日本ヒューレット・パッカード株式会社の中川明美です。
今回は、vCenter ServerやESXiホストをアップグレードする際に、アップグレードの可否が検討される「仮想ハードウェア」と「VMware Tools」についてご紹介します。
現在設定されているバージョンが仮想マシンの継続稼働に問題があるのか、最新バージョンにアップグレードしたらどんなメリットがあるのかを知っておくことは、大事なポイントであると思います。
また、仮想ハードウェアのアップグレード時には仮想マシンを再起動するダウンタイムが発生します。「いつ」「誰が」実施するのかも考慮する必要がありますね。
#1: vCenter Sever Appliance_1 (コンポーネントおよびサービス / スケーラビリティ)
#2: vCenter Sever Appliance_2 (高可用性 / バックアップとリストア)
#3: 仮想ハードウェア Version 13 / VMware Tools Version 10.1
#4: 3つの管理ツール (vSphere Host Client / vSphere Client / vSphere Web Client)
#5: vSphere HA (Proactive HA / ホスト障害への応答 / 仮想マシンで許容するパフォーマンス低下)
#6: vSphere DRS (Predictive DRS / その他のオプション)
◆仮想ハードウェアバージョン13◆
vSphere 6.5で提供される最新の仮想ハードウェアバージョンは、「13」です。
下表は、「13」から提供される機能です。これらの機能は、「仮想マシンに ESXi 6.5 以降との互換性(仮想ハードウェアバージョン13)が設定されている」こと、「サポートするゲスト OS が仮想マシンにインストールされている」ことが前提です。
※仮想ハードウェアはESXiホストで使用できる物理ハードウェアに対応します。仮想ハードウェアバージョン13では最大6TBのメモリをサポートします。しかしESXiホストに6TBの物理メモリが搭載されていなければ、仮想マシンに割り当てることはできません。
仮想ハードウェアもアップグレードしなければならないの?
たとえば下図のように、vCenter Server 5.5をvCenter Server 6.5へ、vSphere ESXi 5.5の一部をvSphere ESXi 6.5へアップグレードした例を使い、仮想ハードウェアバージョンのアップグレード可否について確認します。ここではあえてこの構成にしています。
アップグレードしない場合 (仮想マシンの互換性を変更しない)
構成例ではESXiホストのバージョンが5.5と6.5の混在環境のため、仮想マシンの互換性は古いESXiホストとの互換性を維持するために、「ESXi 5.5以降以降 (ハードウェアバージョン 10)」を選択します。言い換えると、仮想マシンの互換性は変更せず、仮想マシンの稼働を継続します。
仮想マシンの互換性を「ESXi 6.5以降」に変更すると、その仮想マシンをESXi 5.5または6.0 ホスト上で実行することができません。たとえば、仮想マシンの互換性が「ESXi 6.5以降」である仮想マシンを、ESXi 5.5ホストへ移行することができません。
また、すべてのESXiホストが6.5であったとしても、最新の仮想ハードウェア機能を使用しないのであれば、必ずしも最新の仮想ハードウェアバージョンを選択する必要はありません。
私はESX 4.0 ホスト上で作成した仮想マシンをovfファイルにエクスポートし、新しいバージョンのESXi ホスト上で継続的に使用したことがあります。これは互換性により可能となります。
vSphere ESXi 6.5では、仮想マシンの互換性に、「ESX/ESXi 4.0 以降 (ハードウェアバージョン 7) 」を選択できます。これは仮想ハードウェアバージョン 7以降の仮想マシンを、ESXi 6.5ホスト上に配置できることも意味します。
VMware製品、ストレージやネットワークベンダーから提供されるovfファイル (仮想アプライアンス) は、互換性を考慮し「ESXi 5.0以降 (ハードウェアバージョン 8) 」で提供されているのを見かけますね。
アップグレードする場合 (仮想マシンの互換性を最新の「ESXi 6.5以降」に変更する)
6.5で提供される最新の仮想ハードウェア機能を使用したい場合は、すべてのESXiホストを6.5で構成し、仮想マシンの互換性に「ESXi 6.5以降」を選択します。
仮想マシンの互換性のデフォルト値
ESXi 6.5ホスト上で新規に作成する仮想マシンの互換性は「ESXi 6.5以降」が選択されます。
互換性のデフォルト値は仮想マシンを作成する ESXi ホストのバージョンによって決まります。デフォルトの互換性の設定値をESXiホストのバージョンとは異なる値にしたい場合には、こちらを参照ください。
http://pubs.vmware.com/vsphere-65/index.jsp#com.vmware.vsphere.vm_admin.doc/GUID-FD9DC4FF-4420-4FCA-AEF4-6E19AFF869F5.html
◆VMware Tools バージョン10.1.x◆
vSphere 6.5 に付属している VMware Tools のバージョンは 10.1です。10.1はメジャーリリースで、2017年5月18日に10.1.7がリリースされています。
最新のゲスト OS はVMware Tools 10.1.xに対応し、レガシー ゲスト OS はVMware Tools 10.0.12 に対応します。
VMware Tools 10.1.xでサポートされるゲスト OSです。
VMware Tools 10.1で提供されている機能です。
VMware Toolsもアップグレードしなければならないの?
