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VMware vSphere Virtual Volumes に対するHP 3PAR StoreServの実装

はじめに

vSphere 6.0 で実装されたVMware vSphere Virtual Volumes (VVol) は、対応するストレージと連携することにより初めて利用可能となる機能です。VVolの全体的な話はこちらでご紹介させていただきましたが、今回は、主にストレージ側から見たVVol の実装とそのメリットについて、日本HPの3PAR担当プリセールスの伊東様に執筆いただきましたのでご紹介いたします。

VVol 概要とメリット

vSphere 6.0 から新たに実装されたVVol はストレージベンダーにとっては2015年で最も重大なニュースであり非常に大きなインパクトを与えています。特にSANストレージがVVol に対応することでこれまでのLUN + VMFSでは不可能であったり不便であったりしたことが大幅に改善されます。

どのように改善、変化したかということを下図で示します。SANストレージとNASストレージでは同じ利用目的のデバイスでありながら管理の方法やその特性が全く違っていました。

VVol を利用すると、vCenter Server からSANもNASも同じVVol Datastoreの定義をすることができ、見え方、使い方の違いを無くすことができます。

SANストレージにとっては、今まではほぼ不可能に近かった仮想マシン毎にボリュームを分け、サービスレベルを個別に設定することが可能になり、様々なメリットが生じてきます。

VVol の対応により、SANストレージは今までと同様の高いパフォーマンスを提供しながらストレージリソースのシンプルな管理、きめ細かなSLA定義、効率の良いストレージ機能の提供が可能となります。

3PAR とVVol の関係について

HP 3PARとVVol には長い歴史があります。まだ3PAR がHP にマージされる前の4年以上前からVVol との関係がスタートしています。その後、3PAR はHP の主力ストレージとなりましたが、HP がVVol のオリジナル開発パートナー5社のうち1社となり、更に3PAR がFCストレージのリファレンスプラットフォームに選ばれました。開発の途中経過はHPのブログやエキシビションで発表しており、2014年半ばにはVVol のベータプログラム開始時に準備が整っていた3製品のうちの1つとなりました。最終的にVVol がGAとなった2015年3月時点でもVVol が提供する機能を全てカバーしています。

では、HP 3PAR がVVol の機能をどのように実装し、実際にどのように動作するかということを解説していきます。

VVol をサポートするための実装

・VASA 2.0プロバイダ

vCenter Server / ESXとやり取りするストレージ管理サービスでvCenter Serverからのリクエストを受け取り、ストレージの機能や制御の伝達・翻訳する役目を果たします。

・プロトコルエンドポイント

FCファブリックのアクセスをシングルポイントにする仮想デバイスで通常のLUN 検出コマンドで検出されます。ストレージ管理ツールに触る必要が無く、ストレージ管理者が介在しなくてもvCenter Serverからストレージの切り出しが可能です。各仮想マシンにはVMDK, Config, Swap, Memory, Snapshotなど複数個の3PAR VV*(Virtual Volume)が作成されることになるため、従来よりも多数の3PAR VVが作成されることになりますが、3PAR はもともと多数のボリューム構成をサポートしており、その範囲内であれば全く問題なく利用可能です。

*3PAR VV(Virtual Volume)とは:3PAR内では、ホストに提供するLUに相当するボリューム のことを従来よりVirtual Volumeと呼んでいます。
vSphere VVol環境ではVVol = 3PAR VVとなります。なおvSphere VVolはVirtual Volumesとも呼びますので、混同しないようご注意ください。

・VVol Datastore(ストレージコンテナ)

3PAR ではオプション機能のVirtual Domainを利用すると1台の3PAR を仮想的に複数のストレージとして管理単位を分割出来るためストレージコンテナを複数に分割することが可能です。Virtual Domainを利用しない場合は3PAR が丸ごと1台がストレージコンテナとなります。

3PARのVASAプロバイダはビルトインで、3PARのコントローラノード上のサービスとして動作します。インストールなど不要でコマンドによりサービスを起動するだけで即座に利用可能となります。

