弊社では毎年、VMware製品とソリューションを使用して優れた結果を生み出すパートナーを称える「Partner Achievement Award」を発表しています。今年は、カテゴリの一つである「2021 VMware APJ Partner Innovation Award」を富士ソフト株式会社様が受賞しました。同賞は、5G、エッジ、ブロックチェーン、クラウドネイティブ、AI/ML/認知/高度な分析といった次世代テクノロジーをVMwareのソリューションと組み合わせて活用することで、市場をリードしているパートナー様を称えるものです。富士ソフト様は、パンデミックの期間中および将来に向けて、企業の俊敏性と適応性をより高めるためにVMware Cloud on AWSを活用したシステム構築が高く評価され、今回の受賞につながりました。
今回、同社の執行役員で、ソリューション事業本部 副本部長の山本 祥正 氏に、受賞の意義や背景についてお伺いしました。
大手メーカーのVMware Cloud on AWS対応にチャレンジ
2021 VMware APJ Partner Innovation Awardを受賞した背景について、山本 祥正氏は次のように振り返ります。
「当ソリューション事業本部のインフラ事業部でVMwareによるITインフラ構築に取り組むエンジニアは、常日頃からお客様のビジネス課題に徹底的に向き合い、難易度の高い案件にも積極的に挑戦してきました。そうした取り組みの中で、受賞につながった大きなチャレンジが、とある大手メーカーのVMware Cloud on AWS対応だったと思います。お客様が運用していたオンプレミス環境を、お客様のビジネスボリュームに合わせて、クラウド環境へ移行(マイグレーション)する必要がありました。そこで、VMware HCXを利用したL2延伸によりVMware Cloud on AWSにマイグレーションすることで、オンプレミス環境のみで運用した場合と比べて、大幅なコスト削減を実現しました」
インフラ事業部が構築したVMware Cloud on AWSを活用したマイグレーションというチャレンジは、高い注目を集めました。山本様は「L2延伸をVMware HCXで対応しただけと聞くと、シンプルなソリューションのようですが、実際にはとてもチャレンジャブルなハイブリッド クラウド対応でした。1つのシステムがオンプレミス、クラウドに跨る環境にあり、ネットワーク経路が複雑なので、お客様の希望する環境を実現するためには、地道な検証と調整を繰り返す必要がありました。その対応には、当社のスペシャリストが高い技術力をもって対応に当たったことで、お客様の希望する納期に間に合うカットオーバーを実現できました」と話します。
高い技術力を維持する優れた社内制度と企業文化
ソリューション事業本部のインフラ事業部には約200名のVMwareに精通したエンジニアが在籍しており、その中の13名がvExpertを取得しています。この数は国内の大手システムインテグレータの中でも最多となります。これだけのスペシャリストを育ててきた背景について、山本様は「当社の強みは、技術力の高さです。新しいテクノロジーを常に吸収したいというエンジニアの意欲を大切にし、最先端のインフラ構築にも積極的に取り組んできました。国内最多のvExpert数というのも、そうした実績の現れだと思います」と説明します。山本様自身も世界トップ100のスペシャリストに選ばれていますが、その高い向上心がインフラ事業部にも受け継がれています。加えて「当社ではスペシャリスト認定という制度があり、専門分野のスペシャリストとしてキャリアパスを描けるため、エンジニアは日々最先端の技術に触れ続け、技術を突き詰められるのです」と山本様は補足します。
富士ソフト様の高い技術力を示すエピソードの一つが、常に最先端のVMwareテクノロジーを国内で早期に検証する姿勢です。VMware Cloud on AWSやVMware HCXについても、米国で発表された直後から、山本様を中心に部内のエンジニアが早い段階で検証を行ってきました。その先行投資が、国内初となる先進的なソリューション構築の実績につながったのです。
お客様のビジネスを最優先に考えたソリューション提案を心がける
VMwareに精通した技術力の高いエンジニアが数多く在籍しているだけではなく「私はときどきメンバーに『お客様のビジネスのためになるものを提供しなさい』と話しています。単なるシステム更新やリプレースではなく、我々が技術力を提供する以上は、お客様のビジネスの成果につながるテクノロジーやソリューションを提案し構築するべきだと考えています」と山本様は話します。
「その一例として、調達仕様に書かれた要件だけを満たそうとするのではなく、お客様にとってより価値があると考えるものを積極的に提案する姿勢です。例えば、お客様が社内システムのモダナイゼーションを推進するために、レガシーアプリケーションのコンテナ化を依頼してきても、その効果が期待できないと判断すれば、富士ソフトでは「お客様のためにならない」として、そのまま受託することはしません。代わって、より効果的で価値のある提案を行っています。」
今後に注力する3つのテクノロジー
VMware製品に精通した高い技術力と、お客様のビジネスへの貢献を常に考えるインフラ構築の姿勢を併せもつインフラ事業部では、その技術力と提案力をさらに高めていくために、VMwareの今後のテクノロジーのトレンドにも注目しています。その代表的な3つのテクノロジーは「VMware Tanzu、VMware SASE、マルチクラウドです」と山本様は指摘します。
VMware Tanzuは、Kubernetesを中核とした統合的なプラットフォームです。クラウドネイティブの開発・実行・管理に適応し、オンプレミスやパブリッククラウドにマルチクラウドで稼働するKubernetesを単一かつ統合された制御プレーンで管理できます。山本様は「当社はアプリケーションを提供する事業を主軸にしている会社なので、コンテナにも注視していきたいと考えています。インフラ事業部が構築したインフラの上に、当社のアプリケーション関連の事業部がお客様にソリューションを提供する、というビジネスに発展する機会も多いので、VMware Tanzuの持つ可能性は大きいと捉えています」と話します。
VMware SASE は、ブランチ、自宅、またはリモート ユーザーに安全で最適化されたアプリケーション接続を提供する高度なネットワーク セキュリティ機能を備えた Secure Access Service Edge (SASE) ソリューションです。「セキュリティの重要性は、これからさらに増していくので、VMware SASEによる高度なセキュリティソリューションの提供にも注力していきたいです」と山本様は注目します。
そして「VMware HCXを利用したVMware Cloud on AWSへのL2延伸など、マルチクラウドの需要は、これからも増えていくと予測しています。ただ、単にトレンドだからお客様のシステムをマルチクラウドにするのではなく、複数のクラウドをどのように組み合わせて活用することが効果的なのか、それを自分たちが納得するまでテクノロジーを極めてから、提案していきたいと考えています」と山本様は語ります。
受賞の意義と今後に向けた挑戦
改めて、2021 VMware APJ Partner Innovation Awardを受賞した意義について、山本様は「今回の受賞では、システムインテグレータとしての当社の取り組みに加え、高い技術力と戦略的なクラウドソリューションサービスが評価されたと受け止めています。今回の受賞を誇りに思うとともに、今後もVMware社と連携して新しい技術分野に取り組んで参ります」と話します。
さらに、今後に向けては「やはり次はAPJではなく、グローバルで受賞したいですね。そのためには、より積極的に海外の事例を吸収して、国内のお客様のビジネスに貢献できる価値の高いVMwareソリューションを提案していきたいと考えています」と展望を語ります。