はじめに
Oracle Cloud VMware Solution(OCVS)を検討される方には、Oracle DatabaseとvSphereで構成されているシステムの移行を検討されている方も多いのでは無いでしょうか?
Oracle Cloudは、既存のオンプレミスのワークロードを移行し易く、そして安定して動作するように一から設計され、作られています。そのために、遅延が少なく安定したフラット・ネットワーク、ベアメタルのサーバー、レイヤー2ネットワーク(VLAN)など、他クラウドにはあまり見られない様なクラウド・サービスも提供しています。
OCVSについても、オンプレと同様の構成を取ることができ、クラウド移行のリスクやコストを削減するように設計されています。
例えば、1つのユーザーの仮想クラウドネットワークの中にベアメタル・サーバーやデータベース・サービスと、vSphere環境をデプロイでき、VLANを使用することもできます。既存の構成やセキュリティ設計やポリシーを活かして、クラウドに移行可能です。
今回は、Oracle DatabaseとvSphereを使用しているシステムの、Oracle CloudおよびOCVSへの移行についてご紹介します。
データベース構成と移行のパターン
オンプレミスでOracle DatabaseとvSphereを使用した構成では、大きく2つの構成があります。
1つはデータベースをvSphere上で稼働している構成。もう一つは、別サーバーで稼働している構成です。負荷の高いシステムでは、別サーバーとして、Oracle Exadataを使用している場合もあります。
OCVSに移行する場合には、基本的には同様の構成のままOracle Cloudに移行できます。また、データベースの管理コストを下げるために、Oracle CloudのPaaSサービスを使用することもできます。
それぞれの移行におけるメリットや考慮点は、次のようになります。
- OCVS上での稼働: オンプレミスでvSphere上でデータベースを稼働している場合は、そのままOCVS上で稼働することで移行コストを少なくできます。OCVSは1ノードあたりのコア数やメモリー、ストレージが大きいため、オンプレミスより少ないノード数で稼働できる可能性があります。また、OCVSの内蔵ストレージは高速なNVMe SSDを使用しているため、データベースのパフォーマンスも期待できます。
- IaaS(Compute)での稼働: オンプレミスでは別のサーバーでデータベースを稼働している場合、クラウドでも別のサーバーで稼働させることが、パフォーマンスやライセンスの観点から現実的です。IaaS(Compute)上でデータベースを稼働する場合には、オンプレミスと同様にL2 ネットワーク(VLAN)で直接接続が行え、非常に低遅延でvSphere上のVMとデータベース間で通信ができます。(ただし接続可能なVLANの数には上限がありますので、VLANが非常に多くある場合には注意が必要です)
- PaaS(データベース・サービス)での稼働: Oracle CloudではさまざまなデーベースのPaaSサービスを活用できます。vSphere環境の管理コストはOCVSにより削減できますが、データベースの管理コストも併せて考える必要があります。データベースのPaaSサービスを使用することで、データベースの管理コストも合わせて削減可能となります。
- 特にサーバーレスのAutonomous Database Serviceを使用した場合には、負荷に応じてCPUやIO帯域が動的にスケールされるため、データベース・ソフトウェア(サービス使用料金)のコストを最適化でき、チューニングも不要になることで、様々なデータベース管理タスクを大幅に削減できます。
- また、非常に負荷が高く、ミッションクリティカルなシステムでは、クラウドでExadataのクラウド・サービスを使用することが考えられます。オンプレミスのミッションクリティカルな環境でも多く使用されているExadataをユーザーの仮想クラウド・ネットワーク内で、時間課金で利用できます。OCVSと一緒にユーザーの仮想クラウド・ネットワーク内に配置して、高いセキュリティとパフォーマンスで安定的に稼働できます。
Oracle Cloud VMware Solution (OCVS) 上のVMとデータベース間の接続
データベースをOCVS上では無くOracle CloudのIaaS(Compute)やPaaSで稼働する場合は、vSphereで稼働するVMとデータベース間の接続が必要になります。また、システム移行時にはデータベースだけでは無く、ロードバランサーなどの接続も必要になることが考えられます。