VASAプロバイダがストレージコントローラ上に組み込まれていることによって得られる見過ごすことのできないメリットがあります。

・インストール不要で追加のセットアップや構成が不要

・高可用性、自動フェイルオーバ

・個別のバージョン管理、アップデートが不要

ストレージ装置によっては仮想アプライアンスなどの形でVASAプロバイダが提供されているケースもあり、構築にそれなりの手間が生じますが、3PARのVASAプロバイダは上記の通り極めて簡単に構築可能で、かつ、可用性に優れる実装となっています。

また、3PARがサポートするVV(ボリューム) 数は下記の通り、非常に多数を作成することが出来るため、VVol で懸念となるボリューム数の増大は3PAR では全く気にする必要がありません。

モデル 7200/7400 7440/7450 10000
最大VV数 16000 32000 32000

VVol + 3PARで何が出来るか?

VVol 環境で利用可能となる3PAR の独自機能を下記に挙げます。

・ベンダーニュートラルな機能として提供(VVol 必須の機能)

Thin / Thick Provisioning

・ベンダー固有の機能として提供

Common Provisioning Group :ボリューム構成テンプレート

プライマリ用とスナップショット用を別々に選択可能

Thin Persistence(Zero Detect):ゼロデータ検知・リクラメーション

Thin Dedupe:重複排除機能

・その他vCenter Serverから行えるストレージ機能

スナップショットの作成

Virtual Copy(スナップショット機能)との連携:

仮想マシンの操作メニューからスナップショット作成を行うと、3PAR側でVirtual Copyを作成

・現時点で3PAR 管理ツールにより設定すれば使える3PAR 機能

ストレージQoS:Priority Optimization

フラッシュキャッシュ:Adaptive Flash Cache

将来的にはVVolに対応した機能として提供する予定です。

Storage Policy-based Management(SPBM)のサポート

仮想マシンのストレージに対するビジネスニーズを満たすためのフレームワークです。

  • SPBM によって、仮想マシンをストレージ上でプロビジョニングする際にアプリケーションの要件にマッチしたボリュームを提供するための仕組みになります。
    • ストレージがサポートしている機能をvSphereのPolicy-base Provisioning エンジンに対して公開
    • 仮想マシンが作成される際、ビジネスニーズにマッチした機能をアサインする
      • 仮想マシン毎、必要な機能がボリュームに対してアサインされる(スナップショットも仮想マシン毎)
    • SPBMエンジンは、要件を満たし互換性を持ったデータストア(ローカルディスク、LUN、vSAN、VVol )がどれかというのを認識
    • 仮想マシンは適切なESXホストおよびストレージでプロビジョニングされる
    • SPBM は各ボリュームのコンプライアンスを監視
    • 仮想マシンに紐づけたストレージが機能要件を十分に満たしているかを監視していく役割も担っている

3PARでVVolを利用するための環境

  • vSphere 6
  • 3PAR OS :3.2.1MU2 Patch 12
  • 3PARソフトウェアライセンス類
    • OS Suite        :必須
    • Virtual Copy         :必須
    • Virtual Domain        :オプション
    • Priority Optimization    :オプション
  • FC HBA, FCoE アダプタ

3PARでVVol を利用するために最初に実施すること

下記の手順でVVol利用の準備を行います。

  1. VASA プロバイダ サービスの起動: 3PAR CLI にて、”startvasa” コマンドを実行
  2. <オプション>VVol 用のドメイン、ユーザの作成
  3. CPGの作成 :全てのCPG が機能プロファイルとしてvSphere に提供されます
  4. VASA プロバイダの登録:vCenter Server から VASA プロバイダをスキャン
  5. ESXi ホストを 3PAR に登録:通常の手順で登録。ESXからプロトコルエンドポイントを確認
  6. VVol データストア(Storage Container)をマウント:通常のデータストアと同じ手順。
  7. ストレージポリシーを作成

手順のイメージをいくつか紹介します。

  1. VASAプロバイダの準備はサービスの確認と開始のコマンドを実行するだけで完了です。

④VASA プロバイダの登録はvCenter Server の新しいストレージプロバイダの追加を実行します。

⑤ESXi ホストの登録を実施しますが、3PAR では通常行っているホストの登録コマンドを実行するだけで完了です。またホスト登録の実施を行うだけでプロトコルエンドポイントとなるLUが有効になります。

