■はじめに
こんにちは!入社2年目に突入した川崎(Kawasaki)です。本シリーズでは、サーバ仮想化blogに引き続き、VMware新卒SEが仮想デスクトップの基礎についてお贈りいたします。製品としては VMware Horizon 6 (with View) を中心に VMware が実現する仮想デスクトップの世界をお届けします。
第1回目は、仮想デスクトップとはそもそも何か、どんな仕組みで、どんなメリットが出るか、といった点を、様々な用語の整理と合わせて説明して参ります。私が昨年初めて仮想デスクトップを学んだ際の疑問や感想も挟んで参りますので、ぜひ一度初心に帰ってご覧いただければ幸いです。
■仮想デスクトップとは?
仮想デスクトップとは何か?
新卒として入社した昨年、私は仮想デスクトップというものを知りませんでした。サーバの仮想化は聞いていますが、デスクトップの仮想化では何がどう仮想化されるのでしょうか。また、デスクトップの本体が手元からなくなることで、これまでどおり使用できるのか何かと不安です。
“仮想デスクトップ”を簡単に表現すると、サーバ仮想化の技術を用いて仮想化した環境に、Windows 7 や Windows 8といったクライアントOSをインストールした仮想マシンを用意、その仮想マシンにアクセスして、これまでと同様のデスクトップ環境を使用することです。(図1)
仮想デスクトップでは、OSやアプリケーションが実行されるのはデータセンターやサーバルームにある仮想サーバ環境で、画面情報が手元の端末に転送されます。マウスやキーボードのほか、USBデバイスの使用や音声の出力、スマートカードによる認証にも対応しており、これまでどおり不自由なく使用することができます。手元の端末は、デスクトップPCやノートPCでも構いませんし、専用に画面と入出力装置を中心にコンパクトに構成されたシンクライアントやゼロクライアントという端末からも接続が可能です。
デスクトップ仮想化 = クライアントOSがインストールされた仮想マシンをデスクトップとして使う
■仮想デスクトップのメリット
なぜ仮想デスクトップを使うのか?
私の経験として、大学では学科で配られたノートPCと研究室に据え置きのデスクトップPCを併用していました。時にはUSBでデータをコピーして自宅PCでも作業していましたが、結局のところ研究室のデスクトップPCでしか計算できないものがあり、頻繁に研究室にこもっていました。実は仮想デスクトップを用いるメリットとしてこのような課題は解決できました。より導入が進むことで、多くのPCユーザーの生活が変わるかもしれません。
改めて仮想デスクトップを従来の物理デスクトップと比較してみます。(表2)
こちらを元に、それぞれの使用メリットをまとめると次のようになります。
物理デスクトップ使用のメリット
- 使い慣れており、ユーザーも管理者も安心
- データが手元にありわかりやすい
- ネットワーク接続が不必要であり、出先での使用に適する
仮想デスクトップ使用のメリット
- データがデータセンターにあり安全性が高い
- 端末のハード障害に悩まされない
- 端末や場所に依存せずに使え、在宅勤務や災害時対策が行える
- OSやアプリケーションイメージの管理やバックアップが管理者側で一括に行える
一般には現状で物理デスクトップを使用していて仮想デスクトップへの移行を検討されるケースが多いかと存じます。その場合、ユーザーにとって、基本的な使い勝手は変わりませんが、それ以上に自宅等オフィス外からの接続が可能になったり、固有のデバイス(自分のPC)に依存しないメリットが出ます。管理者にとっては、デスクトップ環境の一括管理ができ、パッチの管理やセキュリティレベルの維持も容易になります。
仮想デスクトップのメリット: ○どこからでも接続 ○デバイス非依存 ○一括管理
■仮想デスクトップだけではないクライアント仮想化の様々な形式
仮想デスクトップを勉強していた際に困ったのが、関連する方式や用語が多数あり、何が何を指しているのかわからなくなることでした。特に社外の方とは呼び方が異なる場合もあり、全体像がわかっていないと会話に苦労する場合もありました。
ここまで仮想デスクトップについてお話してまいりましたが、仮想デスクトップは実はクライアント仮想化の一つに過ぎません。こちらを整理したのが図3になります。
代表的なクライアント仮想化を大きく分けると、仮想デスクトップ(VDI)とリモートデスクトップサービス(RDS)の2つの方式があります。
仮想デスクトップ (VDI) ・・・用意された仮想マシン一つ一つが各ユーザーに割り当てられます。
リモートデスクトップサービス (RDS) ・・・Windows Serverの OS に備わっている機能を利用して複数のユーザーが一つの OS を共有して利用します。ユーザーはデスクトップ丸ごと、またはアプリケーションのみを使用することが可能で、これらは公開デスクトップ / 公開アプリケーションと呼ばれます。
共通点は、どちらの方式でもデータセンターやサーバルームにあるサーバにアクセスし、画面を転送することでデスクトップやアプリケーションの利用を可能にしている点です。異なっている点は、仮想デスクトップではユーザーは個別のOSを占有できるため、リソースの観点やソフトウェアのインストールといったカスタマイズの観点で独立しており自由度が高いのに対し、リモートデスクトップサービスではユーザーごとのカスタマイズには限界があったり、リソースも共有しているため競合がおきやすかったりします。
なお、仮想デスクトップを”シンクラ”と呼ばれる方もいらっしゃいますが、正確にはシンクライアントやゼロクライアントは仮想デスクトップへの接続元端末の名称となっております。
クライアント仮想化の2つの方式・・・リモートデスクトップサービス / 仮想デスクトップ
■ VMware のクライアント仮想化
VMware の仮想デスクトップの特徴は?
