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Azure VMware Solution 10大アップデート【前編】

みなさま、こんにちは! マイクロソフトの前島です。

前回記事から少し間が空いてしまいましたが、Azure VMware Solution (AVS) は着々と進化を遂げ、ますます多くのお客様にご活用いただきはじめています。先日も 日本ユニシス様での活用事例を公開しましたので、ぜひご参照ください。

さて今回から3回に分けて、最近の AVS 関連のアップデートを厳選ピックアップしてご紹介していきます。

AVS は2020年9月(日本では同12月)に提供開始され、まだ1年と経っていない新しいサービスですが、皆様からのフィードバックをいただきながら常に機能拡張や品質改善を行っています。 AVS をこれからご検討いただく方はもちろん、すでにご利用中のお客様がより効果的に活用いただくためのアップデートも含まれますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

今回と次回は主に AVS の機能面での強化点、次々回は機能以外の側面に焦点を当ててご紹介します。

というわけで前置きが長くなりましたが、AVS の最近の機能強化点を見ていきましょう。AVS は日々アップデートを続けており、すべてを網羅するのは正直現実的ではありません。そこで個人的な思い入れも含めつつ、10個(+1)をピックアップしました。今回は前半5個、次回記事で後半5個をご紹介します。

  1. 提供リージョンの拡大
  2. NSX-T のアップグレード
  3. Azure ポータルでの NSX-T 管理
  4. プライベートクラウドあたりの最大ノード数拡大
  5. 複数プライベートクラウド間の相互接続 [Preview]
  6. プライベートクラウドのメトリクス監視
  7. Azure ネイティブストレージ (Disk Pool) の iSCSI 接続 [Preview]
  8. 仮想マシン配置ポリシー (Placement Policy) のサポート [Preview]
  9. 初期プロビジョニングからの HCX の分離
  10. HCX 4.2 へのアップグレードによる VPN 接続サポート
  11. Azure Arc for AVS [Private Preview]

0. 提供リージョンの拡大

最初にご紹介したいのは AVS 提供リージョンの拡大です。”機能の強化” とは少し分類が異なるので、0番としました。

冒頭でもお伝えしましたが、AVS は9月に一般提供が始まり、その後12月に東日本が仲間入りしました。現在もほぼ毎月のように拡大を続けており、2021年8月現在、世界14拠点で提供されています。

AVS に限った話ではありませんが、Azure で提供されるサービスは、物理的な拠点に縛られることなく、Azure ポータルから任意のリージョンに簡単にサービスを展開できます。

日本のお客様でも、たとえば海外向けサービスを提供するためにユーザーに近い Azure リージョンで AVS を展開いただくなど、グローバルビジネスを支える基盤として Azure / AVS をご活用いただくことも増えてきています。

また、これまで多くのお客様やパートナー様からご要望いただいていた国内に閉じた災害対策を実現するために、いよいよ Azure 西日本リージョンでの AVS 展開も準備が進められています。具体的な提供開始時期に関してはまだこの場ではお伝えできませんが、Azure 西日本リージョンでの利用を検討されているお客様はぜひ個別に弊社担当営業にご相談ください。

図1: AVS 展開リージョン (2021年8月現在)

1. NSX-T のアップグレード


AVS は VMware ソリューションによるプライベートクラウドのベストプラクティス/VMware Cloud Foundation に基づいて構成されており、ネットワークは NSX-T を採用しています。当初は 2.5.x という少し古いバージョンが展開されていましたが、今年7月より最新の 3.1.x (2021年8月現在は 3.1.2) が展開されるようになりました。

これにより NSX-T 3.x で提供されるさまざまな機能を、AVS 環境でもご活用いただけるようになっています。

2. Azure ポータルでの NSX-T 管理


NSX-T つながりで、もう一つ別のアップデートをご紹介します。VMware の提供する NSX-T では、高度かつ豊富なネットワークセキュリティ機能が提供されています。AVS では NSX-T Manager に直接ログオンして管理いただくことができ、特に NSX に慣れ親しんでいる方にとってはスキル再習得が必要ない等のメリットになります。