仮想ハードウェアと同様にVMware Tools も最新バージョンへのアップグレードは必ずしも必要ではありません。VMware Tools の新しいバージョンは、複数のホ ストのバージョンと互換性があります。追加された機能や性能が環境にとって必要かどうかを検討後、実行ください。
下図は互換性リストの一部です。
◆仮想マシンのアップグレードのダウンタイム◆
仮想マシンをアップグレードする時、必要なダウンタイムはゲスト OS と実行するアップグレードの種類によって異なります。VMware Tools のアップグレードから開始します。
Linux ゲスト OS の多くは、VMware Tools の現在のバージョンではアップグレード後の再起動が不要です。以前のバージョンでは、「PVSCI」「VMXNET」「VMXNET3」ドライバのアップグレード後にゲスト OS を再起動する必要があります。
◆参考◆
- ESX/ESXiホストでサポートされる仮想ハードウェアはこちらのKBを参照ください。
Hardware features available with virtual machine compatibility settings (2051652)
- ESXi 6.5ホストでバンドされないVMware Tools ISOイメージは、My VMwareからダウンロードできます。バンドルされていない、特定のオペレーティング システム用の VMware Tools をダウンロードする場合は、VMware Tools 10.1.0 リリース ノートなどに記載されている手順を参照ください。
- ESXiホストのバージョンに関係なく、最新のVMware Tools をインストールまたはアップグレードする方法についてはこちらのKBを参照ください。
Installing and upgrading the latest version of VMware Tools on existing hosts (2129825)
こちらのVMware vSphere Blogはコメントも含め参考になります。
https://blogs.vmware.com/vsphere/2015/09/vmware-tools-lifecycle-why-tools-can-drive-you-crazy-and-how-to-avoid-it.html
※ESXi 6.5ホストにバンドルされる3つのISOイメージです。
- 仮想マシンのアップグレードについては、こちらのドキュメントを参照ください。
https://docs.vmware.com/jp/VMware-vSphere/6.5/com.vmware.vsphere.vm_admin.doc/GUID-EE77B0A9-F8FF-4785-BEAD-B6F04EE04492.html
◆まとめ◆
今回は、最新の「仮想ハードウェア」と「VMware Tools」をご紹介しました。
本文内では、仮想マシンのアップグレードは必ずしも必要ではないと述べていますが、アップグレードすればパフォーマンスや運用の利便性を向上する機能を使用できます。ダウンタイムを考慮し、仮想マシンのアップグレードを検討いただけたらと思います。
ダウンタイムは仮想ハードウェアのアップグレード時には必ず発生しますから、「仮想マシンの互換性アップグレードのスケジュール設定」やUpdate Managerを利用して計画的に進めることをお勧めします。
今回のBlogを書くにあたり、あらためて「仮想ハードウェア」と「VMware Tools」について調べてみました。KBやドキュメントを読むと、新たな発見があり、とても楽しかったです。
お時間が許せば、参考にあげているKBやドキュメントもぜひ参照いただければと思います。
次回は、vSphere 6.5で使用する管理ツールについてご紹介します。