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Google Cloud VMware Engine 徹底解説 #1 Google Cloud VMware Engine の特長とGoogle Cloud における位置づけ

Google Cloud Japan でパートナーエンジニアとしてGoogle Cloud VMware Engine を担当している栃沢です。VMware vExpert としてパートナー様、ユーザ様への VMware vSphere をベースとしたインフラ基盤とGoogle Cloud を組み合わせたソリューションのご紹介、ご提案を日々行っています。

 

今回から何回かに分けて、Google Cloud VMware Engine について様々な角度からご紹介をしていきます。

ユースケースからアーキテクチャなどパブリッククラウドである Google Cloud VMware Engine と VMware vSphere をベースとしたオンプレミス環境のハイブリッドクラウド利用を念頭に置いて解説をしていければと考えております。

#1 Google Cloud VMware Engine の特長と Google Cloud における位置づけ

#2 Google Cloud VMware Engine での VMware ソリューションの活用

#3 Google Cloud VMware Engine で提供されるコンポーネントとアーキテクチャ

#4 Google Cloud VMware Engine の展開方法

#5 オンプレミス環境とのハイブリッド構成と移行方法

#6 Google Cloud VMware Engine アップデート情報

#7 Google Cloud VMware Engine でのサードパーティ ソリューションの活用

#8 Google Cloud 各種サービスとの連携

 

連載の過程で新たなアップデートやトピックスなどがあれば、上記の順番の変更や追加などをしながら進めていきたいと思います。

初回となる今回は、Google Cloud VMware Engine の概要についてご紹介をしていきたいと思っています。

 

なぜ Google Cloud VMware ソリューションを提供するのか

Google Cloud はエンタープライズの企業、団体に対してさまざまなクラウド サービスを提供しています。

Google Cloud といえば、データ分析、機械学習、AI 領域などのイメージが強いかもしれません。また、Google が提供するさまざまなコンシューマー向けサービスが、それらを支えるインフラストラクチャも自社として保持しています。2020 年 12 月現在、全世界で 24 リージョンを展開しており、各リージョンは Google が独自に保持するバックボーンネットワークで接続しています。

そのインフラストラクチャの上でお客様に対してさまざまなコンピューティング リソースを提供しています。

Google Cloud VMware Engine は、お客様がマルチクラウドハイブリッド クラウド環境の構築を検討される際の 1 つの選択肢になり得るのではないかと考えています。

従来ご利用されているオンプレミスの IT サービス基盤、すでにクラウド移行しているアプリケーションも存在する中で、いかに現状の IT 資産を活かしながら新しい価値を想像できる IT インフラストラクチャを提供できるかは重要なポイントになるのではないでしょうか。

 

Google Cloud VMware Engine とは

ここから、Google Cloud VMware Engine(GCVE と呼ばれています)について簡単にご紹介をしていきたいと思います。

GCVE は、Google Cloud データセンター内に VMware vSphere をベースした Software-Defined Data Center :(SDDC)クラスタを展開して、お客様毎に提供しています。

GCVE は、2019 年に Google が買収した CloudSimple の技術をベースにオンプレミスでご利用されている vSphere による仮想化環境と非常に近い形で展開しています。また、リリースにあたっては VMware と綿密な連携、検証を行った上で VMware Cloud Verified の認定をされたソリューションとしてサービス提供をしています。

GCVE は 2020 年 12 月 14 日時点で全世界 8 リージョンで展開しており、東京リージョンはアジア圏では最初のリージョンとして 9 月に開設しています。

来年にかけても更にリージョンの拡大を順次していく予定です。

ここで GCVE を展開したときに提供されるソリューションをご紹介していきましょう。GCVE を指定した Google Cloud リージョンに展開をすると、検証済のサーバハードウェア(ノード)上に vSphere 仮想化環境の Software-Deifined Data Center(SDDC)がお客様専用に展開(GCVE コンソール上では「プライベート クラウド」と呼ばれたりします。)されます。展開された SDDC 環境は以下の環境がすぐに利用可能な形でデプロイされています。

  • VMware vCenter Server Appliance / VMware NSX Manager
  • VMware ESXi ホストクラスタ
  • VMware vSAN ストレージクラスタ
  • VMware NSX-T オーバレイネットワーク (NSX 分散仮想スイッチ)
  • VMware NSX-T Edge (Active-Standby) による外部ネットワークアクセス
  • VMware HCX

東京リージョンをリリースした 2020 年 9 月時点では、VMware vSphere 6.7u3、VMware NSX-T 2.5.1 で展開しておりましたが、2020 年 12 月より順次 VMware vSphere 7.0u1a、VMware NSX-T 3.0.2 で展開しており、既存ユーザ様についてもアップグレードを進めております。

SDDC が展開されるとお客様は、GCVE 上で稼働させる VM を作成して、必要なセグメント(ネットワーク サブネット)を定義することで、すぐに GCVE 上でワークロードの運用を開始することができます。

