Dell EMC で VxRail の製品技術を担当している高橋です。Japan Cloud Infrastructure Blog で初めて寄稿させて頂きますので、よろしくお願い致します。
4 回シリーズで Dell EMC のクラウドソリューションと具体的な製品をご紹介していますが、2 回目の今回では VMware Cloud Foundation on VxRail (以下、VCF on VxRail) のご紹介を致します。
Dell EMC HCI 製品の中の VxRail
Dell EMC では広範なハイパーコンバージドインフラストラクチャ (以下、 HCI) ソリューションを取りそろえておりますが、グループ会社の枠組みである Dell テクノロジーズとして完結しているソリューションをまとめると下記の図になります。
図 1:Dell EMC の HCI ポートフォリオ
大きく 2 つの流れがあり、弊社開発のソフトウェアデファインドストレージ (以下、SDS) である VxFlex OS を利用したソリューションと VMware vSAN (以下、vSAN) を利用したソリューションがあります。
vSAN ベースの製品としては Power Edge 版の vSAN Ready Node と vSAN HCI アプライアンスの VxRail があり、VxRail は VMware 社との共同開発製品として Dell テクノロジーズの SDDC ソリューションの中核をなす製品です。また現時点では北米でのみ発表済みですが、Top of Rack スイッチを含めた統合型ラックタイプ HCI 製品として、VxRail Integrated Racks も日本市場への投入を予定しています。
ハードウェア構成は全て弊社 14 世代の Power Edge サーバをベースにしており、3 種類の筐体で 5 モデルがあります。
注:ここでのノードは、1 ESXi ホストもしくは 1 物理サーバと同義です
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1U1 ノード構成:
- ロープロファイルで汎用性の高い E シリーズ(R640 ベース)
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2U1 ノード構成:
- 汎用性の高さとストレージ容量確保を両立している P シリーズ(R740 ベース)
- 3D-VDI 等に必要な NVIDIA 社の vGPU カードを搭載可能な V シリーズ(R740 ベース)
- 5 インチ大容量 HDD を利用しコストパフォーマンス良くストレージ容量集約可能な S シリーズ(R740xd ベース)
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2U4ノード構成:
- 1U ハーフラックサーバを 2U 筐体内に 4 台収めた高密度コンピュート集約型の G シリーズ(C6420 ベース)
Power Edge とほぼ同様の幅広い選択肢の CPU, メモリ、ストレージデバイス(NVMe キャッシュ SSD を含む)、ネットワークカード等から、お客様に最適な組み合わせを選択することが可能です。
図 2:14世代 Power Edge ベースの VxRail 製品ラインナップ
VxRail の特徴
VxRail の特徴はいくつかあります。
1: 導入、増設がシンプル
- プリインストールされた初期設定用 vSphere、vSAN 環境に、パラメータシート情報から作成した JSON ファイルを読み込む、またはウィザード形式で入力することでセットアップは 1 時間程度で完了。デプロイ時間の大幅な短縮を実現
- 増設は同じ L2 セグメント上に新規ノードを設置すれば、既存 VxRail クラスタが新規ノードを認識し数クリック、10 分程度でノード追加が完了
2: サポートがシンプル
- vSphere/vSAN から VxRail ハードウェア、更に Smart Fabric 対応 Dell EMC スイッチまで VxRail 担当サポートが一元窓口となり保守対応
- VxRail 上の VMware 製品で問題エスカレーションが必要な場合でも、VxRail 担当サポートが VMware サポートと直接連携しお客様にご回答
- 障害解析に必要な初期のログは、ハードウェア及び vSphere 情報とも vCenterの 「ログバンドルの作成」 から生成可能
- プロサポートプラス契約で、VxRail アップグレードをサポート担当者がリモートからご支援可能。万一の障害発生の際にもサポートエンジニアがすぐに対応を開始可能なため安心
3: 運用がシンプル
- VxRail HCI システムソフトウェアが vCenter と連携し、運用は vCenter から実施
- vSphere、vSAN、各種ファームウェアがパッケージ化された VxRail HCI システムソフトウェアで、ワンクリックアップデート可能 (他社 HCI 製品と異なり、エンベデッド vCenter(vSAN データストア内に vCenter を配置)構成をした場合には、VCSA, PSC を含めてアップデートを実施可能)
- Dell EMC の Smart Fabric 対応スイッチと組み合わせて利用すると、VLAN 変更など日常的なネットワーク運用も vCenter 経由で実施可能
特に “運用がシンプル” に関してですが、最新 VxRail 4.7 環境では vSphere 6.7/vSAN 6.7 ソフトウェアと BIOS, RAID カード、NIC 等のハードウェア用ファームウェアをパッケージ化した VxRail HCI システムソフトウェアを提供する事で、これまでお客様自身で行って頂いていた製品同士の組み合わせ検証を不要にしています。Dell EMC と VMware さんの共同開発だからこそ、vSphere/vSAN の最新アップデート、パッチ等のリリースを細かく追随し、各コンポーネントとの最適な組み合わせ検証を行った上でリリースします。最新パッケージを適用すると VxRail クラスタ全体が最新で最適なソフトウェア状態なり、運用での時間コスト削減に繋がるというメリットを享受できるのです。
