日本ヒューレット・パッカード株式会社の中川明美です。
今回は、vSphere 6.5でアップデートされたvSphere DRSの次の機能をご紹介します。
- Predictive DRSの有効化
- その他のオプション
- 仮想マシンの分散
- ロードバランシングのためのメモリメトリック
- CPUオーバーコミットメント
vRealize Operationsと連携し、予測メトリックに基づいてリソースをバランシングするPredictive DRSは、vRealize Operationsのさらなる活用がけん引できそうですね。
#1: vCenter Sever Appliance_1 (コンポーネントおよびサービス / スケーラビリティ)
#2: vCenter Sever Appliance_2 (高可用性 / バックアップとリストア)
#3: 仮想ハードウェア Version 13 / VMware Tools Version 10.1
#4: 3つの管理ツール (vSphere Host Client / vSphere Client / vSphere Web Client)
#5: vSphere HA (Proactive HA / ホスト障害への応答 / 仮想マシンで許容するパフォーマンス低下)
#6: vSphere DRS (Predictive DRS / その他のオプション)
◆Predictive DRS◆
Predictive DRSは、vSphere DRSとvRealize Operations (以降vROps) を連携し、仮想マシンの配置とリソースのバランスを決定する機能です。
vROpsは、履歴データに基づき、近い将来の仮想マシンの予測ワークロードを分析します。vROpsではトレンドとして表示されます。
vSphere DRSは、現在の使用値 (リアルタイムメトリック)に加え、予測ワークロード値(予測メトリック)にも対応し、仮想マシンからリソースが要求される前に、仮想マシンの配置を決定することができます。
Proactive DRSは、vSphere 6.5 + vROps 6.4以降の環境で使用できます。
下図の画面から、Predictive DRSを有効化します。
Proactive DRSはタイムリーな移行のために1時間前 (デフォルト) の値を使用します。
状況によって、移行を判断するメトリックが異なります。
<現在の使用率が予測使用率を上回る場合>
現在の使用率が優先され、この値を使用して推奨が生成されます。
<予測使用率が現在の使用率を上回る場合>
予測使用率の値が仮想マシンの現在のデマンドとして使用されます。このデマンド値を基に、仮想マシンからリソースが要求される前にリソースが利用できる状況にします。要求前に対応するため、パフォーマンスへの影響を軽減します。
◆その他のオプション◆
vSphere 6.5では次の3つのAdvanced Optionsが追加されています。
<仮想マシンの分散:TryBalanceVmsPerHost>
ESXiホスト間で仮想マシンの数を均等に分散します。
DRSにより1台のESXiホスト上に多くの仮想マシンが配置される場合があります。その状況でvSphere HAが動作した場合、分散された仮想マシンと比べ、多くの仮想マシンの再起動が必要になります。このような状況を回避する際に、仮想マシンの分散は有効です。
このオプションを設定すると、各ESXiホストにはロードバランシングmaxVMsの制限が与えられます。この制限は、ロードバランシングにのみ適用されます。
<ロードバランシングのためのメモリメトリック>
ESXiホスト上のメモリ負荷を計算する時、「有効なメモリ」ではなく「消費されたメモリ」メトリックを使用します。
オーバーコミットされている環境では有効なメモリが適しています。有効なメモリは、アイドルメモリの25%が加算され、負荷を計算します。
オーバーコミットされていない環境では、このオプションを選択し、消費されたメモリを使用してバランシングすることもできます。
※仮想マシンのメモリメトリック
「有効なメモリ」はゲストOSが使用している物理メモリ量、「消費されたメモリ」は仮想マシンによって使用されるゲスト物理メモリ量 (共有メモリのうち該当の仮想マシン分を含む) を表します。
<CPUオーバーコミットメント: MaxVcpusPerClusterPct>
クラスタ内で仮想CPUと物理CPUの比率を設定し、オーバーコミットを制御します。オプションで定義された値に達すると、追加の仮想マシンをパワーオンことはできません。
オーバーコミットメント率(最小0/最大500)は、次を参考にしてください。
- 0-99% 1vCPU未満:1pCPU (コア) ※オーバーコミットしない
- 100% 1vCPU:1pCPU (コア)
- 500% 5vCPU:1pCPU (コア)
このオプションはクラスタが対象です。ESXiホストを対象とする場合は「MaxVcpusPerCore」で指定します。
追加機能ではありませんが、改良点をご紹介します。
◆DRS移行のしきい値
6.5では、移行のしきい値に従来のCPUとメモリに加え、物理NICの使用率が加わりました。
CPUとメモリの統計値から移行の可否を判断することに変わりはありません。初期配置および負荷分散のために移行先のESXiホストが選択されると、次にDRSはその移行先が最適かを判断するために、ネットワーク使用率をチェックします。
移行先のESXiホストに接続される物理NICの使用率が80% (デフォルト値) を超えていれば、最適な配置ではないと判断し、別のESXiホストを使用します。
ネットワーク使用率のしきい値は、「NetworkAwareDrsSaturationThresholdPercent」で変更します。
◆vSphere DRSに関する情報◆
vSphere 6.5のDRSについての詳細な情報は、こちらを参照ください。
こちらのBlogでは取り上げなかった、パフォーマンス向上のための改良点についても述べられています。
https://www.vmware.com/content/dam/digitalmarketing/vmware/en/pdf/techpaper/drs-vsphere65-perf.pdf
アップデートされたDRSについては終了です。
ここからは、クラスタからESXiホストを削除する方法をご紹介します。
「メンテナンスモードにしなければクラスタからESXiホストを削除できないのですかと尋ねられることがあります。こちらで紹介する方法は、仮想マシンをシャットダウンできない場合にお試しください。可能なら、メンテナンスモードに移行後、クラスタから削除ください。
◆クラスタからESXiホストの削除◆
メンテナンスモードに移行せず、ホストをインベントリから除去すると、次のメッセージが表示されます。
ESXiホストをvCenter Serverから切断すると、メンテナンスモードに移行せず、ESXiホストをインベントリから除去することができます。
ESXiホストを右クリック→接続→切断と操作します。
次のメッセージの内容を確認の上、操作を進めてください。
切断後、インベントリの除去を行うと、次のメッセージが表示され、ESXiホストをクラスタから削除することができます。
ドラッグアンドドロップで、データセンター配下に置くこともできます。
◆まとめ◆
「ここが変わった! VMware vSphere 6.5」のすべての回が終了しました。
vSphereもバージョンが上がるたびに様々改善されていますね。今回取り上げた機能を使用すると、運用管理面が強化されるように思います。特にHAやDRSは、ホスト障害およびパフォーマンス低下に備えて、予防しましょうというメッセージを感じます。
今後は、HAとDRSの併用を前提に、構築設計していく必要があるのかもしれませんね。
また、「VMware Cloud on AWS」が発表され、Hybrid Cloud環境がけん引されそうですね。vRealize製品も注目を集めそうです。機会がありましたら、vRealize製品のBlogも投稿できたらと思います。