しかし NSX-T は機能が豊富であるが故、初めて利用される方にとっては操作が難しいと感じられるケースもあるかもしれません。そこでマイクロソフトでは、NSX-T で提供される機能のうち特にポピュラーな機能(セグメント追加、DNS サーバー設定等) を絞り、Azure ポータルから簡単に設定できる仕組みを実装しました。

なお Azure ポータルから設定した場合でも、NSX-T Manager との互換性は保たれています。そのため、たとえば初期構築段階では Azure ポータルで設定し、ある程度落ち着いてきて NSX-T のより高度な機能を活用したくなったら NSX-T Manager からの管理に切り替えるというステップを踏むことも可能です。

図2: Azure ポータルからの NSX セグメント管理

3. プライベートクラウドあたりの最大ノード数拡大


AVS のメリットの一つは、ハードウェアの調達等を意識することなく、いつでもノードの追加や削除ができることです。当初はプライベートクラウドあたりの最大ノード数は64でしたが、現在は96ノードまでサポートされるように緩和され、より大規模な環境でもご活用いただけるようになりました。

なお、他にも”クラスターごとのノードの最大数”、”プライベート クラウドあたりのクラスター数”などいくつかの上限があり、最新情報は弊社公式技術ページにまとめられています。 特に大規模展開を検討される場合は最新状況を上記ページでご確認いただき、これら上限が課題になりそうな場合は弊社までご相談ください。回避策等を一緒に検討させていただきます。

図3: AVS の構成上限 (2021年8月現在)

4. 複数プライベートクラウド間の接続 [Preview]

もう一つ、大規模環境向けの機能拡張をご紹介します。 過去記事(解説! AVS とオンプレミスの接続方法)で詳しく解説しましたが、AVS は Azure ネットワークサービスである ExpressRoute Global Reach という技術を用いてオンプレミス等との通信を確立します。この仕組みを用いることで、AVS とオンプレミス間、あるいは異なるリージョン間にある AVS 間では問題なく通信できます。

しかし Global Reach の仕様上、同一リージョン内で複数の AVS プライベートクラウドを構成した場合、その間での相互通信には制限があり、手作業での追加構成が必要でした。

本記事を執筆している2021年8月現在ではまだ Preview という位置づけですが、Azure ポータルから簡単に複数プライベート間クラウド通信を実現する機能が提供されるようになっています。

図4: Azure ポータルでの AVS 相互接続

エンタープライズのお客様が、より大規模、より複雑な環境でも安心してご利用いただけるようになってきています。今後の更なる機能強化にもご期待いただければと思います。

5. プライベートクラウドのメトリクス監視

運用管理関連の機能も様々な強化が行われていますが、今回はメトリクス監視という機能を取り上げます。

AVS ではプライベートクラウドの基本的なメトリクス(例: CPU 使用率、使用済みのデータストア ディスク)を Azure ポータルから簡単に参照でき、さらにアラートを上げるなどの監視を実装可能です。

図5: AVS のメトリクス監視

この機能は、Azure 共通の監視の仕組みである Azure Monitor を用いて実装されています。そのため、他の Azure サービスで一度でも監視設定をしたことがある方であれば、AVS プライベートクラウドに対しても迷うことなく設定いただけるようになっています。

たとえば Azure Monitor のアクショングループという機能により、アラートがトリガーされた際に、電子メールや SMS による通知を行うように構成できます。

AVS が マイクロソフトの提供するサービスであり、他の Azure サービスと容易に連携できることを実感いただけるのではないでしょうか。

なお AVS と Azure ネイティブ機能との連携については、代表的なシナリオが弊社公式ドキュメント上で公開されています。これらはオンプレミスからの単純移行時には必須ではありませんが、適切に活用いただくことでシステムの柔軟性や運用容易性を大幅に高めたりコストを削減することができますので、ぜひご検討ください。

まとめ

今回は、Azure VMware Solution の10大アップデートのうち、前半5個(+リージョン拡大)をご紹介しました。次回は残りの5個を解説します。

クラウドサービスである AVS は、皆様からのフィードバックを踏まえながら日々機能改良に取り組んでいます。もし “〇〇という機能がないので採用が難しい” というような場合も、ぜひ弊社にお声がけください。皆様からの声で開発のスピードは加速しますし、場合によっては公開前のプレビュー機能や仕組みで代替できることもあります。