世界中の加盟店や金融サービス機関は、Fiserv (ファイサーブ)のソリューションを利用して、決済処理や電子商取引の強化、デジタル取引の簡素化を行っています。競争力を維持するために、同社は優秀な人材を獲得し維持する必要があり、そのためにはモダンなアプリケーション開発とプログラミング言語が必要でした。Fiserv は、2つのプロプラエタリーなクラウドプラットフォーム上にクラウドネイティブスタックを構築しましたが、その後セルフサービスの Developer Studio をクラウドに依存しない VMware Tanzu Application Platform に移植し、開発者がよりスマートに、より速く、より効率的に共同作業を行えるようにしました。
お金と情報の交換を可能に
Fiserve は、加盟店や金融サービス機関向けの決済およびテクノロジーソリューションのグローバルプロバイダーであり、毎日何万もの企業や何百万もの顧客のためにお金と情報のやり取りを実現しています。同社は約10,000の金融機関の顧客基盤をサポートし、毎秒12,000のトランザクションを処理し、14億以上のグローバルアカウントにサービスを提供しています。2021年には、162億2,000万米ドルの収益を記録しています。
開発者環境のモダン化
激しい競争が繰り広げられる市場で後れを取らないために、Fiserv は高性能なアプリケーション、プロダクト、サービスを継続的に開発し大規模にリリースする必要があります。開発者に最先端のエンジニアリング環境を提供するために、Fiserv はクラウドにとらわれない環境での最新のスタックを必要としていました。
35年の歴史の中で、Fiserv は何百ものエンドポイントを持つプロダクトのポートフォリオを開発し、500以上の API からなる堅牢なカタログを有しています。多くのソリューションがバラバラのチームによって開発されているため、断片化した環境をより一貫性のあるものにする必要がありましたが、異なるプラットフォームやポータルがモダンなアプリケーション開発を遅らせていたため、同社は顧客がいる場所で出会い、サービスを提供できるモダンな開発環境を必要としていました。
「ある銀行のお客様が複数のクラウド上で動作する当社の24種類のプロダクトを使用している場合があります。しかし、チームによって作業方法はさまざまでした」と Fiserv のデジタルトランスフォーメーション担当シニアバイスプレジデントである Tom Eck 氏は説明します。「統合は膨大な手作業が発生していました。コミュニケーションを標準化し、API をより有効に活用するためのトップダウンの指令が必要だったのです」。
Fiserv は、クラウドネイティブ化、API 駆動型ソリューションの提供、開発者が管理作業に費やす時間の短縮という目標をサポートするため環境を統一し、モダンなスタックを構築することにしました。
「開発者がコーディング作業に85% の時間を費やしていないなら、それは何かが間違っている。邪魔になるものを取り除きスピード感を持ってイノベーションを起こすための適切なツールをチームに提供するのが私の仕事です」と Eck 氏は言います。スピード感を出すには、文化的な変革と開発者に大胆な創造を促す成長マインドセットが必要です。」
「私たちは年間約1兆3,000億ドルの資金を移動させるので、ミスやセキュリティの問題を起こすわけにはいきません。適切なテクノロジー、文化、マインドセットが必要です。」
開発者が24時間必要なリソースに素早くアクセスできるようにするため、Fiserv は1つのセルフサービスポータルにリソースを集中させ、マイクロサービスや Kubernetes をサポートできる最新のクラウドネイティブ環境に移行することを希望しました。また、ポータルには、チームがサービス中断のリスクを負うことなく実験できるように安全なサンドボックスが必要でした。
開発者リソースをセルフサービスポータルに一元化
Fiserv Developer Studio は、単一のプラットフォーム上で開発者向けサービスのカタログを提供し、ワンストップの開発者向けショップを実現します。当初は2つの異なるパブリッククラウドサービスを利用していましたが、VMware のアーキテクトのサポートにより、1ヶ月でオペレーション全体を Tanzu Application Platform に移行しました。
図:Fiserv Developer Studio
「VMware と提携したのは、開発者体験を向上させるために必要なソリューションがすべて揃っていたからです」と、Fiserv のデジタル テクノロジー トランスフォーメーション担当最高技術責任者である Ganesh Venkataraman 氏は述べています。「第一に、ソリューションの構築方法に関するガバナンスを維持しながらデリバリーをサポートし複数のクラウドで起動できるようにすることです。そして2つ目は、クラウドリソースのプロビジョニングをより簡単にすることです」。同社の先鋒部隊である Venkataraman 氏のチームには、最も困難な技術的問題に対処するために任命された最も熟練したエンジニアとアーキテクトがいます。
「モダンアプリケーションやマイクロサービスを目指す中で、VMware の Application Accelerator や、セキュリティとオブザーバビリティを備えたカスタマイズ可能なテンプレートなど、効果を高める『戦力倍増装置』を発見しました。これにより、マイクロサービスにあまり慣れていない開発者が、迅速かつ安全に本番への道を歩むことができました」とEck 氏は言います。
ブループリントによる開発の高速化
開発者は、新しいソリューションをすべてゼロから作るのではなく、他のソリューションをテンプレート化するブループリントを構築することで、プロダクト開発とスケールを加速させることができるようになりました。Tanzu Application Platform に組み込まれたCartographer 機能を使用することで、開発者はより効果的な本番環境への経路を定義し、より迅速にセキュリティレビューを受け、すべてのエンジニアリングチームが利用できるようになります。
Venkataraman 氏は、「 Cartographer はゲームチェンジャーです」と言います。「一つのツールに縛られることなく、Fiserv の全チームで使用できる一貫したサプライチェーンを提供してくれています。開発者の自由という基礎を残したままでの DevOps の体験は驚異的です」。
チームはオブザーバビリティを運用に取り入れることも行っています。VMware Aria Operations for Applications を使用することで、Fiserv は環境全体にわたる分析と洞察のハイレベルな可視性を獲得し、マイクロサービスの問題をピンポイントで特定する課題を軽減しています。
数々の賞を受賞した開発者体験
Fiserv Developer Studioは、その堅牢な機能性だけでなく、エレガントで使い勝手の良いインターフェースでもあり、2022年の Webby Award でモバイルビジュアルデザイン機能の最優秀賞を獲得しています。しかし、このデザインは偶然の産物ではありません。「私たちは開発者体験を非常に重要視しています」と Eck 氏は言います。「私たちは、Developer Studioを誇りに思っています。私たちのチームは、必要なすべてのコード、API 、ドキュメントに単一のエントリポイントからアクセスすることができます。これはすべてセルフサービスです。開発者は、何かを見つけられないと電話を取る必要はありません。すべて揃っているのです」。
同社のもうひとつの「戦力倍増装置」は、熟練したインフラエンジニアの影響力を拡大することです。チーム全体のスキルアップに投資するにはコストがかかりますし、モノリシックな開発からマイクロサービスへの移行は大きな転換となります。同社の熟練エンジニアは再利用可能な自動化プロセスを開発し、他のメンバーは開発を遅らせたり重要なインフラを停止させるリスクを負うことなく、新しいスキルを徐々に学ぶことができるようになりました。
「私たちは小さなチームですが、開発に与える影響という点では、本当に大きな存在です。私たちは協力的で、お互いをサポートし合っています」と Eck 氏は述べています。
VMware Tanzu Application Platform を利用することで、Fiserv は革新的な新しいソリューションを迅速に市場に投入するための最高のツールと環境を開発者に提供することができ、フィンテックの新興企業に対する競争力を維持し、新しい市場への参入を容易にすることができるようになったのです。