Dell EMC で VxRail の製品技術担当をしている高橋岳です。
4 回シリーズで Dell EMC のクラウドソリューションと具体的な製品をご紹介していますが、今回は 3 回目となります。
前回は VMware Cloud Foundation on VxRail (以下、VCF on VxRail) の概要と特徴についてお話をいたしましたので今回は構築、運用にフォーカスをあててご説明をして行きたいと思います。
VMware Cloud Foundation on VxRail の構成条件
1. 前提条件
下記の条件がありますので、事前の確認をお願い致します。
- 現行リリースでは、VCF on VxRail は新規構築のみで利用可能です。
- 既存の VxRail クラスタを Workload Domain (アプリケーション稼働用クラスタ) として構成して、Management Domain (運用管理用クラスタ) のみを追加構築する様な構成は出来ません。
- Workload Domain に既存/新設の vSAN Ready Node クラスタと VxRail クラスタを混在させることは出来ません。
- VxRail 2 ノードクラスタ構成を VCF on VxRail として利用することは、現時点では出来ません。
2. ハードウェア
- VCF on VxRail 構成であっても、VxRail 14G ベースの全てのモデル(E, P, V, S, Gシリーズ)が利用可能です。
- 最小構成は Management Domain = 4ノード、Workload Domain = 4 ノードの組み合わせで計 8 ノード構成からとなります。
3. ネットワーク
通常の VCF と同様 Bring Your Own Network (BYON : ご自身での事前構築済みネットワーク) として、VCF で必要なネットワーク要件を満たすことが可能であれば、既存新設を問わず利用可能です。
但しスイッチの VxRail との接続要件として下記が要件となります。
- IPv4,v6 ともサポートしていること
- VxRail が接続されるポートで IPv6 マルチキャストが利用出来ること
→ VxRailクラスタではノード検出等の為に IPv6 マルチキャストを利用しています
- 10GbE もしくは 25GbE の接続が可能であること
- iDRAC を利用する場合は 1GbE の接続が可能であること
また VCF on VxRail として、下記も要件となります。
- マルチキャスト (上述の VxRail クラスタの条件として)
- ジャンボフレーム
- Workload Domain スヌーピング & スヌーピングクエリア(推奨)
- BGP (NSX Edge Gateway とピアー接続が必要な場合)
- Hardware VTEP (マルチラックデプロイメントが必要な場合)
ネットワークスイッチについては上記をサポートしているものであれば、利用可能です。
弊社の Smart Fabric 対応スイッチも、もちろん利用可能です。
Smart Fabric の詳細については、次回の筆者である弊社石塚がまとめた Blog もぜひご参照下さい。
VxRail+Smart Fabric Service構成での導入 ~準備編~
4. ソフトウェア
VCF バージョン 3.7 から VCF on VxRail の対応は始まり、2019/8/5 現在での最新バージョンは 3.8 となります。
[VMware KB] Supported versions of VMware Cloud Foundation on VxRail (67854)
VCF on VxRail では構成出来る VxRail のバージョンと VCF のバージョンが対になっています。
例えば、2019 年 08 月時点での VCF on VxRail の場合、
- VxRailソフトウェア = 4.7.212
- VCF = 3.8
の組み合わせで利用する形となります。
詳細はバージョン毎のリリースノート及び Build Of Materials (BOM) をご参照下さい。
VMware Cloud Foundation 3.8 on Dell EMC VxRail Release Notes
表 1 : VCF on VxRail 3.8 BOM
なお、VCF on VxRail 3.8 から Workload Domain での NSX-T の構成が可能になりました。
VCF on VxRailの構築
では、VCF on VxRail の構築手順を確認して行きましょう。まず VxRail で vCenter を構築する際には 2 種類の方法があります。
- 内部 vCenter (Embedded vCenter) :
VxRail クラスタの vSAN データストア内に vCenter を構築する構成の事です。VxRail の標準的な vCenter 構築パターンです。
- 外部 vCenter (External vCenter) :
通常の vSphere として vCenter を構築するのと同様、VxRail クラスタの外に vCenter を構築する構成の事です。既存の vCenter を運用しており、その管理配下に VxRail をデプロイする場合はこちらの構成になります。
図 1 : VxRail の vCenter 構造
上記の通り VxRail の構成には、”内部 vCenter” と “外部 vCenter” の 2 つの構成があることを前提に話を進めていきます。
