顧客は製品に対して大きな期待を抱いています。中でも手にする製品の品質は常に彼らが期待するものの1つです。そして、私たちの生活がオンラインへと移行するにつれ、顧客体験はまさにソフトウェアのユーザー体験であり、そこでは第一印象が重要になってきています。あなたの組織はソフトウェアを競合他社との差別化や新規顧客の獲得、ビジネスの成長の機会と見なしているでしょうか。それとも、既存のアプリケーションポートフォリオが多くの技術的な負債を抱えていて、絶望的なほど遅れていると感じているのでしょうか。
後者の場合、何らかの形でアプリケーションのモダナイゼーションやデジタルトランスフォーメーションのプログラムを検討したことがあるのではないでしょうか。古いアプリケーションを廃止してその一部をクラウドへ移行し、最も重要なシステムを最新のテクノロジーを駆使してモダナイズするものです。もしこれらに聞き覚えがあるならば、あなたは良い企業に所属しているといえるでしょう。
デジタルトランスフォーメーションに関する長年の議論を掘り下げた最近のグローバル調査では、成功を収めるチームの秘訣について重要なインサイトが明らかになりました。
例えば、ハイパフォーマンス企業はデジタルトランスフォーメーションやソフトウェアの開発と提供への取り組みで、アンダーパフォーマンス企業とはまったく異なるアプローチを取っていることがわかったのです。**
「モダナイズを目指す企業の幹部に私がよく尋ねる質問の一つは、ソフトウェアをどれだけ迅速に出荷できるかということです」。 VMware Tanzu Services の担当上級副社長、エドワード・ハイアット(Edward Hieatt)はこう話します。
「当然、彼らの答えは月単位や四半期単位のものになります。単に遅いよりも悪いことに、リリースエンジニアリングのプロセスは全員が総力を挙げて行わなければならず、そうしたとしても多数の不具合やダウンタイムが発生するのです」。ハイアットは「コードの完成から本番環境で実行されるまでに要する時間は、テクノロジー組織の健全性を示す良い指標になる」と考えています。 通常時に迅速かつ確実な出荷ができなければ、最も重要な局面で市況の変化に対応することなど到底できないでしょう。 |
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VMware, Inc. VMware Tanzu Services担当上級副社長エドワード・ハイアット(Edward Hieatt) |
イノベーションの勝者
ここ数ヶ月、私たちがまったく予期していなかった変化が起こりました。多くの人が通勤や店舗での買い物をしなくなりました。企業はこうした状況に対する正しい備えができていませんでした。しかし、事業の中核となるシステムに敏捷性が組み込まれていた企業は、そうでない企業を確実に凌駕していました。
ユニファイドコマースや店内在庫管理、購入システムといったものに投資してきた小売業者は、閉店した店舗をすぐにカーブサイドデリバリーや非接触型のピックアップポイント、地域の配送拠点へと転換しました。
実店舗を活用して競争力を高めている小売業者の一つがスポーツ用品小売チェーンのDick’s Sporting Goodsです。同社は新型コロナウイルスによるパンデミックが発生する前から店舗を活用してより良いeコマース体験をつくり出すための戦略に着手しました。「オンラインで購入した商品を店舗で受け取れるサービスを始めたのですが、これは大きな試合やイベントの当日にスポーツ用品などを必要とする人々にとって最適なものです」とハイアットは述べています。
“(モノリシックなアプリケーションは)我々が顧客のニーズに応え、求められる事業価値を推進する上での障害となっていました”
DICK’S SPORTING GOODS、ENGINEERING MANAGER SEAN GRAHAM氏
Dick’s Sporting Goodsに革新をもたらしたのは、店内在庫をリアルタイムで管理する最新のプリケーションです。このアプリを利用すれば、自宅で商品を購入した後、すぐに店舗で受け取ることができます。「このようなアプリケーション体験、つまり顧客体験を実現するには、従来のアプローチを一から考え直す必要がありました」とハイアットは語ります。このアプリは当時、トラックによる配送と在庫補充を目的として開発されたほかの小売業者の在庫管理アプリとは大きく異なるものでした。
Dick’s Sporting Goodsは中核となる在庫管理アプリをモダナイズし、チャネルをまたいだ新しい機能を提供することで顧客価値を増大させることに成功しました。これこそが顧客体験の未来を開く真のアプリケーションであり、真のデジタルトランスフォーメーションなのです。
成功するモダンアプリケーションの設計図:人材、プロセス、テクノロジー
開発者の雇用、クラウドの採用、DevOpsやアジャイル原則への移行など、自社の運命をコントロールすべく投資を行う企業が増えてきていることをハイアットは認識しています。しかし、それら企業のリーダーが人材とプロセス、テクノロジーを網羅する包括的な計画をつくっているかどうかについては疑問を感じています。「パブリッククラウドのプロバイダーと大型契約を結び、チームメンバーに『我が社はクラウドを導入している』と伝えるのは簡単なことです。しかし、単一のテクノロジーやツールが万能薬になることはあり得ません」(ハイアット)。
