DBS 銀行 (Development Bank of Singapore )は、シンガポール政府系の開発銀行として1968年に設立され、今日、東南アジア最大の事業規模を持つ総合金融機関です。
DBS 銀行は2015年頃からデジタルトランスフォーメーションのジャーニーをスタートさせており、VMware Tanzu はそのデジタルジャーニーのお手伝いをさせていただいています。
今回紹介する内容は、2018年に開催された SpringOne Platform という VMware Tanzu の年次イベントでの講演のハイライトとなります。約3年半前の講演ですが、今でも古さを感じることはなく、日本のお客様に役立つ内容だと考えています。
基調講演に登壇したのは、当時のManaging Director, Group Head of Consumer Banking and Big Data/AI Technology であるSiew Choo Soh 氏です。
以下は、Siew Choo Shoh 氏の講演の一部を翻訳した内容になっています。
22,000人のスタートアップで銀行を再構築する
私たちの最大のミッションの一つは、22,000人規模のスタートアップになることです。22,000人の従業員がスタートアップのスピードで動くこと、これが私たちの目指す文化です。私たちの最大のライバルは、他の銀行でもなく、フィンテック企業でもなく、金融分野に参入している大手テクノロジー企業であると考えています。彼らと競争するためには、銀行のあり方を完全に再構築する必要があると考えています。
私たちは、銀行業務をシームレスでシンプルな目に見えないものにすることで、お客様が銀行業務よりも生活に多くの時間を費やせるようにしたいと考えています。そのためには、インフラやアプリケーションを根本的に変えていかなければならないと考えています。
DBS のデジタルジャーニー
私たちは、お客様がデジタルチャネルにますます多くの時間を費やすようになっていることに注目しました。そこで私たちはデジタル化の先頭に立つ必要があると考え、私たちが構築しサポートするすべてのテクノロジーを内製化することにしました。これは2015年のことです。
高度な技術を持つ人材を獲得した後は、アーキテクチャの検討を始めました。銀行内には多くのモノリスがありますが、このモノリスをいかにしてトランスフォームしていくかを検討したのです。また、ウォーターフォール開発からアジャイル開発への働き方改革も検討し始めました。Pivotal Labs (現 Tanzu Labs )の協力を得て、ソフトウェアの作り方を変革するための取り組みを行いました。TDD やペアプログラミングを仕事の進め方に組み込みました。
2016年にはPivotal Cloud Foundry (現 Tanzu Application Service )を導入し、私たちが作るサービスのいくつかをゼロから構築し始めました。
2017年には、プラットフォームだけでなく、銀行全体のプラクティスを他の部門に複製し始めます。そして今年2018年は、これをさらに一歩進めて、ビジネスとITを近づけ、2つの部門の間のサイロをすべて取り払います。プラットフォーム組織と呼んでいるものに一体化させるのです。これは、私たちの変革において、真のデジタルバンクになるための根本的な変化だと考えています。
私たちは、お客様のニーズの変化に柔軟に対応できるテクノロジーを構築し、カスタマージャーニーを再構築するとともに優れたユーザー体験を実現したいと考えています。同時に、CI/CDパイプラインの自動化により、品質やセキュリティ、コントロールを体系的に、そして強制的に実現します。もっとも重要なことは、開発者がインフラを扱うのではなく、ビジネス機能の構築に時間を費やせるようにすることです。
私たちは2016年にPivotal Cloud Foundry(PCF)を、私たちのデジタルトランスフォーメーションにおける重要なイネーブラーのひとつとして選びました。PCFを導入したことで、メジャーリリースの市場投入までの時間が最大で6倍も短縮されたことを実感しています。市場投入までの時間は6カ月から1カ月に短縮されました。さらに、インフラのセルフプロビジョニングは1週間から1日に短縮されました。もっとも重要なことは、2年半の間、PCFの本番運用で一度もダウンしたことがないことです。
昨年、世界最大の銀行 API ポータルを立ち上げましたが、このポータルとその背後にある API は PCF で構築されています。現在、200を超える API が稼動しており、60を超えるライフパートナーがいます。これは、金融業界全体で起こっているオープンバンキングへの進出の一環で、当社の API や銀行のデータを使って他のユーザーが使用例を実験できるようにするもので、これらすべてを支えています。
ハッカソンを活用し、社外人材を獲得
トランスフォーメーションとは、最新の技術を調達し引きつけることに焦点を当てた課題です。私たちは仕事のやり方だけでなく、雇用の仕方も変えなければなりませんでした。Hack2Hireとは採用を目的としたユニークなハッカソンで、昨年はPivotalをはじめとするパートナーと組んで、シンガポールとインドでこのハッカソンを開催しました。
Hack2Hireは4つのステップからなる採用プロセスで、まず応募者の方はオンラインでのコーディング試験に参加します。コーディング試験の結果から技術的な課題を抽出し、昨年は300人以上をハッカソンに招待しました。応募者は5〜6人のチームに分かれ、自分たちが選んだ課題に取り組みます。
各チームにはDBSのメンターが付き、2日間のハッカソン期間中、彼らの仕事ぶりを観察し、サポートします。
チャレンジの上位入賞者には豪華賞品が贈られますが、ハッカソンの本当の賞品は内定を差し上げることです。Hack2Hireは、さまざまなバックグラウンドや業界から多様な人材を獲得するための非常に効果的なアプローチであることが証明されました。これは銀行業界だけでなく銀行以外の業界からも人材を確保するために常に持っていたものです。銀行以外からはスタートアップ企業やゲーム業界、大学、通信事業者、政府などから参加者があり、私たちはこれらの参加者を銀行の一員として歓迎しています。
2日間を通して、疲れているときやハッカソンで出会ったばかりの人たちと一緒に仕事をしなければならないときなど、ストレスの中で彼らがどのようなパフォーマンスを見せるのかを見ることができるのです。また、応募者は銀行の行員と交流し、DBS の文化、社員、銀行で行う仕事について学ぶことができます。
これは相互理解のための大きなイベントであり、実際に従業員になる前に理解を深めることができました。また、従業員同士の交流もあり、プログラム開始2年目の私たちにとって非常に楽しいイベントとなりました。
Siew Choo Shoh 氏の講演、いかがでしょうか。日本企業でも参考になる点が多いのではないでしょうか。
この講演はYouTube から視聴いただけますので、講演の雰囲気をお知りになりたい方はぜひご覧ください。
また、本年12月に SpringOne イベントがサンフランシスコで開催されることがアナウンスされました!今後詳細な情報が公開されますので定期的にご確認ください。