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Microsoft 社のプライベート クラウドのホワイトペーパーに修正が必要な 7 つの理由

Microsoft 社が公開したホワイトペーパーには、VMware のソリューションと比べて、Microsoft 社のプライベート クラウド ソリューションはコストが大幅に低いと記述されています。 このホワイトペーパーは、内容のなんと 75 % が VMware に関するものです。
このホワイトペーパーのコスト比較は間違っています。たとえば、Microsoft 社の割引価格を VMware の定価*1と比較したり、異なる機能を比較していたり、ソフトウェアだけのコストを比較して総コストを無視したりしています。 適正に計算すると、VMware のソリューションを使用した場合、Microsoft 社のソリューションよりも総コストが 15 % 少なくなります。

Microsoft 社がホワイトペーパーに記載したプライベート クラウドのコスト比較が正しくない理由

(1) ホワイトペーパーでは、Microsoft 社のボリューム ディスカウント価格を VMware の定価と比較しています。 ホワイトペーパーの価格は、Microsoft 社の 「Enrollment for Core Infrastructure (ECI)」 バンドルを購入した場合のものです。 このバンドルでは、プロセッサ ライセンス 50 個以上と 3 年間のソフトウェア アシュアランス (SA) の購入が必要になります。 VMware vSphere では、このような最小購入条件を設定していません。 適正に比較するには、両社の定価を比較するか、両社のボリューム ディスカウント価格を比較するべきです。
(2) ホワイトペーパーでは、異なる機能セットのものを比較しています (Microsoft 社の ECI バンドルは VMware のクラウド インフラ スイートと同等ではありません)。 ECI バンドルには、次に示す VMware 製品と完全に同等のソリューションがないか、ECI バンドルのほうが機能面で大幅に劣っているので、同じ条件下での比較になっていません。

VMware の固有の機能 Microsoft 社の ECI に対する VMware の優位性 Microsoft 社のソリューション
vShield 仮想データセンターとクラウド環境をすべてのレベル (ホスト、ネットワーク、アプリケーション、データ、および端末) で保護する、適応性に優れた仮想化対応のセキュリティ。 端末の保護は単なるアンチウイルス ソリューションであり、仮想化に対応していない。 組み込みのネットワーク ロードバランサーやファイアウォールは無く、ゲストOS内にエージェントを必要とし、アンチウイルス ストームの問題が発生しやすい。
Site Recovery Manager すぐに利用を開始できる、データセンター レベルのディザスタ リカバリ自動化ソリューション。セカンダリ サイトへのレプリケーション、リカバリ プランや移行プランの管理、ダウンタイムなしのテストが可能。 SAN / ホスト ベースのレプリケーションと統合されていないうえ、サイトのフェイルオーバーとフェイルバックの調整が面倒。ネットワークが分離された環境での全体的なフェイルオーバーのテストができないので、ディザスタ リカバリの対象範囲が限られ、手作業が非常に多くなってしまう。
vCenter Operations クラウド専用に作られた管理ソリューション。インテリジェントな監視、自己学習の分析機能、プロアクティブな管理、インフラストラクチャ全体の包括的な視認性を実現。 クラウドの限定的な運用管理。静的なしきい値をベースとした事後対応型のベーシックな分析機能を提供。監視・分析のための可視化も限定的。
vCloud Director 共有インフラストラクチャにおけるプロビジョニング時間の短縮。 拡張機能、API、およびクラウド間の標準を使用して、異なるクラウド間でのワークロードの移行や、既存の管理システムとの連携が可能。 テナントを完全に分離できず、クラウド プロバイダへの拡張は Azure プラットフォームに限定。

(3) ホワイトペーパーでは VMware 製品の上位エディションを比較の対象にしていますが、Microsoft 社の製品の機能は、VMware 製品の下位エディションに近いものです。 Hyper-V R2 の機能は、実際には vSphere Standard エディションと同等です。
(4) ホワイトペーパーでは、総コスト、および、総コストに対する仮想マシンの統合率の効果を無視しています。ホワイトペーパーでは、ソフトウェア ライセンスのコストだけを比較しており、TCO (総所有コスト) を無視しています。 また、仮想マシンの統合率も考慮していません。 vSphere は、Hyper-V と比べて仮想マシンの統合率が 20 % 高いので (サードパーティによるテストで実証)、サーバ、ネットワーク、ストレージ、電力と冷却、ゲスト OS のコストが抑えられるため、総コストが少なくなります。
また、Hyper-V は、重要な機能の不足からサードパーティ製ソリューションを追加購入する必要がありますが、そのコストもこのホワイトペーパーでは無視されています。
適正な計算を行った場合、Microsoft 社のコストは VMware と変わりません。Microsoft 社の Windows Server 2008 と System Center 2012 を定価で購入した場合の総コストを、VMware vSphere Standard と vCenter の総コストと比較すると、VMware のほうが 15 % 少なくなります。 Microsoft 社のホワイトペーパーと同じ構成を使用した場合の総コストと、仮想マシン 1 台あたりのコストを以下に示します。 デュアル ソケットの 6 コア サーバを使用して、仮想マシン 500 台を、Microsoft 社の場合はホスト 1 台に仮想マシン 14 台、VMware の場合はホスト 1 台に仮想マシン 17 台を展開しています。