おさらいとなりますが、VCF on VxRail ではオプションコンポーネントを含めて、下記の製品群が利用可能です。
図 2 : VCF on VxRail のコンポーネント
コアコンポーネントの初期デプロイとしての大きな構築の流れは、下記の通りです。
【VCF on VxRail の管理層の初期デプロイ】
- 事前要件を確認
- VCF の Management Domain として、内部 vCenter 構成で VxRail クラスタを構築
- VCF 要件に合わせて外部 vCenter 構成に変更
- VCF Cloud Builder 仮想マシンをデプロイ
- Cloud Builder を使って、VCF を構築(Bring Up)
- vCenter のライセンスを SDDC Manager に適用
【VCF on VxRail のサービス環境のデプロイ:運用】
- 外部 vCenter 構成として VxRail クラスタを Workload Domain としてデプロイ
- (必要に応じて) Workload Domain の削除
では、各手順を追ってご説明していきます。
【VCF on VxRail の管理層の初期デプロイ】
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事前要件を確認:
VCF on VxRail を構築する上で必要なパラメータを全て確認し、お客様と決定して頂くフェーズです。Dell EMC で行う場合は、プロデプロイという構築サービスの中で対応する項目となります。下記項目を確認して行きます。
- Management Domain, Workload Domain の構成決定
- VCF の Bring Up 用構成シート (VCF Configuration Spreadsheet) の完成
- VxRail ノードが VCF on VxRail で指定されたバージョンで初期イメージが展開されている事
- 全てのネットワークスイッチがラッキングされ、ケーブリングが完了している事
- DNS が適切にセットアップされている事
- VXLAN のサブネットで DHCP サーバが適切にセットアップされている事
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VCF の Management Domain として、内部 vCenter 構成で VxRail クラスタを構築する:
Management Domain 用の VxRail クラスタをデプロイします。標準的な内部 vCenter 構成として構築します。VxRail の初期デプロイは VxRail Manager を初期構築ウィザード形式で利用しますが、この画面は日本語化も可能です。
本ブログでは詳細は割愛致しますが、弊社のパートナー様であれば、下記からデモをご確認頂けますので、ログイン後、”VxRail” とキーワード検索をしてみて下さい。
図 3 : VxRail クラスタの標準構築
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VCF 要件に合わせて外部 vCenter 構成に変更
構築した内部 vCenter を、外部 vCenter としてコンバートします。VxRail Manager 仮想マシンの中にコンバート用の Python スクリプトが用意されておりますので、そちらを実行します。
図 4 : 外部 vCenter 構成への変更
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VCF Cloud Builder 仮想マシンをデプロイ
Management Domain の外部 vCenter と連携して NSX や SDDC Manager 等を自動構築するために、VxRail 用の Cloud Builder を OVF からデプロイします。
図 5 : Cloud Builder for VxRail のデプロイ
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Cloud Builderを使って、VCF を構築(Bring Up)
vSphere、vSAN 及び各種ハードウェアファームウェアのライフサイクル管理を行う VxRail Manager と連携する専用の Cloud Builder を使って残りの構成を進めて行きます。Cloud Builder は 2019 年 08 月時点では日本語化されていません。
- Cloud Builder 起動後、完成させた Configuration Spreadsheet(Excel ファイル)をアップロードし設定の整合性を確認します
図 6 : Cloud Builder へ設定ファイルの読み込み
- 設定内容の検証完了後、SDDC の設定(Bring Up)を行っていきます
PSC → SDDC Manager → NSX をデプロイし、VxRail Manager との連携後 Bring Up 完了となります。以降は SDDC Manager が利用可能になります。
図 7 : SDDC Bring Up プロセス
図 8 : SDDC Manager Dashboard
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各種ライセンスキーを SDDC Manager から適用
Workload Domain 用の vCenter サーバ、vSAN、NSX-V、NSX-T (Workload Domain 用のみ) のライセンスを適用します。
