VMworld 2015 のジェネラル セッションにて、ハイブリッドクラウド環境における管理機能を提供する「vCloud Air Hybrid Cloud Manager」、およびその拡張機能として、クラウド間のライブマイグレーションである Cross-Cloud vMotion などを実現するテクニカル プレビュー「Project SkyScraper」が発表されました。
本エントリでは、これらがどのような機能を提供するのか、その概要を説明します。ハイブリッド クラウドにこだわってきた VMware が提供する最新技術をぜひ知っていただければと思います。
vCloud Air Hybrid Cloud Manager の位置づけ
先日のエントリでも解説しましたが、VMware は、ハイブリッド クラウド環境のネットワークとセキュリティにおいて、大きく 3 つの領域で製品/サービスを提供することで、包括的なソリューションを提供しようとしています。オンプレミス側では VMware NSX、パブリック クラウド側では(VMware NSX による)Advanced Networking Services です。
今回発表されたのは、図の中央に位置する、ハイブリッドクラウドの管理機能を提供する「vCloud Air Hybrid Cloud Manager」です。オンプレミスとパブリック クラウドを繋ぎ込む、ハイブリッドクラウド環境におけるネットワークとセキュリティの大事な機能を担います。
vCloud Air Hybrid Cloud Managerの機能
Hybrid Cloud Manager がどんな機能を持っているのか、簡単に説明しましょう。Hybrid Cloud Manager の重要な機能は、大きく 3 つあります。
ハイブリッドクラウド上のワークロードを一元管理
- Hybrid Cloud Manager は vSphere Web Client のプラグインとして提供されます。導入すると、vSphere Web Client から vCloud Air 上のワークロードの管理を行うことができるようになります。
- これにより、vSphere Web Client を通して、オンプレミスの vSphere 環境と、パブリック クラウドの vCloud Air 環境のワークロードを一元管理することができます。
強化されたワークロードの移行
- オンプレミスと vCloud Air 間の双方向のワークロードの移行機能を提供します。ワークロードの移行は、今までは vCloud Connector が提供していた機能ですが、その機能が強化された形で Hybrid Cloud Manager に搭載されます。
- 強化されたポイントは、vSphere のレプリケーションベースの移行が行えるようになったことです。暗号化されたインターネット接続もしくは Direct Connect を経由してレプリケーションすることで、仮想マシンのダウンタイムを数分のレベルにまで短縮できます。
- さらに、ダウンタイムはソフトウェアベースの WAN アクセラレーション機能によってさらに削減されます。移行のタイミングはオフピーク時間にスケジューリングできます。
ネットワーク延伸の管理
- Hybrid Cloud Manager を使えば、オンプレミスの何百ものネットワークセグメントを L2 VPN トンネルを使ってクラウドに延伸できるようになります。その際、エッジ ゲートウェイは 1 つでも問題ありません。暗号化されたインターネット接続、もしくは Direct Connect のどちらでも利用することができます。この機能により、オンプレミスのデータセンターからクラウドへとシステムをシームレスに拡張し、双方のリソースを統合して利用することが可能になります。
- ワークロードの移動前後で IP や MAC アドレスをキープすることも可能になります。ユーザはオンプレミスおよびクラウドの特長を活かしつつ、新しいタイプのハイブリッドクラウドアプリケーションを作ることができるようになります。
Hybrid Cloud Manager は、vSphere ユーザは無償でダウンロードして利用でき、マイグレーションの強化とネットワーク延伸機能は有償オプションで利用可能になります。Hybrid Cloud Manager の利用に際し、オンプレミス側には VMware NSX は必要ありません。
Hybrid Cloud Managerは、まずDedicated Cloud(専有型クラウド)向けに 9 月に提供が開始され、今年の後半に Virtual Private Cloud(共有型クラウド)をサポートする予定です。
クラウド間ライブマイグレーションを実現する Project SkyScraper
それでは、今年の VMworld のジェネラル セッションの 1 つの目玉であったクラウド間ライブマイグレーション Cross-Cloud vMotion を実現する Project SkyScraper について説明していきましょう。テクノロジー プレビューである Project SkyScraper は、Hybrid Cloud Manager の拡張機能として提供され、大きく 2 つの機能を有します。
Cross-Cloud vMotion
1 つ目の機能が、vSphere vMotion の新しいテクノロジーである Cross-Cloud vMotion です。VMworld のジェネラル セッションのデモでは、オンプレミスと vCloud Air の間で、稼働中の仮想マシンを Cross-Cloud vMotion を使って移行していました。Cross-Cloud vMotion は vSphere Web Client から利用することができるため、利用に際し特別なインタフェースは必要ありません。VMworld のデモでも、vSphere Web Client から右クリックで Cross-Cloud vMotion を呼び出して実行しています。
Cross-Cloud vMotion は、Hybrid Cloud Manager のワークロードの移行機能を強力に補完するものです。顧客はクラウドへの移行に際し、マシンのアップタイムで妥協する必要は無く、全ての vMotion の特長が維持されます。このテクノロジーは、顧客に更なる柔軟性を提供します。
Content Sync
Project SkyScraper のもう 1 つの機能が、Content Sync 機能です。この機能を利用することで、顧客にオンプレミスのコンテンツ ライブラリを vCloud Air のコンテンツ カタログと同期できます。具体的には、VMのテンプレート、vApp、ISOイメージ、そしてスクリプトなどが含まれます。オンプレミスとクラウドの間でのコンテンツの一貫性あるものにし、間違いの多い手動での同期プロセスを無くすことができます。
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仮想インフラでの運用をガラリと変えた vSphere vMotion が、いよいよクラウドの壁を越えて実行できるようになってきました。ライブマイグレーションを用いてクラウドへの移行が行えるようになれば、既存のワークロードを容易にクラウドへ移行できるようになるなど、クラウドの使い方や運用方法を大きく変えることは間違いありません。
VMware のハイブリッドクラウド技術の更なる進化にぜひご期待いただければと思います。