仮想マシン1台あたりのコスト VMware Microsoft 社 VMware 利用時の差額 VMware 利用時の差額(%)
インフラストラクチャ コスト
サーバ 414,000 ドル 510,600 ドル 96,600 ドル 19%
ストレージ 349,000 ドル 366,500 ドル 17,500 ドル 5%
ネットワーク 40,000 ドル 52,000 ドル 12,000 ドル 23%
電力および冷却 (1 年) 25,002 ドル 30,836 ドル 5,834 ドル 19%
データセンターの設置場所 (1 年) 6,510 ドル 8,680 ドル 2,170 ドル 25%
インフラストラクチャの総コスト 834,512 ドル 968,616 ドル 134,104 ドル 14%
仮想化ソフトウェアのコスト
vSphere 5 (Standard) + SnS 119,684 ドル
Hyper-V 0 ドル
Windows のライセンス コスト
Win 2008 と Hyper-V + SA 269,910 ドル 332,889 ドル 62,979 ドル 23%
仮想化管理ソフトウェアのコスト
vCenter の総コスト (SnS 含む) 9,465 ドル
vCenter と SnS 7,318 ドル
vCenter Server 用 Windows と SQL 0 ドル
vCenter Server 用 SQL Server 2005 2,147 ドル
System Center と SA 133,496 ドル
SMSD と SA 133,496 ドル
管理ソフトウェアの総コスト 9,465 ドル 133,496 ドル 124,031 ドル 93%
ソフトウェアの総コスト 399,059 ドル 466,385 ドル 67,326 ドル 14%
MS サポート (1 年間に 20 時間、1 時間 214 ドルを想定) 8,560 ドル
総コスト 1,233,571 ドル 1,443,561 ドル 209,990 ドル 15%
アプリケーションあたりの総コスト 2,467 ドル 2,887 ドル 420 ドル 15%
仮想マシン統合率の差 (%) 21%

Microsoft 社の SA にはサポートが含まれないので、Microsoft 社のコストには、平均的なサポート利用時間として、1 年間に 20 時間のサポートを加算しています。 また、Microsoft 社のソリューションでは、より多くのサーバが必要になるので、ストレージとネットワークのコストも高くなっています。
(5) ホワイトペーパーでは、仮想マシンの数が増えても Microsoft 社のコストは増加しないと記述されていますが、これは間違っています。 ホワイトペーパーでは、仮想マシンの数が増えると、VMware 製品の場合はコストが増加するが、Microsoft 社の場合は変わらないと記述されています。 この記述は、現実的な成長モデルに基づいていません。 さまざまなパフォーマンス テストの報告によると、Hyper-V R2 では、1 プロセッサでサポートされる仮想マシン台数が vSphere 5 よりも少ないので、Microsoft 社のソリューションの場合、仮想マシンの台数が増加すると、必要なサーバ台数が増え、それに伴ってその他の関連コストも増加することがわかっています。
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(6) System Center 2012 の値上げに伴い、Microsoft 社の管理コストは 10 ~ 20 % 増加する予定です。 Microsoft 社のホワイトペーパーでは、System Center の値上げに触れていません。 Microsoft 社が発表した System Center 2012 の価格とパッケージの変更点によると、Datacenter Edition では、プロセッサ単位のライセンス価格が 37.5 % 上がっています。

System Center (現在): Datacenter Edition System Center 2012: Datacenter Edition
2 年間の SA を含む定価 1 プロセッサあたり 1,310 ドル 2 プロセッサまで 3,607 ドル
SA を含まないプロセッサあたりのライセンス価格 1 プロセッサあたり 873 ドル 1 プロセッサあたり 1,202 ドル

Management Server と SQL Server のライセンス コストを差し引いても、価格は 10 ~ 20 % 上昇します。 当社の分析では、環境内の仮想マシン台数が多いほど、影響が大きくなることがわかっています。

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また、新しい System Center 2012 に含まれるコンポーネントは個別に購入できないので、高額な System Center 2012 スイートを購入せざるを得ません。

(7) VMware のサポートおよびサブスクリプション サービス (SnS) との比較時に Microsoft 社のサポート コストが含まれていません。 Microsoft 社の SA はライセンス価格の 25 % に設定されており、「MS サポート」 は含まれていません。 「サポート」 は、Microsoft 社から別途購入するか (1 時間 200 ドル以上)、サードパーティのサービスを利用することになっています。 VMware の SnS の場合、ソフトウェアのすべてのリリースとアップデートを入手できるだけでなく、VMware のテクニカル サポートも利用できます。 ホワイトペーパーでは、VMware の最上位のサポート コストを使用し、Microsoft 社のサポート コストは完全に無視しています。
最後に、VMware のクラウド インフラストラクチャ製品は、仮想インフラストラクチャおよびクラウド インフラストラクチャ用に設計、構築されており、Microsoft 社の製品と比べて、効率性、信頼性、および堅牢性が非常に優れていることが、このホワイトペーパーには記載されていません。 Microsoft 社の製品と比べて VMware のクラウド インフラストラクチャ スイートが優れている点をまとめたブログ(英語)をご覧ください。
Microsoft 社のホワイトペーパーは、VMware 社の価格を作為的に上げて、自社製品の短所からユーザーの目をそらそうとしているにすぎません。
*1: 米国市場におけるリストプライスを指します

※本内容は、2012年4月9日の米国のブログ エントリの抄訳版です