ホスト登録のための3PAR コマンド:cli# createhost –persona 11 <host name> <WWN>

ESXi 側では通常のデバイスのスキャンを行い、ストレージデバイスにLU が確認できることと、そのデバイスがプロトコルエンドポイントとして認識されていることを確認します。

プロトコルエンドポイントはESXi から見るとSCSIデバイスが見えますが、3PAR 内ではボリュームの実体は作られません。

⑥VVol データストアのマウントをした後、データストアのサマリ情報を見るとストレージ機能プロファイルという項目があり、そこに3PAR の CPG が列挙されてきます。CPGには 3PAR のドライブタイプ、 RAID レベル、ストライプ幅を決める設定が含まれます。


⑦ストレージポリシーの作成では3PARの機能の組み合わせを一つ一つ構成していきます。

まずポリシー名を設定します。


次にルールセットを作成で、ルールの中に 3PAR の機能を選択していきます。

プライマリボリューム用の CPG、スナップショットデータを格納用のCPGの選択、リクラメーション機能のThin Persistence、重複排除機能のThin Deduplicationを必要に応じて追加します。


この例では、プライマリボリュームはFCドライブのRAID 1に、スナップショットはFCドライブのRAID 6 に、リクラメーション機能もONというポリシーを設定したことになります。


ルールの設定の後は、互換性ありと表示されているVVol のデータストアを選択します。


設定内容の確認を行い、ポリシーの作成は完了となります。


仮想マシンの作成

最後に一番重要な、仮想マシンの作成とそれに伴い自動的に作成されるボリュームについて、実際の作成画面等を用いて紹介していきます。

通常の手順で新規仮想マシンの作成を開始します。


ストレージの選択で、仮想マシン ストレージ ポリシーでVVol 用に作成したポリシーを選択します。ここで選択したポリシーに応じて仮想マシンの作成と共にボリュームが作成されます。


仮想マシン ストレージ ポリシーで選択されたポリシーに対して、互換性のあるデータストアが互換性ありにリストアップされます。ここでは”VVOL”という名前で作成されたVVol データストアを選択します。


最後はサマリが表示され問題なければ完了となります。


仮想マシンを作成すると、3PAR 上で仮想マシンに応じたVVが自動的に出来上がります。通常運用では3PAR側のVVの状態を特に意識する必要はありませんが、参考までにその確認の方法を紹介します。

VVol 用に自動的に作成された3PAR VVの表示コマンドshowvolvm –vvの実行結果で仮想マシンとVVol 名、VVol タイプ等と3PAR VVとの対応が確認できます。仮想マシン作成時点では、Config 用とData 用のボリュームが作成されています。

仮想マシンのパワーオンを実行するとSwap 用のボリュームが自動的に作られます。

仮想マシンのスナップショットを作成では、従来の手順で仮想マシンのメニューからスナップショットの作成を実行します。

スナップショットの作成手順を行うことでVVol の場合は自動的にストレージネイティブのスナップショット機能 = 3PARではVirtual Copy が自動的にとられます。

仮想マシンのメモリのスナップショットをチェックしておくと VVol ではストレージ側に Memory というタイプのボリュームを作成します。

以上、仮想マシンの作成やスナップショットの作成は全てvCenter Server 側の UI から実施可能で、3PAR 側でのボリュームの確認は任意ですので必要に応じて 3PAR のコマンドから確認してください。

現時点でまだ VVol 機能に対応していないストレージ QoS やフラッシュキャッシュ機能は 3PAR のコマンドから設定いただきご利用いただくことが可能となっております。将来的には VVol 機能の一つとして選択できるように実装される予定です。

最後に

HP 3PAR が VVol の開発当初から関わり、リリースと同時に完全にサポートしていることをご理解いただいたと思いますが、 VVol 機能自体がまだまだ発展途上の技術であり今後にのびしろを多く残している機能です。

特に2015年5月時点では VVol で作成されたボリュームをストレージでレプリケーションする機能は実装されていませんし、バックアップに関しても対応しているバックアップソフトウェアも少ないのが現状です。

3PAR は引き続きVVol 対応用の機能を拡充し VVol の進化に追従していく予定ですので、是非今からご利用のご検討をスタート頂ければと思います。