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VMware NSXとTrend Micro Deep Securityで実現する仮想化セキュリティの最適化(6)

エージェントレス型ウイルス対策のアーキテクチャ(2)

トレンドマイクロでVMwareテクニカルアライアンスを担当している栃沢です。
前回はDSVAによるエージェントレス型セキュリティのウイルス検索の流れについて解説をしました。VMware NSX/vSphereと連携をしてDSVAがウイルス対策をはじめとしたセキュリティ機能を提供するためにはNSX側でも必要なサービス設定をしておく必要があります。
NSX側のサービス設定があるからこそ、仮想マシンが生成されたタイミングでDeep Securityのポリシーを自動適用することが可能となりますし、vMotion/DRSによる仮想マシンのホスト間の移動が発生した場合のポリシーのシームレスな移行も可能となっています。
今回は、NSXとDeep Securityが連携した環境で仮想マシンの制御がどのように行われているのか、という側面からアーキテクチャを見ていきたいと思います。これはエージェントレス型セキュリティの実装において一番抑えておいて頂きたい点の1つです。

NSX ManagerとGuest Introspectionの役割
まず、エージェントレス型セキュリティ対策で必要となるコンポーネントとしてNSX ManagerとGuest Introspectionが挙げられます。それぞれの役割については第3回でも触れましたが改めておさらいをしておきましょう。

  • NSX Manager
    NSX Manager はすべての NSX コンポーネントの管理を実施する管理サーバとして動作します。vCenter Server とは別の仮想アプライアンスとして動作しますが、NSXが提供するサービスは vCenter Server から NSX Manager を経由して管理されます
  • Guest Introspection
    Deep Securityなどサードパーティ製品がセキュリティサービスなどを提供する際に必要な仮想アプライアンスとして保護対象となるESXiホストに配信されます。不正プログラム対策、ファイル変更監視などのセキュリティ機能をエージェントレスで提供する上で必要となる仮想マシン毎のNSXセキュリティポリシーの管理を行います。

エージェントレス型セキュリティ対策では、NSXサービスを利用するために管理コンポーネントとしてNSX Managerをデプロイし、サードパーティ製品が連携するために必要となるGuest Introspectionという仮想アプライアンスを各ESXiホストに配信することが必要になります。
ここでポイントとなるのは、Guest Introspectionが「仮想マシン毎のNSXセキュリティポリシーの管理」を行うという点です。ESXiホスト単位で配信されるGuest Introspectionがどのように「仮想マシン毎のNSXセキュリティポリシーの管理」しているのでしょうか。

  1. NSX ManagerはvCenter Serverと連携をして常に仮想マシンの状態・稼動しているホストの情報を保持しています。また、NSXサービスを利用する上では必ずセキュリティグループ/セキュリティポリシーの設定が必要になります。これによって仮想マシン毎に適用するNSXサービスを指定します。
    • セキュリティグループ
      仮想マシンが所属するオブジェクトグループとして指定
    • セキュリティポリシー
      NSXで提供するサービスを定義して、セキュリティグループにバインド
  1. NSX Managerは仮想マシン毎に割り当てられたセキュリティグループ・ポリシーを元に稼動するESXiホスト上のGuest Introspectionに対してNSXサービスの提供を指示します。
  1. Guest Introspectionは、ESXiホスト上のvShield-Endpoint-MUXに対して仮想マシン毎に管理用のTCPコネクションを張ります。

以下にNSXサービスが各ESXiホストにどのように配信されているかを図示しています。(直接Deep Securityとの連携はありませんが、Horizon Connection Serverも記載をしています。)

DSVAの位置付けとNSXサービスとDeep Securityポリシーの連携
エージェントレス型セキュリティ対策を提供するDeep Security Virtual Appliance(DSVA)は、上記のNSXサービスと連携をして各種セキュリティ機能を提供しています。
DSVAはGuest Introspectionと同様にESXiホスト毎に配信されます。また、ハイパーバイザ経由で各仮想マシンからのファイル情報、パケット情報の受け渡し及び各仮想マシンのNSXサービスステータスを受け取るため、Guest IntrospectionからvShield-Endpoint-MUXに張られるTCPコネクションに対応して、vShield-Endpoint-MUXからDSVAに対してもTCPコネクションが張られます(このコネクションも仮想マシン毎に張られます)。
これによって、DSVAがハイパーバイザ経由でエージェントレスのセキュリティサービスが提供するために必要なハイパーバイザ側のパスが確立されます。
このコネクションは非常に重要で、Guest Introspection → vSheild-Endpoint-MUX → DSVAのコネクションが確立できない場合には、DSVAに適切なDeep Securityポリシーが適用されていても、該当する仮想マシンへのNSXサービスが提供できない状況となるため、Deep Securityのセキュリティ機能は提供できません。
一方でDSVAを管理するDeep Security Manager(DSM)は、vCenter Server、NSX Managerと連携を行い、仮想マシンの状態・稼動しているホストの情報とともに適用されたNSXセキュリティサービスの情報をリアルタイムで同期しています。また、この管理サーバ間の連携によりNSX ManagerがDeep Securityのポリシー情報のエイリアス情報を保持することにより、NSXサービスと同様にどのDeep Securityポリシーを適用するべきかをDSMに指定することが可能となります。
(vCenter Server上の “Networking and Security” Security Policy Service ProfileとしてDeep Securityの“ポリシー”が選択可能となります。)

NSXセキュリティグループ、NSXセキュリティポリシーおよびDeep Securityポリシーの関係性は以下のようになります。

※このポリシー連携はNSX Advancedライセンス以上を利用している場合にのみ可能となり、NSX Standardライセンス以下の場合には、Deep Securityのイベントベースタスクを利用する必要があります。イベントベースタスクを利用する際には、NSX側ではSecurity Policy Service Profileにおいて“default(EBT)”を選択する必要があります。
イベントベースタスクについてはこちらをご参照ください。
Deep SecurityのポリシーとNSXサービスのセキュリティポリシーが連携することで、仮想マシン生成時にはNSX セキュリティポリシーに従ってDSMから稼動するESXiホスト上のDSVAに対して自動的にDeep Securityのポリシーが配信されます。また、vMotion/DRSにより仮想マシンがホスト間で移動した場合にもDSVA間のポリシーの移行を自動的に行うことができるようになっています。
NSXのサービスに加えてDeep Security “ポリシー”がどのように配信されているかを以下に図示しています。

まとめ
ここまで見てきたとおり、NSX+Deep Securityによるエージェントレス型セキュリティ対策は、“仮想マシン単位”でNSXサービスとDeep Securityポリシーの双方を連携させることで、vSphere環境上での変化にリアルタイムに対応しつつ、必要なセキュリティ機能を適用し続けることができるように実装されています。

今回は少し詳細な部分まで踏み込んで解説しましたが、vCenter Server/NSX Manager/DSMの管理サーバ群の連携、Guest Introspection-DSVAのコネクションの確立、この2点が重要なポイントです。それらがあって始めてDeep Securityポリシーを適用することが可能となります。ブラックボックスと思われがちなエージェントレス型セキュリティの仕組みも少し身近に感じていただけければうれしく思います。

執筆者:
トレンドマイクロ株式会社
セキュリティエキスパート本部
パートナービジネスSE部 パートナーSE2課
栃沢 直樹(Tochizawa Naoki)

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