vSphere vSAN

vSphere 5.5 の新機能紹介 VMware Virtual SAN その2

前回その1でVirtual SANの概要と構築方法についてご説明しました。今回はその続編として、ポリシーベースのストレージ管理とそのポリシーを利用したVirtual SANデータストア上への仮想マシンの作成についてご説明します。
※このポリシーベースのストレージ管理は、Virtual SANに限った物ではなく、今後提供されるストレージの機能で実装することを予定しています。

ストレージポリシー

ストレージポリシーとは、VMwareがSoftware-Defined Storageで定義している重要な仕組みの一つで、ストレージの可用性、パフォーマンス等のSLAをストレージの機能と連携しながらポリシーで管理していく仕組みを提供するものです。ポリシーベースのストレージ管理には大きく3つの領域があります。

1. ストレージが有する機能及び通知する領域
ストレージが機能として包含しその機能を外部に対して公開する領域です。
2.ポリシーテンプレートを扱う領域
上記したストレージプロバイダに基づきポリシーのテンプレートを作成する領域です。
3.テンプレートを仮想マシンに適応する領域
作成されたテンプレートを仮想マシンに適応する領域です。適応されたテンプレートはストレージ側で理解され、仮想ディスクがポリシー(SLA)に従って配置されることになります。
それぞれの領域を順を追ってご説明します。
1. ストレージが有する機能及び通知する領域
この領域には実装方法が大きく2つあります。
ストレージ自身が機能として実装
ストレージが実装している機能を自身で外部公開するもの。上記例では、ストレージが有する可用性99.99%、パフォーマンス100K IOPSを外部に公開している部分となります。外部公開には、ストレージプロバイダ* という仕組みを利用します。Virtual SANもこの機能に対応しています。
ユーザにより手動で定義される物
上記がサポートされていないストレージの場合、ユーザー側でタグという形で定義することが可能です。例えばSSDで構成されたデータストア(群)をPlatinum、SATAで構成されたデータストア(群)をBronzeとしてタグ付けすることが可能です。ストレージプロファイルに比べると限定的な定義しか出来ず、どちらかというとデータストアをTire化+グルーピングして管理という利用法になります。
Virtual SANでは、ストレージプロバイダを利用することにより以下の5種類の定義を行うことが可能です。
・許容される障害数(デフォルト:1 最大:3)
1つのストレージオブジェクトについて許容されるホスト、ネットワーク、およびディスク障害の数を定義します。指定した値+1 個の仮想ディスクが作成されます。
・ストライプ数 (デフォルト:1 最大:12)
単一のVMDKをストライピングして書き込むHDDの数を定義します。
・領域の予約 (デフォルト:0% 最大:100%)
Virtual SANでは仮想ディスクは Thin Provisioningでデプロイされます。領域を確保したい場合は、ここで値を指定します。設定した値(割合)が vmdk に対し Virtual SAN内で予約されます。
(例)50%設定の場合、10GBのVMDKファイル作成の際に5GB分が予約されます。
・フラッシュ読み取りキャッシュの予約 (デフォルト:0% 最大:100%)
読み取りキャッシュ用に予約したい場合に指定します。
・強制的なプロビジョニング (デフォルト:無効)
「はい」を指定すると、Virtual SANデータストアが仮想マシン作成ポリシーの要件を満たさない場合でもプロビジョニングされます。
※設定を変更する場合は、機能と影響範囲を良く理解した上で実施する必要があります。例えばストライプ数は、アプリケーション要件がSSD1台のパフォーマンスを超えない場合、デフォルトの1(ストライプ無し)に設定することをお勧めします。ストライピングによる無用なVirtual SANネットワークへの負荷発生を押さえるためです。
※ストレージプロバイダに関して
ストレージの機能をvCenter Server側から利用するためには、ストレージプロバイダをvCentere Serverへ登録する必要があります。この登録作業は通常手動で行う必要がありますが、Virtual SANの場合はVirtual SANの有効化と共にストレージプロバイダが自動登録され利用可能となります。このため、Virtual SANでは、ストレージプロバイダを手動で登録する必要はありません。

自動的に登録されたVirtual SAN用ストレージプロバイダ
2.ポリシーテンプレートを扱う領域
Virtual SANだけではありませんがポリシーテンプレートを作成するには、以下のように行います。まず、ホーム画面より仮想マシンストレージポリシーアイコンをクリックします。

「ベンダー固有の機能に基づくルール」でVSANを選択すると、先ほどの5個のポリシーがプルダウンで表示されます。この中で最低 1 つのポリシーを定義します。

例えば、オブジェクトあたりのディスクストライプ数:1 / 許容する障害の数:1 等を指定してポリシーの作成が可能です。ウィザードを複数回繰り返すことにより、複数のポリシー作成も可能です。
下記は、ポリシーを3個作成した時の例です。

3.テンプレートを仮想マシンに適応する領域
2で作成したポリシーを適応して仮想マシンを作成します。具体的には、仮想マシン作成ウィザードの中のストレージの選択画面で、仮想マシンストレージポリシーを選択することにより、ストレージポリシーを適応した仮想マシンの作成が可能です。

Virtual SANでは、Thin Provisioningでデプロイされます。このためディスクタイプは定義済みとなっており、変更することは出来ません。

仮想マシン作成後、仮想ディスクがどのホストに配置されたかを確認することも可能です。例えば、ストライプ数2、許容する障害数1で仮想マシンを作成したときのディスクの配置は以下のようになります。

これでVirtual SAN上に、ポリシー通りに仮想マシンを配置することが出来ました。
次回、その3では、Virtual SANでの読み込み、書き込みの動作やホスト障害時の動作についてご説明したいと考えています。