図 3:運用での時間コストも削減
またアプライアンスなので、VxRail HCI システムソフトウェアのワンクリックアップデートやクラスタの増設や機器の入替等も vCenter 内の VxRail 管理用画面からシンプルなオペレーションで実行可能です。
図 4:vCenter に統合された VxRail の管理画面
VxRail と vCenter を通じた VMware ソフトウェアとのイイ関係
これらの連携を実現しているのは、VxRail クラスタを管理している VxRail Manager と vCenter との親密な関係にある事がカギとなっています。VxRail 4.5 以前の環境をご存じの方は、「あれ?なんで VxRail Manager の話が出てこない???」 と思っていらしたかもしれません。VxRail Manager は VxRail クラスタ管理用の仮想マシンとして VxRail 4.7 環境でも存在していますが、vCenter プラグイン化したことでメインのユーザーインターフェースとして利用をする事が無くなりました。
vCenter プラグイン化の本質は他のアプリケーションとの連携を REST API 経由で可能にしたことです。このことで VCF と VxRail を繋いだ VCF on VxRail の構成が実現可能になりました。すなわちVCF のコンポーネントでもある vRealize Operations や vRealize Automation 等、vRealize Suite の製品群との連携も可能になったのです。
図 5:VxRail と vCenter の透過的な運用性
このシリーズの第 1 回で弊社吉田の説明もありましたが、VCF は vSphere、vSAN、NSX の各コンポーネントを標準化し、ライフサイクルマネージャー (以下、LCM) でシステム全体のライフサイクル管理を実施することで、SDDC としての自動運用を実現するソリューションです。標準化されたプロセスで仮想環境全体をデプロイし、仮想環境を安全かつセキュアにアップデートして行くことを自動化し、管理者が行っていたインフラレイヤーの組み合わせ検証にかける手間と時間から解放してくれます。SDDC ソフトウェアの自動インストールでは Cloud Builder が、設定及び LCM は SDDC Manager がこれらを実現します。
図 6:フルスタックインテグレーション
ですが、一つだけ、一般的な VCF 環境ではカバーできない部分があります。それがハードウェアのファームウェア管理です。ESXi をアップデートする際に使用しているサーバの BIOS バージョンの問題でそのままアップデート出来なかった、セキュリティホールの対応のために VIB をアップデートしようとしたが、物理 NIC のファームウェアバージョンのアップデートも必要になってしまった、このような経験をされた管理者の方も多くいらっしゃると思います。VCF on VxRail の環境はハードウェアからソフトウェアまで本当の意味でフルスタックなインフラの自動運用をご提供し、管理者の方の手間を極小化できるように致します。
VCF on VxRail のマネージメント全体像(図7)をベースに、具体的なコンポーネント管理をご説明致します。
図 7:VCF on VxRailのマネージメント全体像
VxRail Manager は vSphere、vSAN 及び HCI ハードウェアのデプロイ、構成、増設管理、ファームウェア管理、パッチ適用とアップグレードを行います。VCF on VxRail を構成する場合は、VCF のワークロードドメインは VxRail で言うところの外部 vCenter 構成となり VxRail Manager の管理配下ではなくなるところがポイントです。
VCF の管理ツールである SDDC Manager は vCenter と NSX を直接管理し VxRail クラスタの管理の為 VxRail Manager と API 連携致します。VCF としての LCM が発生した場合、SDDC Manager からみた vSphere、vSAN の管理は VxRail Manager を介して行われます。NSX や vCenter の管理はSDDC Manager が直接行います。これらの連携によって、SDDC Manager 経由でファームウェアを含めたライフサイクルマネジメントを実現しているのです。
まとめ
ここまでの説明で、VCF on VxRail を利用するメリットと構成概要が明確になってきたと思いますので、簡単に要点をまとめておきます。
- VCF を使って自動で標準的な SDDC 環境をシンプルに短期間でデプロイ
- VxRail 上に構築する事で、ファームウェアを含めたフルスタック なライフサイクル管理が可能
- SDDC Manager が VxRail Manager と連携することで VCF on VxRail が動作
では実際に VCF on VxRail を構築、運用する方法について、どうなっているのでしょうか。
こちらを第 3 回目でご説明していこうと思います。
図 8:VCF on VxRailを実現するコンポーネント
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<連載リンク>
第1回 ハイブリッドクラウドをより身近な存在に!~Dell Technologies Cloud~
第2回 VMware Cloud Foundation on VxRailから始めるオンプレクラウド
第3回 VMware Cloud Foundation on VxRailの構築と運用
第4回 次世代アーキテクチャのモジュラー型サーバのVCFでの活用 ~PowerEdge MXのご紹介~
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