Tanzu アプリケーションのモダナイゼーション クラウド

ホームデポに学ぶユーザー企業の内製化アプローチ

こんにちは。ヴイエムウェアの渡辺です。

今日は「ユーザー企業におけるソフト開発の内製化」について考えてみたいと思います。

DXへの関心が高まる今日、ユーザー企業における「ソフトウェア内製化」の関心が高まっています。一般的にソフトウェア開発作業の多くをシステムインテグレータとのパートナーシップで実践しているユーザー企業にとって、「どうやって内製化を推進するか?」をお悩みの方も多いと思います。

VMware Tanzu  (旧 Pivotal Software 社) が毎年開催している SpringOne イベントにおけるホームデポ ( Home Depot )社の事例を、そのヒントとしてご紹介させていただきます。

ホームデポ社について:

ホームデポ(The Home Depot, Inc.)は、米ジョージア州アトランタに本社を置く住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーンでです。1978年に創業し、米国、カナダ、メキシコを中心に約2,300店舗を有しています。

このデータだけをみると、老舗の中堅企業のようにもみえますがIT視点では以下のような取り組みをされているそうです。

  • 社内のエンジニア数:3,500人
  • 毎日平均6,000のGitへのコミット
  • 91%のシステムを内製

 

4年にわたる変革ジャーニー:

競争の激しい小売業界においてより多くのお客様に来店していただけるか?というのがホームデポのチャレンジでした。そこで、IT組織のみならず企業全体の変革取り組み始めました。プロダクト中心の企業文化への変革、ソフトウェアの市場投入のスピードアップ、エンジニアの採用のために、約110億ドルの投資を決定しました。

 

変えないこと – 組織文化:

変革を推進する中でも変えないこと、変えてはいけないことは創業時からの企業の価値観です。企業によっては自社の価値観がリップサービスであったり壁に貼ってあるだけだったりしますが、ホームデポでは社員全員がこの価値観をもって行動しています。

  • 卓越したお客様サービス
  • 強固な関係づくり
  • 起業家精神
  • すべての人に対する敬意
  • ステークホルダーの価値の創造
  • 正しいことを行う
  • 社会への還元
  • 従業員を大切にする

また、お客様を最上位においた逆ピラミッドの経営を推進しています。顧客中心主義はどの企業でも言われていることですが、ホームデポではお客様を最上位に、その下に店頭のスタッフ、フィールドサポート、全社サポートを位置付け、CEOが最下層で支えるという絵を描いています。社員は、自身が行うことが「お客様にとってどういう意味があるのか」を考えて行動しています。

内製化要員を増やした成功要因:

従業員を大切にするという価値観から生まれたプログラムが「オレンジメソッド」と呼ばれるものです。

米国ではエンジニアの外部からの採用は(競争が激しく)難しいそうです。そこで、お客様のことを一番知っている店舗スタッフや物流センターで働く社員をITエンジニアとして再教育する15週間のブートキャンプを実施しているそうです。このブートキャンプでは、エクストリームプログラミングに基づくコードの書き方やアジャイル開発手法を体得します。デモデーと呼ばれるイベントでは開発した成果物を経営陣( CEO、CFO、CIO)に対してデモを行い、最後に卒業式を経てIT部門に配属されるという教育プログラムを実施しています。

従業員の生産性を高める経営陣の支援:

IT部門の要員が増えただけでは、新しいサービスを迅速に提供することはできません。開発者エクスペリエンスを向上するために経営陣がとった施策は以下の点です。

  • プロジェクト指向のアプローチからプロダクト指向のアプローチへの転換
  • 制約の排除 – 少人数のプロダクト開発チームへの権限移譲
    (以前はあるコードを修正するために70名ものチーム外のステークホルダーとのコミュニケーションが必要だったそうですが、そのような慣習を撤廃したそうです)
  • IT部門のメンバーが必要とする環境の提供 – Google Cloud Platform、Micsoroft Azure、GithubそしてVMware Tanzu
  • 開発チームと手法の変革 – 1チームを6~8名の体制とし、プロダクトマネジメントの思想に基づきソフトウェア開発を行うように変更を行いました

変革の成果:

最後に、変革ジャーニーを推進した成果について紹介しましょう。

ホームデポでは、お客様が使うモバイルアプリや物流センター内で使用するアプリケーションなど様々なシステムを構築しました。アプリケーションの改善の頻度は週あたり500以上にも上ります。

品質に関しても大きな改善が見られました。一例として、変革を推進する前は、重要度1の問題が常に50ほど存在し、その対応には数十名のエンジニアがウォールームに何時間も籠って対応することが頻繁にあったそうですが、今では重要度1のインシデントはなくなりました。

ホームデポ社のIT変革ジャーニー、いかがでしたでしょうか。

従業員のリスキリング、経営陣のコミットメント、企業の価値観を大切にする文化など参考になる点が多いのではないでしょうか。

 

この事例はVMware Tanzu の年次イベントである SpringOne で、2019年に行われた講演を元に書き起こしています。フルストーリーは、以下のリンクからご覧いただくことができます。

今年も 9月1日からの2日間 SpringOne が開催されます。去年に続いてのオンライン開催となります。

今年も無料でご参加いただけますので、ぜひお申し込みください。

SpringOne イベントサイト