアップジョブの実行
- 毎日 1 時間ごとにストレージスナップショット専用ジョブの実行
図3:ストレージスナップショット連携のバックアップ例
どのようなバックアップでも、データ転送と整合性処理によってアプリケーションのパフォーマンスは低下します。そのため Veeam でもバックアップ処理頻度は通常 1 日 1〜4 回程度になります。 RPO をさらに改善するために、 Veeam はストレージスナップショット専用ジョブを活用することができます。
◇ストレージスナップショットの一元管理
ストレージスナップショットは VBR で一元管理が可能です。図4 は連携する一部のストレージシステムを追加したスクリーンショットです。スナップショット連携の可否は「 VMware Integration 」 をご確認ください。
図4:ストレージシステムとの統合
◇ストレージスナップショット連携設定
ストレージスナップショットとの連携設定はいたってシンプルです。
- 通常のバックアップジョブでのストレージスナップショット連携
バックアップジョブの Advanced 設定で「 Enable backup from storage snapshots 」 ( 図5 の左の赤枠 ) を有効にします。バックアップのために一時的に使用されたストレージスナップショットは、ジョブが終了すると削除されます。
バックアップジョブ作成時のバックアップリポジトリに本番環境で使用しているストレージ( 図5 の右の赤枠 )を指定します。指定した保持ポリシー数を超えるとストレージスナップショットは削除されます。
図5:ストレージ連携設定画面
◇ストレージスナップショットからのリストア
Veeam Explorer for Storage Snapshots を使用してストレージスナップショットから、インスタントリカバリ、ファイルレベルリストア、アプリケーションアイテムリストアを実行できます。
図6:Veeam Explorer for Storage Snapshots
※図6 の State は「 Crash-consistent snapshot 」と表示されていますが、通常のバックアップと同様にアプリケーションと整合性のあるストレージスナップショットを取得することもできます。
今回はバックアップの機能強化を促進する機能をご紹介しました。
次回は、 VDI 環境に役立つファイル共有バックアップついてご紹介します。ファイル共有バックアップでは、通常のバックアップとは異なる技術を使用して、数十億というファイルやペタバイトのデータに対応します。
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