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[TAM Blog] VMware Memory Tieringを使ってリソース費用を抑えながらVCF Holodeck環境を構築しよう

みなさま、こんにちは。TAMの加藤です。

過去の記事で、VMware Cloud Foundation®を手軽に構築するためのツールである Holodeck を紹介させていただきました。

Holodeck を使うことで、少ないリソースでVCFを検証することが可能になっております。

[TAM Blog] Holodeck を活用して最強のラボ環境を構築しよう!
https://blogs.vmware.com/vmware-japan/2025/04/holodeck52.html

今回は、vSphere 8.0 U3 から使用可能な VMware Memory Tiering を使用して、より少ないリソースで VCF を構築できるようにするための記事となっております。

「Holodeck でもやはりある程度リソースが必要だな・・・」「家にサーバを置くのが難しい・・・」という人でも、こちらの記事を読むことで、導入までのハードルが下がるかと思います。

 

Holodeck それでもメモリ要件が厳しい・・・

以下、改めて Holodeck のリソース要件になります。

一番上のシングルサイト環境が、作成可能な最小サイズとなります。

こうしてみると、CPU 要件(16コア以上)、ストレージ要件(3.5TB以上)の用意は比較的容易に見えますが、メモリ384GBというのが大きいと感じる人が多いと思います。

一般的に利用されるPCだとメモリが 32GB 前後、より多くのメモリを搭載できるようなモデルでも、128GB あたりが限度になっていることが多く、上記要件を満たすためには複数のPC、もしくはエンタープライズ向けのサーバ等が必要になってくるでしょう。
ここで有効になってくるのが VMware Memory Tiering です。

 

VMware Memory Tiering とは?

VMware Memory Tiering(メモリ階層化)は、vSphere 8.0 U3 から Tech Preview としてリリースされている機能です。NVMe ストレージをメモリの補助的な層として利用する機能となっており、これによりメモリコストを抑えつつ、ワークロードのパフォーマンス最適化が可能となります。

※本作業は vSphere 8.0 U3 で実施しており VMware Memory Tiering 機能は本バージョンでは Tech Preview 段階のため、本番環境での利用は非推奨となっております。検証での利用をご検討ください
※最新リリースである VCF 9.0 GA 時点では、Nested 環境での利用はできないようになっています。本検証を実施する場合は、 vSphere 8.0 U3 での利用が推奨となります。

vSphere Memory Tiering – Tech Preview in vSphere 8.0U3
https://blogs.vmware.com/cloud-foundation/2024/07/18/vsphere-memory-tiering-tech-preview-in-vsphere-8-0u3/

※また、 VMware Memory Tiering 使用時は一部VM設定が使用できないなど制限事項がございます。詳しくは以下KBをご参照ください。

Using the “Memory Tiering over NVMe” feature in vSphere 8.0 Update 3.
https://knowledge.broadcom.com/external/article/311934/using-the-memory-tiering-over-nvme-featu.html

本来は、本番環境でのメモリ最適化の観点で使用が想定されている機能となりますが、この機能を使うことで、Holodeck のメモリ要件をより少ないリソースで満たすことができるのでは?というのが本記事の趣旨となります。

 

構築環境

今回は、1台のPCで Holodeck が構築できるか?を検証しました。
使用した機器および構成は以下となります。

PC
MS-01 WorkStation
https://www.minisforum.jp/products/minisforum-ms-01

CPU
Intel Core i9-13900H

メモリ
96GB

ストレージ
NVMe 1TB( VMware Memory Tiering 用)
NVMe 4TB (リソース用)
NVMe 128GB ( OS 領域用)

(各機材の合計費用は2025/6現在で大体20万円ほどでした。個人で調達する分には高いとみるか安いとみるか…)

 

VMware Memory Tiering 設定作業

VMware Memory Tiering はデフォルトではオフになっています。そのため、通常の手順でデプロイした後は、以下のように搭載されているメモリがそのままリソースとして計上されています

ストレージ情報は以下のようになっています。搭載している3つのストレージの内、1TB のものを VMware Memory Tiering 用として設定していきます。

VMware Memory Tiering の設定手順は、上記で紹介した KB 内 Document 添付の ” Memory Tiering over NVMe Tech Preview – vSphere 8.0.3 Technical Guide Revision 1.2.pdf” に記載されております。( ESXCLI の手順は16 pages から)

 

設定における注意点

VMware Memory Tiering の設定として、DRAM と NVMe の比率を決める “Mem.TierNVMePct”と呼ばれる項目があり、こちらがデフォルトで25%になっています。
これは私の環境の例で言うと、実際に搭載されている DRAM が96GBの場合、 VMware Memory Tieringでメモリ仮想化できるのはその25%である24GBまでのため、結果として120GBまでがメモリとして計上される形となります。

そのままですと、 Holodeck の要件である384GBに到達できないため、この “Mem.TierNVMePct”の設定の変更が必要です。
最大で 400% まで設定が可能ため、その設定を入れた上での VMware Memory Tiering の設定をしてみてください。
具体的な手順は上記で紹介した Technical Guide Revision の 27 pages 以降をご確認ください。

 

結果

以下のように、メモリサイズを 478GB まで拡張することができました。

また、その上に Holodeck を構築したところ、無事各アプライアンスがデプロイできることも確認いたしました。

今回の機器で試した見たところですが、Management Domain のデプロイおよび操作までは可能です。

一方、Workload Domain までデプロイしようとすると、メモリ側は十分なリソースが確保できていましたが、逆に CPU 側のリソースが追いつかなくなる状況になりました。

今回は PC での実施でしたが、多くのメモリが搭載可能なサーバ、ワークステーションが用意できる場合は、より大きな環境で構築できるようになります。

 

最後に

今回は、VMware Memory Tiering を利用した Holodeck 構築について紹介させていただきました。

また、VMware Memory Tiering は VCF 9.0 GA から明確にサポートされた機能になりました。今回のような検証用途のみでなく、商用環境での有効な活用も期待できるため、もしご興味がありましたら、ぜひ担当 TAM にご相談ください