近年では市場トップクラスのシェアを誇るHorizon。VMwareはどちらかというとサーバ仮想化 vSphere のイメージが強いのですが、 Horizon はどのような点が評価されて、今に至ったのでしょうか。
それでは VMware として提供している仮想デスクトップのインフラを構成する製品を紹介いたします。製品としては VMware Horizon 6 (with View) という名称です。Horizon 6 には vSphere のライセンスが含まれており、サーバ仮想化の基盤は vSphere で構成するという形となります。構成を図4に示します。Horizon 6 は vSphere が構成済みの環境であれば、より容易に導入が可能です。vSphere 環境はあるが仮想デスクトップはまだ使っていないというお客様は、ぜひ一度使用感をお試しください。
Horizon 6では、前節の仮想デスクトップ、リモートデスクトップサービスともに使用可能で、オフィスだけでなく、出先や自宅からもセキュアな接続が可能となります。製品の詳細な部分は第2回以降で見て参りますので、どうぞご期待ください!
Horizon 6 の他社製品との違いとは
一番の特徴は基盤であるサーバ仮想化環境 ( vSphere ) との統合にあります。デスクトップ仮想化では、サーバ仮想化環境を基盤とし、多数のデスクトップを仮想マシンとして作成しますので、サーバ仮想化環境の性能が大きく影響します。VMware は信頼性の高いサーバ仮想化製品である vSphere により複数のサーバを一つのリソースのまとまり(リソースプール)として利用できるように構成することで、基盤となるサーバ群の管理に追われることなく、適切な仮想デスクトップを構成できます。
また、基盤の側からデスクトップ仮想化を補助する機能をつけていくことで両製品の連携によるメリットがさらに大きく出ています。例として、ホストのメモリを活用したリードキャッシュ機能や仮想 GPU の使用をサポートしています。Horizon 6 では、仮想基盤とデスクトップ仮想化の双方がまとめて提供されるため、安価に、そして保守の一元化を実現しながら、仮想デスクトップ環境を導入することが可能です。
実績の面でも Horizon 6 の伸びは著しく、様々なお客様にご導入いただく例が増えてきております。公開されている事例は次のリンクからも閲覧できますので、ぜひご参照ください。 (IT価値創造塾/導入事例 http://vmware-juku.jp/casestudy/ )
Horizon 6 = クライアント仮想化を代表する製品
■コラム サーバVDI
仮想デスクトップの基本としては、Windows 7や8.1のようなクライアントOSをインストールした仮想マシンを用意して接続先のデスクトップとしますが、仮想マシンにサーバOS (Windows 2008 R2や2012 R2) をインストールして1ユーザーが1仮想マシンを使用する「サーバVDI」と呼ばれる方式もあります。(図6)
サーバVDIは、クライアントOS (Windows 7や8.1) を使用したVDIと同様の仕組みで使用出来ます。ただし、OSがサーバOSとなりますので、アプリケーションの互換性により動作が保証されない場合があり、この点が通常のVDIと比較した際の注意点となります。
サーバVDIの利点はコスト面が挙げられます。通常のVDIではVDAライセンスと呼ばれる Windows ライセンス (サブスクリプション型) がユーザーごとに必要となりますが、サーバVDIでは Windows Server のデータセンターエディションのライセンスを用いることで実現が可能となるため、コストを抑えることが可能となります。(ライセンスについての詳細はマイクロソフト社にお問い合わせください。)また、デスクトップエクスペリエンス機能を用いることにより、Windows 7 / 8 / 8.1の一部の機能を Windows 2008 R2 / 2012 / 2012 R2で使用することができます。これによりサーバOSを使ってコストを削減しつつ、操作感をクライアントOSに近づけることが出来ますね(詳細はリンク先をご参照ください)。 https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/cc772567.aspx https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dn609826.aspx
■おわりに
第1回はいかがでしたでしょうか。仮想デスクトップのおおまかなイメージと、クライアント仮想化の2つの方式、 VMware が提供する Horizon 6 という製品を見て参りました。 第2回目以降は下記のような流れで、基礎部分からおさえつつ、VMware の仮想デスクトップの全体像が掴めるように進めていきます!最後までお読みいただきありがとうございます。第2回もお楽しみに!
新卒2年目社員が贈る 仮想デスクトップのキソ!
第1回 仮想デスクトップと Horizon 6 ( with View)
第2回 仮想デスクトップの基本構成
第3回 プール作成と割り当て
第3.5回 View Composer の仕組み
第4回 接続方法と接続元端末
第5回 公開アプリケーションのキソ
第5.5回 ThinAppによるアプリケーション仮想化のキソ
第6回 スケールアウト対応
第7回 完結編、仮想デスクトップと関連ソリューション総まとめ
第 8.1 回 App Volumes を使ってみよう その1
第 8.2 回 App Volumes を使ってみよう その2