VMware Cloud Foundation

マルチクラウド時代の運用を効率化する VMware Cloud Foundation (第一回)

はじめまして、VMware の知久です。VMware でマルチクラウド製品のアーキテクトを担当しています。

VMware のマルチクラウド戦略の中枢を担う VMware Cloud Foundation という製品が世にリリースされて早5年以上が経過し、近日中には最新メジャーバージョンである VCF 5.0 のリリースを予定しています。
リリース当初こそ認知度は低かったものの、ここ数年では製品の成熟度が高まると共に大規模なシステムでご利用頂いてる事例も含めて採用されるお客様も増え、日に日に注目度が高まっています。
ここでは、改めて VMware Cloud Foundation という製品がどの様な製品で、どの様な効果を提供出来るのか、さらには運用や導入に役立つトピックなどを連載で紹介していきたいと思います。
第一回は VMware Cloud Foundation が必要とされる背景と、VMware Cloud Foundation の概要について紹介させて頂きます。

マルチクラウド化の促進に伴う運用負荷の増大

ここ数年のデジタルビジネスという波と共に、新しいテクノロジーを活用して既存のコアビジネスの改革、もしくは新しいビジネスを立ち上げている企業が増えていると思いますが、その基盤の候補としてはクラウドサービスを最優先で考える方が多くを占めるのではないでしょうか。
クラウドサービスのメリットとしては、インフラの管理・運用を事業者側にオフロード出来、小さく初めて初期投資を抑え、ビジネスの成長と共に拡大していく事が容易である点など、デジタルビジネスとは非常に相性が良いのもその理由かと思います。

しかし、ここで忘れてはいけないのが、新しいビジネスの基盤とは別に従来から運用しているレガシー基盤を多くの企業が保持しているという点です。
それらも全てクラウドサービスに移行出来れば、運用・管理の負荷を下げる事は出来ますが、セキュリティやコンプライアンスなどの要件でオンプレミスに残さざるを得ないケースが多く、デジタルビジネスの基盤とレガシー基盤によるサイロが発生し、多重で管理する分運用負荷が増える事になります。

 

クラウドサービスは事業者が運用・保守をしてくれるので負荷は増えないのではと考える方もいるかもしれませんが、クラウドでもSaaS、PaaS、IaaS とレイヤーが下がるほどユーザーが管理する部分が増えていくため、決して手放し状態にはならず、従来のオンプレミスの運用に加えてクラウドサービスの運用部分が増える形になります。
管理するIT部門のリソースは限られているケースが多いため、運用効率を上げる必要性が喫緊の課題として出てきます。

 

オンプレミスの運用効率化に欠かせない二つのキーワード

デジタルビジネスを支える企業のインフラの効率化を実現するには、従来まで手塩に掛けていたオンプレミスの運用を効率化するのが一番手っ取り早く、効果も大きいと考えます。それを実現するには標準化と自動化という要素を取り入れるのが非常に重要になってきます。

自動化に関しては今まで手動で行っていたオペレーションをシステムで自動的に処理する形になるので、効率化のイメージが湧きやすく、取り組もうと考えている企業も多いかと思います。ただし、ここでは自動化に加えて標準化というキーワードが非常に重要になってきます。
なぜなら、この標準化が実現出来ていない環境で自動化を取り入れても期待する効果が出ないからです。

例えば複数のオンプレミスの基盤を有している場合、システム毎にハードやアーキテクチャもバラバラというケースは珍しくありません。
その場合、自動化する際の仕組み作りやメンテナンス、処理後の確認ポイントなどはシステム毎に異なり、自動化のためのオーバーヘッドが効率化要素を上回り、むしろ非効率化に繋がってしまいます。
そのため、オンプレミスのシステムではソフトウェア化などによる抽象化でアーキテクチャを統一し、標準化が整った状態で、自動化のワークフローを最小化した上で初めて効率的なインフラ運用の自動化が実現します。

例えば、アマゾン ウェブ サービス(AWS)や Microsoft Azure の様なハイパースケーラーと呼ばれるクラウド事業者はサービスに提供しているインフラは彼らの視点から見ればオンプレミスの環境で、管理しているホスト数も数千から数万規模になります。
使用している仕組みは各社で違いはあるにしても、脆弱性が見つかればパッチの適用やアップグレードの実施、リソースが足りなくなれば増設も必要になります。
当然、利益を出すために無尽蔵に人手を確保し、人海戦術を取っているとは考えにくいため、上記の様な標準化と自動化で効率良く運用を回している事は容易に想像出来ます。
つまりはパブリッククラウドサービス事業者が提供している様なクラウドライクなインフラを構成する事がオンプレミスの運用効率化の近道という事になります。

 

標準化と自動化を容易に実現する VMware Cloud Foundation

オンプレミスの運用効率化に欠かせない標準化と自動化ですが、言葉は非常にシンプルですが、実際に実現しようとすると、どうして良いか分からないという方も多いかと思います。
しかし、それを簡単に実現出来るのが、今お話している VMware Cloud Foundation という製品なのです。

弊社では2010年代にコンピュートだけでなく、ネットワークやストレージをソフトウェアで抽象化して、それを一元的に管理する事でインフラの効率化実現するSoftware Defined Data Center ( SDDC )というビジョンを長らく掲げてきました。
2023年の現時点ではこれはもう既にビジョンではなく、多くのお客様のインフラで実現化されています。

ソフトウェアによる抽象化はハードウェアのギャップを埋めてくれるため、自動化の仕組みを取り入れる際には非常に効果的で、標準化はこの SDDC 化がベースになっていると言っても過言ではありません。
ただし、実際に SDDC 環境の導入や運用に携わった方はご存知かもしれませんが、これらはそれなりの高いスキルが必要という課題も有していました。
そして、その解決策として VMware が世に出したのが、VMware Cloud Foundation という製品になります。
VMware Cloud Foundation は コンピュート仮想化の vSphere、ネットワーク仮想化の NSX、ストレージ仮想化の vSAN、クラウド管理の vRealize (現 VMware Aria)の製品の集合体に加え、それらの導入やライフサイクル管理を自動化する SDDC Managerが組み合わせたパッケージ製品になります。

ユーザーは この VMware Cloud Foundation を利用することで以下を実現する事が可能になります。

  • SDDC 環境の自動セットアップ
  • リソースの自動拡大・縮小
  • 各製品の自動ライフサイクルアップデート
  • パスワードや証明書の自動管理

これらの機能により、従来では敷居の高かった SDDC 環境の導入や運用を容易にすることで簡単に標準化と自動化の要素を盛り込んだオンプレミスのインフラを導入する事が可能になります。

第一回は背景や概要的な話が中心でしたが、次回は上記の機能を中心に VMware Cloud Foundation の詳細をご紹介させて頂きます。