ここまででデプロイされた Management Domain とこれから作成する Workload Domain の関係をオプション構成も含めた形で図にまとめます。
図 9 : VCF on VxRail Virtual infrastructure Workload Domain に NSX-V を使った構成サンプル
図 9 上部の ”Management Workload Domain” の箱の中にあるコンポーネントの内、下のWorkload Domain1,2 と接続されている vCenter Server、NSX-V Manager 以外のものが構成完了した状態となります。
ここからは VCF としての運用フェーズとなり、お客様の環境に合わせてサービス用の VI(Virtual Infrastructure : 仮想基盤)Workload Domain を作成して行きます。
【VCF on VxRailのサービス環境のデプロイ:運用】
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外部 vCenter 構成で VxRail クラスタを Workload Domain としてデプロイ
- SDDC Manager 上部の “+ Workload Domain” をクリックし、“VI – VxRail Virtual Infrastructure Setup” を選択します。
図 10 : Workload Domain の作成 #1
- Workload Domain のパラメータを入力します。
図 11 : Workload Domain の作成 #2 – パラメータ入力 –
- 入力されたパラメータに従って、SDDC Manager は VxRail Manager と連携して VxRail クラスタと外部 vCenter、NSX のデプロイを実施します。最初に SDDC Manager が外部 vCenter をデプロイし、その後 VxRail クラスタを構築します。
図 12 : Workload Domain の作成 #3 –WLD用外部 vCenter デプロイ-
- VxRail クラスタの構築後、SDDC Manager に作成した VxRail クラスタを認識させ NSX を展開します。
図 13 : Workload ドメインの作成 #4 –SDDC Manager によるデプロイ-
- NSX の展開が完了すると、SDDC Manager からは運用可能な Workload Domain として認識されます。
図 14 : Workload ドメインの作成 #5 – デプロイ完了-
-
(必要に応じて) Workload Domain の削除
何らかの理由で Workload Domain を削除する場合も、SDDC Manager からオペレーション可能です。
- SDDC Manager の左ペインから Workload Domains -> 右フィールド内の Virtual Infrastructure 下部の “View DETAILS” を選択します
- 削除したい Workload Domain を選択します
- 確認のウィンドウが出て来ます。対象の Workload Domain 名を入力の上、“DELETE WORKLOAD DOMAIN” ボタンを押します
図 15 : Workload Domain の削除 #1
- Workload Domain 削除のオペレーションが完了後、対象の Workload Domain が表示から消え削除が完了します
図 16 : Workload Domain の削除 #2 –削除のプロセス-
Workload Domain 全体の削除について説明致しましたが、Workload Domain 内でのノード及び VxRail クラスタの拡張、削除も SDDC Manager から作業可能です。
まとめ
VCF を VxRail と合わせて利用することで、SDDC 環境を利用する上での利便性、管理性が格段に向上することをご説明してきました。
ポイントとしては、下記になります。
- VCF を使って自動で標準的な SDDC 環境をシンプルに短期間でデプロイ
- VxRail の標準構築プロセスで短時間でのオペレーションが可能
- VxRail 上に構築する事で、ファームウェアを含めたフルスタック なライフサイクルマネジメントが可能に
- VCF on VxRail であれば SDDC 環境全体のライフサイクル管理が可能
- SDDC Manager が VxRail Manager と連携することで VCF on VxRail が動作
- Dell EMC と VMware との共同開発で、管理ツールも密結合しシームレスな連携を実現
VxRail を使う事によるメリットを是非感じて頂きたく思います。
ご興味がございましたら弊社 Dell EMC もしくはパートナー様にお問い合わせ頂けますようお願い致します。
長文にお付き合い頂き、誠に有り難うございました。
<連載リンク>
第1回 ハイブリッドクラウドをより身近な存在に!~Dell Technologies Cloud~
第2回 VMware Cloud Foundation on VxRail から始めるオンプレクラウド
第3回 VMware Cloud Foundation on VxRail の構築と運用
第4回 次世代アーキテクチャのモジュラー型サーバの VCF での活用 ~PowerEdge MX のご紹介~