ソフトウェアのバックグラウンドを持った成長志向のリーダー
CIOの平均在職期間は4.3年です。「その理由の一つとしてCIOは不可能に近い目標を達成しなければならないことが挙げられます」とハイアットは言います。その目標とは品質とサービス、安全性を犠牲にすることなく、毎年のように支出を減らさなければならないことです。同時に、CIOには新しい機能やアプリケーション、能力を必要とするイノベーションのアジェンダに沿うことも求められます。
ハイアットは次のように述べています。「一般的な企業のIT予算のうち80~90%が既存のポートフォリオの維持に割り当てられている現状では、目標達成はほぼ不可能でしょう。考えられる唯一の実行可能な道は、既存のポートフォリオのモダナイゼーションに向けて大胆に舵を切ることです。運用コストを削減し、残存するアプリケーションの信頼性を向上させる。そして柔軟性とレジリエンス(回復力)にフォーカスしてほかのすべてを再構築し、予測できない未来に備えるのです」。 ハイアットが述べていることは、調査回答者が「ソフトウェア志向のリーダーほどビジネスを成功させる確率が高い」と考える理由の一つです。CIOは技術的なバックグラウンドを持っています。そのため、初期状態のアプリをリアーキテクトするための追加投資を実行し、機能しているプロジェクトを加速させ、機能していないプロジェクトを排除することができるのです。 |
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現代のビジネスにおいて、ソフトウェア志向のリーダーの存在がいかに重要か。調査結果を示したインフォグラフィックは、こちらからご覧いただけます。 |
ハイアットはまた、次のように述べています。「このプロセスが成功すれば、すべての新しい取り組みでコストを削減できるというメリットもあります。プロジェクト1件あたりのコストが低ければ多くのことを試せますから。また、イノベーションのアジェンダがある場合、優れたアイデアをより多く試すことができればビジネスでの勝算は格段に高くなります」。
最新のアプリケーションを成功させるもう一つの鍵は、開発者に権限を与えることです。例えばVMwareが保険会社のLiberty Mutualと協働したとき、Liberty Mutualが重点を置いていたのは進化するリスクモデルに対応するための技術開発でした。「(協働によって)チームが複数のプロジェクトに参加し、最高の製品にフォーカスできるようになりました。発売までに陳腐化する可能性のある一つのプロジェクトに多額の投資はしません」とハイアットは言います。その結果、Liberty Mutualは市場投入までの時間を短縮できました。
プラットフォームを進化させる
従来のビジネスを進化させる最善の方法は、革命ではなく段階的な変化だとハイアットは考えています。「多くの企業がオール・オア・ナッシングのプロセスでトランスフォーメーションに取り組むのを目にしてきました。彼らはコンサルタントを雇い、プログラムオフィスを整備し、複数年にわたるロードマップを作成します。ですが、こうしたプロジェクトは最高のROIが得られない傾向にあります」とハイアットは説明します。
“文化やプロセスを変えるのは難しい。最も成功を収めるプロジェクトとは達成可能な目標から始まり、ステークホルダーが結果に関与し続けることを図ったものです。初めの成功の上に次の成功を積み重ねていくことです”
VMware, Inc. VMware Tanzu Services担当上級副社長 エドワード・ハイアット
高成長企業の専門家への調査でも同じような結果が出ています。調査会社のVanson Bourneの調査では、アプリの開発とデプロイの自律的なセルフサービスモデルの潜在的なメリットとして次のようなものが挙げられています。
- エンドユーザー体験の向上
- チーム間の連携強化
Infrastructure as Code(コードとしてのインフラストラクチャ)や規制された業界向けのクラウド、すべての人向けの「Kubernetes」など、かつては誰も手が届かないように思われてきた機能は、誰もが利用できる最新のアプリケーションへの実証済みの移行パスを提供しています。そして、それがアプリケーションアーキテクチャとリリースエンジニアリングに関する考え方の変化と相まって、文化的でより良い採用活動の成果につながっていくのです。
エクスペリエンス(体験)がすべて
企業のリーダーが人材とプロセス、テクノロジーの調整を図るためのハードワークを行えば、競争上の優位性と差別化を推進することができます。そして、優れたモダンアプリケーション体験をより早く提供することでビジネスを成功に導くことが可能になるのです。
*US参考資料原文、および参考資料内コメントは下記URLよりご覧ください。(英語サイト)
https://www.vmware.com/radius/customer-app-experience-business-success/
*世界17カ国のビジネス意思決定者、IT意思決定者、アプリ開発者5,000人を対象に、VMwareの委託を受けたVanson Bourne社が、2020年3月と4月に調査を実施しました。
**年間15%以上の成長を遂げる企業をハイパフォーマンス企業とし、年間成長率が-1%以下の企業をアンダーパフォーマンス企業としています。