Google Cloud で Google Cloud VMware Engine を担当している栃沢です。
本年もよろしくお願いいたします。
昨年末から Google Cloud VMware Engine (以下 GCVE)についての連載を始めさせて頂きました。前回は Google Cloud における GCVE の位置づけと特長についてご紹介をしました。
今回は GCVE で VMware の各ソリューションをどのように活用することができるかを解説していきます。
Google Cloud VMware Engine で利用できる VMware ソリューション
まず、GCVE で利用できる VMware ソリューションを 2 つの観点で改めてご紹介しましょう。
- GCVE を契約時にビルトインで利用可能なソリューション(2021 年 1 月現在)
- VMware vSphere Enterprise Plus 7.0 u1a
- VMware vSAN (vSAN) 7.0 u1
- VMware NSX-T Advanced 3.0.2
- VMware HCX 3.5.3
詳細はプライベート クラウド内の VMware をご確認ください。
GCVE の価格には上記のライセンス及び物理インフラの提供が含まれています。
(ストレージ領域は VMware vSAN ストレージ クラスタが展開済)そのため、すでに保持している vSphere、NSX-T ライセンスの GCVE 環境への BYOL は許可されていません。また、上記ソリューションの一部の機能は、GCVE のサービス提供の観点から機能制限がされている部分もあるため、詳細は事前に公式ドキュメントをご確認頂くか、Google Cloud までお問い合わせいただければと思います。
- 上記以外の VMware ソリューション
基本的には GCVE が提供する vSphere、NSX-T、及び vSAN の仕様に則っている VMware のソリューションであれば BYOL での利用が可能です。VMware Site Recovery Manager、VMware Horizon、VMware vRealize Suite などのソリューションを導入頂くことも可能です。
ただし、各ソリューションのライセンス規約に則る必要があるため、すでにライセンスを保持ししている場合には、そのライセンスが GCVE のようなパブリック クラウドでも利用できるものかどうかを予め確認することをおすすめします。
例えば、 VMware Horizon の場合、オンプレミスの vSphere 環境と GCVE の双方で仮想デスクトップを展開したい場合には、Horizon Universal License を保持している必要があります。ライセンスの扱いなどについて不明点があれば、VMware または Google Cloud までお問い合わせください。
ここからは、GCVE 環境でご要望を頂く VMware ソリューションのユースケースについてご紹介をしていきたいと思います。
VMware vRealize Operations、vRealize Log Insight による運用管理
GCVE の利用を検討される多くのユーザは、オンプレミス環境ですでに VMware vSphere を利用されています。GCVE を活用することでパブリック クラウドのメリットを享受できるのと同時に今まで培ってきた VMware vSphere の運用スキルを継続して活用することも可能です。
多くの場合、オンプレミス環境と GCVE に展開される プライベート クラウド環境をハイブリッドで運用することになると思いますので、運用についてもハイブリッド クラウドに適した方法を選択することが望ましいでしょう。
VMware vSphere 環境の運用管理を効率的に行うという観点では、VMware vRealize Suite を活用することが有効です。
VMware vRealize Operations 及び VMware vRealize Log Insight を組み合わせることによって、オンプレミスからパブリック クラウドまで全体を俯瞰して監視、分析を行うことが可能になります。(以下のスライドは Google Cloud Cloud OnAir 【実演】Google Cloud VMware Engine と VMware ソリューションを組み合わせたハイブリッド環境の実現・運用管理方法」からVMware セッションより抜粋)
vRealize Operations は、vCenter から展開されている仮想マシン、クラスタに関するメトリック、リソース情報などの構造化データや障害アラートを収集します。また、vRealize Log Insight を併用することによって、各種ログを集約してログの構造化を行うことで vRealize Operations Manager で Software-Defined Data Center(SDDC)環境の状態を総合的に分析し、インフラ管理者に対して分析結果の可視化とそれに基づくキャパシティ予測と推奨アクションを提供することも可能となります。
vCenter と連携した vRealize Operations Manager からは GUI ベースで 仮想マシン、ホスト、クラスタ、ネットワークのリソース管理とコンプライアンス チェックができると同時に、以下の項目も管理することが可能です。
・パフォーマンス監視とそれをもとにしたパフォーマンスの最適化
・キャパシティ管理と今後の利用予測
・トラブル シューティングの迅速化