展開された SDDC 環境における各 VMware 製品のコンポーネントの監視、パッチ適用、アップグレードなどの基盤運用については、すべて Google Cloud が対応しており、お客様は VMware 製品のコンポーネントに起因する障害に関する対応、日々の運用から開放されます。

そして、オンプレミスの vSphere 仮想化環境から GCVE SDDC 環境、そして、GCVE からオンプレミス環境への仮想マシンの移動については、HCX による vMotion で自由に移行をすることが可能になります。また、HCX により両サイトのネットワーク サブネットを拡張することができる L2 延伸も可能となります。L2 延伸の要件や移行要件などについては、次回以降のブログで詳細を解説していく予定です。

このセクションの最後に、GCVE のスペック、サービスレベルについてご紹介をしておきたいと思います。

展開されるノードのスペックについては以下のとおりです。

ハイパフォーマンスを要求されるアプリケーション、ワークロードにも対応できるハイスペックなハードウェアを採用しています。サーバ仮想化においては、サーバの集約率を高めることは検討の大きなポイントの一つになりますが、GCVE を採用頂くことによりサーバの集約率を向上させて展開するノード数を抑えることで、コストの最適化を目指すことも可能になります。

 

また、GCVE のノードの展開は、現時点では最低 3 ノードから可能となっており、ノード毎の利用料金については、オンデマンド、及び 1 年または 3 年間の確約利用ベースの課金体系から選択することが可能です。

それぞれの利用料金については Google Cloud VMware Engine 料金ページをご確認下さい。

 

その他、GCVE のサービスレベル、管理面における内容を以下にまとめておりますので、合わせてご確認を頂ければと思います。

上記以外に、VMware の他のソリューションや VMware vSphere、NSX 環境で幅広く利用されているテクノロジー パートナー様の製品を GCVE 上でも稼働することが可能です。

 

展開される SDDC の構成、オンプレミス環境との接続構成のベスト プラクティスなど、設計、実装にあたって把握しておいて頂きたいポイントについても、次回以降のブログで詳細を解説していきます。

 

Google Cloud VMware Engine のユースケースとお客様にとっての価値

ここまでで、Google Cloud VMware Engine が、VMware vSphere をベースとした SDDC 環境をパブリック クラウドとして利用することができるソリューションであることをご理解頂けたのではないかと思います。

GCVE のユースケースは非常に幅広いものとなりますが、その一例をご紹介させていただきます。

  • 災害対策(ディザスタ リカバリ) におけるバックアップ サイト
  • オンプレミス vSphere 仮想化環境のハイブリッド クラウド拡張
    • データセンター拡張
    • VMware Horizon 仮想デスクトップ環境の拡張
    • 従来の IaaS ではサポートできないアプリケーションへの対応
  • インフラ モダナイゼーションと TCO の両立
    • Google Cloud サービスとの連携
    • オンプレミス環境を含めたインフラ モダナイゼーション

災害対策、データセンターの拡張を目指す場合には、単にインフラ基盤だけではなくすでに利用している各種アプリケーションがパブリック クラウド側でも同様に利用できることが重要なポイントとなってきます。

Google Cloud では、VMware はもちろんのこと、各テクノロジー パートナー様とも連携をして GCVE 環境でもオンプレミス環境と同様のソリューションを活用頂けるようにベンダー間のエコシステムも重視しています。

また、GCVE へワークロードを移行することにより、次のステップで Google Cloud の他のサービスをより有効に利用できる環境を整えていくことも可能です。以下の図は Google Cloud のデータウェアハウスのソリューションである BigQuery を活用した事例です。

BigQuery とさまざまな環境に点在するデータソースからデータを集約する Dataflow とを連携することでデータの格納先に関わらずデータの分析を行い、可視化をしていくことが可能となるソリューションですが、オンプレミス環境の VM インスタンスにデータが格納されている場合、VM インスタンスを GCVE 環境に移行することにより、低レイテンシー環境下でのデータ分析を実現することが可能となります。

このように GCVE は vSphere 仮想化環境で培ったスキル、ソリューションを活用しつつパブリック クラウドのメリットを享受できるという側面を持っていると同時に、Google Cloud の他のプロダクトとの連携や、アプリケーションのモダナイゼーションを見据えたクラウド移行の第一歩として活用していくことも可能です。

 

ぜひ、この機会に今後の IT インフラのモダナイゼーションを目指して、GCVE をご検討頂ければと思います。

次回は、Google Cloud VMware Engine における VMware ソリューションの活用について、VMware と 11 月に共同検証をさせて頂いた内容も踏まえて、ご紹介をしていければと思います。

 

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社
パートナーエンジニア  /  VMware vExpert
栃沢 直樹 (Tochizawa Naoki)