OCVSでは、vSphereで稼働するVMとデータベースなどのサービス間の接続は、オンプレミスと同じように行えます。接続はプライベートIPで行われ、接続の設定はルーティングとセキュリティ設定のみです。設定はウィザードを使用して自動的に設定されますが、直接ルーティングテーブルを更新することも可能です。そのため、オンプレ同様の柔軟な設定が可能です。
ルーティングの設定は、デフォルトではNSX-T Data Centerが構成され、基本的にはNSX-T Data Center経由での接続になります。しかし、必要な場合は分散仮想スイッチ(vDS)を使用したアクセスも構成可能です。
以下はNSX-T Data Centerを使用した接続の構成例になります。
- 仮想クラウドネットワーク(VCN): 192.168.0.0/16
- ロードバランサ(LB)のパブリック・サブネット: 192.168.100.0/24
- OCVSのプライベート・サブネット: 192.168.200.0/24
- データベースのプライベート・サブネット: 192.168.210.0/24
- VMware NSX-T Data Centerオーバーレイ・ネットワーク: 172.16.0.0/24
移行
Oracle Cloud VMware Solution (OCVS) をユーザーの仮想ネットワーク内に、vSphere環境もデータベースなどのクラウド・サービスも一緒にデプロイできることで、多くの場合は、オンプレの構成をそのままクラウドに移行することが可能になります。
また、オンプレミスからクラウド上のvSphereへのアクセスも、データベースなどのクラウド・サービスへのアクセスも同様に行えるため、移行だけではなく、ハイブリッド構成や災害対策サイト(DR)構成もシンプルで容易になります。
- ネットワーク構成:
仮想クラウド・ネットワーク(VCN)内に、VLANやサブネットを構成し、vSphere環境およびOracle CloudのIaaS(Compute)、データベースのPaaSサービスを構成します。VLANは、SDDC作成時に自動的に作成することも可能ですが、OCIコンソール上で手動作成してからSDDCを作成し、利用することも可能です。
vSphere環境を含むネットワークは、ユーザーのプライベート・ネットワークなので、セキュリティやポリシーをオンプレミス同様に、柔軟に設定できます。 - オンプレミスとの接続は、移行するVMの数やデータサイズが大きい場合やオンラインで移行する必要がある場合、オンプレミスとクラウドのハイブリッドで使用する場合などには閉域網/専用線での接続が必要になってきます。オフラインで移行する場合には、データをハードディスクやストレージのアプライアンスで送る、Data Transferサービスを利用することも可能です。
- vSphere環境の移行:
vSphere環境からvShpere環境への移行には、HCXが使用できます。HCXを使用することで、vMotionでの移行や、バルクでの移行が可能です。HCXを使用しない場合でも、OCVSの場合には、通常のオンプレミスと同様に使用できるため、拡張リンク・モードで接続して移行したり、3rd Partyツール(VeeamやCommvaultなど)での移行も可能です。 - Oracle Databaseの移行:
データベースをOCVSではなくIaaS(Compute)やPaaSで稼働する場合には、通常のデータベースの移行も、合わせて必要となります。Oracle DatabaseのOracle Cloudへの移行では、Data Pumpなどによるデータの移行も可能ですが、移行のためのクラウド・サービスであるZero Downtime Migration(ZDM)やOracle Cloud Infrastructure GoldenGateを活用して、ダウンタイム無しで移行することも可能です。ZDMは、バックアップ・データを活用した移行や、GoldenGateを活用した移行、SolarisやAIX上のデータベースの移行など、様々な移行方法が使用でき、また自動化されているため、データベースの移行コスト大きく削減することが可能です。
まとめ
Oracle Cloud への移行では、vSphereとOracle Databaseをオンプレミス同様の構成で持っていくことができます。これにより、移行コストおよびリスクを削減できます。また、Oracle DatabaseのPaaS サービスも用途に応じて豊富にあり、移行向けのツールやサービスも活用できるため、Oracle DatabaseおよびvSphere環境の両方を移行し易くなっています。
日本オラクルでは、クラウド移行を無償で支援する「Oracle Cloud Lift Services」を提供しています。OCVSの移行について支援対象となっているため、ぜひご相談ください。