・アプリケーションの監視
オンプレミスの vCenter 、GCVE の vCenter それぞれから vRealize Operations Manager 及び vRealize Log Insightへ情報を集約することによって、ハイブリッド クラウド環境におけるオペレーションの一元化を実現することができます。クラウド移行にあたって課題の1つとなる運用負荷についてもハイブリッド クラウドでの運用が可能なソリューションを活用することで解消することが可能です。
上記の例では、VMware が SaaS モデルで提供する VMware vRealize Cloud Universal の 利用を想定した記載となっていますが、当然 アプライアンスで提供される VMware vRealize Suite による管理も可能です。
すでにオンプレミス環境で vRealize Operations Manager などをご利用されているユーザ様はそのまま GCVE 環境も連携することも可能です。また、GCVE の移行を機に vRealize Operations を導入して、オンプレミス環境のリソース活用状況を把握した上で、GCVE 側の SDDC 環境での展開するノード数を正しく把握するといった活用方法も考えられます。このようなケースでは SaaS サービスとして提供している VMware vRealize Cloud Universalを活用する方が導入しやすいでしょう。
一方、Google Cloud の他のサービスをご利用頂いている場合には Google Cloud オペレーション スイート (旧 Stackdriver )を活用しているケースもあるかと思います。GCVE 環境においても Cloud Monitoring 、Cloud Logging を活用することが可能です。
GCVE 上の各 VM のシステムログやメトリック情報を Logging Agent を導入することで取得できる他、Blue Medora のようなサードパーティ ツールと組み合わせて利用することにより、GCVE 上の vCenter Server から GCVE に展開されている SDDC 環境のストレージやメモリの使用状況を可視化することも可能です。
GCVE を導入する際にすでにオンプレミス環境において VMware vRealize Suite をご利用されており、VMware vSphere 環境をハイブリッドに運用していく場合には、VMware vRealize Operations 及び VMware vRealize Log Insight で統合管理していくほうが良いでしょう。一方、Google Cloud の他のサービスを利用されている場合や、今後クラウドサービスの利用が加速することが予想される場合には、Google Cloud オペレーション スイート を活用する選択肢もあると思います。
その他の VMware ソリューションとの連携
ハイブリッド環境による運用管理のほかにも GCVE 環境でご要望を頂く VMware ソリューションのユースケースがいくつかありますので、ここでは簡単に紹介をしていきたいと思います。
VMware Site Recovery Manager (以下 SRM )による災害対策などのニーズも頂きます。 SRM と VMware vSphere Replication と組み合わせることで仮想マシン単位での保護を実現していくことが可能です。GCVE での SRM の利用に関する詳細は「 VMware SRM を使用して障害復旧を構成する」をご参照ください。また、実際の導入にあたっては、あらかじめオンプレミス及び GCVE それぞれの VMware vCenter など各コンポーネントのバージョン互換性を留意しつつ、実装をする必要がある点についてご留意ください。
また、VMware Horizon の仮想デスクトップ環境を GCVE 環境に展開することも可能です。すでにオンプレミス環境で VMware Horizon 環境を構築されている場合で、リンク クローンやインスタント クローンのようなフローティング方式で仮想デスクトップを展開されているとマスターイメージの更新などの頻度も多くなる傾向にあるでしょう。その場合に環境によらず同一のマスターイメージを活用できることはセキュリティ、運用の両面からメリットがあるでしょう。( 前述のように、 VMware Horizon をオンプレミスの vSphere 環境と GCVE の双方で展開したい場合には、Horizon Universal License を保持している必要がありますので、ご留意ください。)
今回は、GCVE 上での VMware のソリューションの活用例をご紹介してきました。今回ご紹介した GCVE と Google Cloud オペレーション スイート に関しては、2020 年 12 月に Google Cloud の様々なソリューションを紹介するオンライン番組 Cloud OnAir で VMware 屋良さんと当社の岡田がソリューションとデモのご紹介をしております。ご興味のある方はぜひこちらのアーカイブ「【実演】Google Cloud VMware Engine と VMware ソリューションを組み合わせたハイブリッド環境の実現・運用管理方法」もご覧ください。
グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
パートナーエンジニア / VMware vExpert
栃沢 直樹(Tochizawa Naoki)