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vSphere 5.5 の新機能紹介 VMware Virtual SAN その1

このBlogは製品出荷前の情報を含みます。出来る限り正確な情報をお伝えするよう努めておりますが、実際に出荷される製品に搭載される機能や表示と異なる可能性があります。今回ご紹介するVirtual SANのステータスは 2013年 10月末現在 Public Beta であり、実環境での利用はサポートされません。また、最大構成や構成上の制限等は将来変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

Virtual SAN の特徴

今回ご紹介するVirtual SANは、従来のvSphereのストレージ概念とは全く異なる、拡張性に富んだストレージの新機能です。VMwareがSoftware-Defined Storage で定義しているポリシーベースでの管理もサポートしています。主な特徴を下記します。

1. ローカルディスクを利用した共有ストレージ
Virtual SANの最大の特徴は、各ホストに分散配置された内蔵ストレージを集約し、各ホストから利用可能な1つの共有ストレージとして提供することです。ホスト内蔵の安価で大容量な SAS/SATA の磁気ディスクと高速な SSD を組み合わせた、大容量かつ高速・低遅延な共有ストレージ領域を提供します。
2. 仮想ディスクレベルで設定可能なSLA
Virtual SANは従来のLUN+VMFSではなく仮想ディスクを直接オブジェクトとして管理します。このため、従来、LUN毎にしか定義できなかったパフォーマンスや可用性が仮想ディスク毎に定義可能となります。
3. 拡張が容易なスケールアウト型のストレージ
上記にも関連しますが、ホストの追加と共にデータストアも拡張される分散スケールアウト型のストレージです。
4. ポリシーベースのストレージ管理
仮想環境が大規模化してくるとストレージもTierの管理が必要となってきます。その際、従来行っていたストレージの物理構成(Raidの種類、デバイスの種類、プロトコルの種類)に基づいた手法では管理が煩雑となります。そこで、Virtual SANでは、可用性やパフォーマンスなどのポリシーをベースとしたストレージ管理手法を提供します。

Virtual SAN構成要素

Virtual SANは、SSDとHDDを有する3台以上のホストと、そのホスト間を接続する Virtual SANネットワークで構成されます。構成要素は下記の通りです。

・Virtual SANネットワーク
ホスト間のストレージプロトコルの転送を担当します。通信速度としては、1Gbps 及び、10Gbps の両方をサポートしています。*
・SAS/SATAコントローラ
SSDやSAS/SATAのHDDを接続するためのストレージコントローラです。Raidコントローラではパススルーモード、または、HBAモードをサポートしている必要があります。
・SSD
ホストに搭載する、SAS/SATA/PCIeのデバイスを利用します。SSDは恒久的なデータの置き場所ではなく、リードキャッシュ、ライトバックキャッシュとして利用されます。このSSDのパフォーマンスが、Virtual SANデータストアのパフォーマンスに大きく影響します。
※Virtual SANとして定義したSSDデバイスは、VMFS/vSphere Flash Read Cache/ホストスワップ領域として利用出来ません。
・磁気ディスク(HDD)
仮想ディスクを恒久的に保存する領域で、Virtual SANデータストアの容量を構成する部分となります。SSDでキャッシュミスした場合の読み出しと、SSDにライトバックされた書き込みキャッシュを最終的にディステージする領域を提供します。
※ESXiをインストールしたHDDデバイスはVirtual SAN用のHDDとして利用出来ません。
・ディスクグループ
SSDとHDDは個別にVirtual SAN領域に追加されるのではなく、ディスクグループとしてまとめてVirtual SAN領域に組み込まれます。1 つのディスクグループには必ず1台のSSDと、1~6台のHDDが含まれます。ディスクグループはホストあたり最大5個作成可能です。このため、ホストあたり、SSDは最大5台、HDDは最大30台までVirtual SANでの利用が可能となります。
※Virtual SANネットワークには10Gbpsを強く推奨します。理由は以下の通りです。
Virtual SANでは仮想マシンのvmdkを配置したホストと、仮想マシンが稼働するホストが同一ホストであるとは限りません。また、レプリカの作成やストライピングデータ転送に伴い、Virtual SANネットワークには多量のトラフィックが発生する可能性があります。現行のSATA SSDが6Gbpsインターフェイスを備えていることから考えても、1GbpsのVirtual SANネットワークではパフォーマンス上のボトルネックが生じる可能性が高いというのがその理由です。

Virtual SAN 全体イメージ

・Virtual SANデータストアは、1 つの共有データストアとして各ホストからアクセスが可能です
・仮想ディスクを配置するホストと、仮想マシンが稼働するホストに依存性はありません
vMotion での移行も通常の共有ストレージ同様自由に行うことが出来ます
・各仮想ディスク単位で可用性やパフォーマンス等のポリシーを定義することが出来ます
例えば、下記例では、緑の仮想ディスクは3面ミラー、濃い青の仮想ディスクはミラーとなっています

Virtual SAN の構築

Virtual SANの構築は極めて簡単です。以下手順を示します。
なお、この作業はc#版のvSphereClientからは実行できません。vSphereWebClientをご利用下さい。
1. Virtual SANネットワークの定義
Virtual SANを利用するにはまず、各ホストに対し、Virtual SANネットワークの定義を行います。

2. Virtual SANの有効化
Virtual SANはクラスタ単位で有効/無効の設定を行います。有効化の際のオプションとして、以下の二つがあります。
自動・・・Virtual SAN有効化と同時にホスト内のSSDとHDDをVirtual SANデータストアとして自動的に追加
手動・・・Virtual SANを有効化するのみ。Virtual SANデータストアに追加するSSD、HDDは別途手動で設定

3. ライセンスキーの入力
Virtual SANの利用にはライセンスキーの入力が必要です。VMwareが提供する他のアプリケーションのライセンスキーと異なり、クラスタレベルでライセンスキーを定義するところにご注意下さい。

※この設定を行わない場合、Virtual SAN構成を作成しても、Virtual SANデータストアの容量が”0”のままとなります。
4. Virtual SANで利用するSSD/HDDの選択(ディスクグループの作成)
手順2で手動を選択した場合、Virtual SANに追加するディスクを選択する作業が必要になります。
・ディスクグループの作成をクリックし、Virtual SANで利用するSSD 1 台と、HDD 1~6台を選択します。
・ディスクグループが複数ある場合は、上記作業を繰り返します。

選択されたディスクはVirtual SANに組み込まれ、Virtual SANクラスタに所属する各ホストから利用可能となります。
下記では、300GBのSATA HDD を搭載した4ホストでVirtual SANを構成した例を示します。

作成後のVirtual SANクラスタの拡張も簡単です。この場合、以下のような様々な方法がサポートされています。
・既存のディスクグループへのHDDの追加・・・容量の拡張
・既存のホストへのディスクグループ(SSD+HDD)の追加・・・IOPSと容量の拡張
・新規ホストとディスクグループの追加・・・IOPS、容量とホストリソースの拡張
また、ディスクの追加を伴わなず、ホストのみVirtual SANクラスタへ追加することも可能です。このようにVirtual SANは必要なリソースを柔軟に追加・拡張することが可能です。
次回、Virtual SANがサポートする仮想マシンストレージポリシーについてご説明します。