こんにちは、Dell EMC教育部の坂井 大和です。前回に引き続き、vSAN Deploy & Manageの
トレーニングコースについてご紹介いたします。
なお、前編のリンクはこちらです。まだご一読されていない方はぜひこちらの記事をご覧の上本記事を
ご覧いただけますと、よりトレーニングの重要性をご理解いただけると思います。
後編:なぜトレーニングが必要なのか?
教育部としてはここからが本題です(笑)
vSANがこれまでのSANと同様の性質を持っている事をご理解頂いたところで、次は運用や保守面
でのお話に移ります。
SANと全く同じである、ということならそもそもトレーニングは不要だと言われる可能性があります。
一言で言ってしまえば、”SANと同じことが出来るvSANですが、仕組みや管理手法、デザインが
全く異なるから”です。
正しい知識が無いまま、サービスレベルにセンシティブなシステムを運用することは望ましいこと
だとは言えません。恐らく現在SAN環境を導入、保守、メンテナンスされている方の多くは、
何らかの形でトレーニングや技術のカスケードを受けてこられたことだと思います。
それでは以降4つのポイントから、vSANがSANと異なる点をご紹介致します。
Point 1. 次世代のデータ保護方式 ”ストレージ ポリシー”
vSANはSANとは違うアプローチでデータを取り扱います。
一般的にRAIDアーキテクチャを用いて、エンタープライズ環境ではデータの可用性やパフォーマンスを
コントロールするのに対し、vSANでは”ストレージ ポリシー”という考え方に基づきます。
従来のRAIDでは、2本の物理ドライブでRAID1や3本の物理ドライブでRAID5など、保護レベルの
設定は物理的な構成要素に基づきます。この場合、一旦決定した本設定はハードウェアに紐づくため、
設定変更を行う場合は中のデータの移行などが必要になります。
vSANでは保護レベルを始め、ストレージキャッシュなどの設定要素を”仮想マシン単位(正しくはそれを
構成するオブジェクト)”単位で選ぶことが可能です。
つまり、”本番環境の仮想マシンにはミラーリング”であったり”テスト開発環境の仮想マシンには保護設定
無し”などを既定することができ、物理ドライブにはこれらの設定は行わず、物理ドライブはただ単に容量
を既定するだけのプールとして稼働します。
vSANでは、ストレージポリシーの知識が不可欠となります。
トレーニングではこのポリシーの種別紹介や利用ケースなどを取り扱います。
Point 2. 統合されたVMwareベースのストレージ管理ツール
従来のSANストレージでは、ベンダーやプロダクト毎に様々な管理ツールの操作を学習する必要があり
ました。Dell EMCでもPowerVault, Equallogic, Compellentなど、製品毎にツールが異なります。
これらはあくまでもストレージに対する管理画面であり、これらに加えてサーバー用の管理画面、仮想
レイヤー向けの管理画面などを管理者は操作をする必要があります。
vSANでは、ほとんどの操作を”vSphere用管理インターフェース”で行うことが出来ます。
(vSANのストレージ管理、操作/ESXiハイパーバイザーの管理、操作/仮想マシン/仮想マシン用ネット
ワーク設定)
トレーニングではvSAN管理に必要なインターフェースの操作をカリキュラムとして取り扱います。重要な
データの取扱ですから、データの健全性やシステムの保護状況の判定にはインターフェースへの理解は
不可欠だと言えます。
例えば上図では、ある仮想マシンがvSAN上で動作していますが、データの保護レベルとしてはRAID1
相当で動作をしています。RAID5や6を構成した場合は表示のされかたが変わります。また障害が発生
した場合に上記画面でどのようなステータス変化になりうるか、ケースごとにどのようにユーザーは
立ち振る舞うべきか、などをコース内で紹介致します。
Point 3. SDSならではの設計デザイン手法を学ぶ
従来のストレージにも、製品ごとのベストプラクティスとして、理想的な設計思想が存在します。vSAN
にも”ディスク グループ”というストレージの構成要素を始め、CPUコアやメモリの搭載ルール、ESXiの
インストール先の選定方法、物理ラックへの搭載ルールなどを取り扱います。
これらの理解を行うことで、より強固なvSANシステムを構築できるようになります。
また障害発生時の挙動もデザイン次第で大きく変わります。
例えば、上図の場合は2つのケースで、物理サーバー1台辺りで保有する物理ドライブ数が異なります。
2つは物理ドライブ数は同じシステムですが、パフォーマンス、拡張性、耐障害性が全く異なる2つの
システムとなります。
トレーニングではディスクグループの基本や構成差の利点、考慮事項にも触れます。
Point 4. トラブル発生時の確認方法やvSANの挙動
どんなシステムであれ、物理的なデバイスで動作するものは寿命や不具合は完全に0にはなりません。
(特に機械は耐久年数などの既定がありますよね)
vSANも例外なく、ハードドライブなど稼働域が多いデバイスはいつかは障害がやってきます。管理者の
腕の見せ所としては、いかにして迅速、的確にトラブル対処ができるか、という側面もあると言えます。
vSAN Deploy & Manageコースでは、トラブルの発生した場合、どこを見れば良いのか、仮想マシンの
冗長性に問題があるかないか、など障害判定ができる知識を学ぶことが出来ます。
例えばこの状況はvSAN上で動作するある仮想マシン(常時RAID1保護)の冗長性が欠損している状態を
示します。一般的にはRAID1では”Degraded”などで示される状況です。
この状況において、”今現在何が起きているのか”、”何が原因か”、”どのような対処が必要であるか”、
を判断できるように、本コースでは講義を行います。
いかがでしたでしょうか。
vSANはまさに次世代のストレージでありながら、従来のSANに負けない同等の機能を提供します。
また、基盤としては物理サーバー3台とネットワークスイッチ(最小1台、但し冗長化も可)から
スタートができるシステムです。
現在市場では多くのvSANを導入するお客様が見受けられます。
毎日といっていいほどハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)という文字を見ます。
(私の職業柄かもしれませんが)
ストレージのトレンドもSAN一択から、SANとSDSの共存時代になってきているように感じます。
是非この機会にトレンドであるSDSへの理解を深めてみてはいかがでしょうか?