2013年8月26日に「VMworld 2013 San Francisco」で、vSphereの次バージョンとなる、VMware vSphere 5.5(以下vSphere 5.5)が発表されましたので、こちらのバージョンで追加された新機能・特徴の概要をご紹介します。
ただしこのBlogは、製品出荷前のバイナリ及びマニュアルを参照して記載しています。出来る限り正確な情報をお伝えするよう努めておりますが、実際に製品に搭載される機能や表示とは異なる可能性があります。あらかじめご了承の上、ご利用下さい。
1. Client
クライアントにつきましては、vSphere 5.1よりWeb Clientが大幅に機能強化されており、新機能に関してはWeb Clientにしか実装されておりませんでした。
この考え方は、vSphere 5.5に関しても同様となっております。
新機能部分としては、以下となります。
- Web Clientでのオブジェクトのドラッグ&ドロップが可能
- Web Client SDKによるカスタマイズ
- vSphere Web Client でのOS Xサポート
- クイックフィルター機能
- ナビゲーションの利便性向上
- 最近アクセスしたオブジェクト/新規オブジェクトの表示
2. ストレージ
ストレージとしては、下記の機能追加/強化があります。
注目すべき新機能としては、「Virtual SAN(以下VSAN)」と「vSphere Flash Read Cache (以下vFlash)」の2点大きな機能が追加されました。
i. VSAN
内蔵のHDD及び、SDDを共有ストレージとして利用することが可能となります。
この機能により共有ストレージが無い場合でも、vMotion、DRSおよびHAのような既存のVMwareのソリューションと連携が可能です。
ただし、VSANはvSphere5.5では「パブリックベータプログラムとして提供」となりますので、利用の際は注意が必要となります。
代表的な特徴として、以下があります。
- vSphereに完全に統合されたストレージソリューション
- 「サーバー内蔵HDDとSSD」を利用した、低価格の階層型ストレージで、サーバー間でのデータリプリケーションにより冗長性を提供
- ポリシーベースの採用により、VMの配置決定を簡素化
- ESXiによりデータのレプリケーションを提供することにより、冗長構成可能
- サーバ増設により、スケールアウトするストレージシステム
ii. vSphere Flash Read Cache
vSphere 5.1 まで、ESXiのVMkernelのスワップ領域として利用可能であった、サーバ内蔵のSSDが仮想マシン毎に対しても、キャッシュ領域として利用可能となりました。
この機能を利用した場合でも、vMotion、DRSおよびHAのような既存のVMwareのソリューションと連携が可能です。
iii. VMFS、NFS、仮想互換RDMで62TBまでのVMDKに対応
iv. VAAIでのUNMAPサポート
3. ネットワーク
ネットワークの機能拡張は下記となります。
ⅰ.LACP の拡張
・・・vSphere 5.1 での構成上の制約が緩和され柔軟なネットワーク構成が可能になります。
ⅱ.トラフィックのフィルタリングと、QoS マーキング
・・・入出力トラフィックのフィルタリングと、QoS マーキングが可能になります。
ⅲ.パケットキャプチャ
・・・様々なレベル(vNIC, vSwitch, アップリンク)でのパケットキャプチャが可能になります。
ⅳ.SR-IOV
・・・SR-IOV の設定が、ポートグループのプロパティとしてパススルーNIC に適用されます。
ⅴ.40 Gb NIC
・・・Mellanox の40 GB NIC をサポートしホストが使用できる帯域幅を拡張します。
4. ESXi/vCenter
i. ホスト1台あたりの構成上限が拡張されます。
vSphere5.1 | vSphere5.5 |
---|---|
160個の物理CPU | 320個の物理CPU |
2TBのメモリ | 4TBのメモリ |
8個のNUMAノード | 16個のNUMAノード |
2048個の仮想CPU | 4096個の仮想CPU |
ii. Reliable Memoryのサポート※
・・・ハードウェアによりマップアウトされたメモリをESXiが認識し、その領域にアクセスしないようにするため、「メモリ障害」が原因となるPSODを軽減します。
※2013/9/26追記:こちらの機能は、ハードウェア側でのサポートが必要となります。
詳細は互換性ガイドを参照ください。
iii. AMD、IntelのGPUサポート追加
・・・GPUの利用で仮想マシンのハードウェレンダリングとGP-GPUをサポートします。
iv. PCIe SSDのHot-Pluggleサポート
・・・ダウンタイムなしで SSD デバイスをホット アド / ホット リムーブを提供します。
ⅴ-ⅰ.vSphere AppHA
・・・アプリケーションダウンタイムを最小化します。
v-ⅱ. vSphereHAの改善
-
- アドミッションコントロール(改善)・・・アンチアフィニティルールを反映し、同一ホストに再起動させないようにします。
vi. vSphere Replication
- レプリケーション先は、vCenter Server 1 台あたり最大 10 か所まで、可能となります。
- 複数の復帰ポイントの保持可能となります。
- Storage DRSとの互換性が提供されます。
vii. MSCS Clustering利用時の機能強化
- FCoE と iSCSI の各プロトコルをサポートします。
- FCoE Hardware Adapters・・・ラウンドロビンマルチパスポリシーに対応します。
viii. vCenterServer組み込みデータベースのスケーラビリティ (vPostgres)
・・・最大 100 台の vSphere ホスト / 3,000 台の仮想マシンをサポートします。※
※2013/10/6修正
ⅸ. リアルタイムアプリケーションへの対応機能 ・・・ 仮想マシン毎にLatency Sensitivity(待ち時間感度)を設定することにより、物理環境に近いパフォーマンスにすることが可能です。
5. 仮想マシン
- ハードウェアバージョンのアップデート(ESXi 5.5以降:Virtual Hardware version 10)
- ゲストOSサポートの変更・・・いくつかの、ゲストOSのサポート終了します(詳細はvSphere5.1 リリースノートを参照ください)
6.VDP(VMware vSphere Data Protection)
- vCenter Serverに依存せず、ESXiホストを利用して仮想マシンのリストアが可能となります。
- VMDKファイル単位での、バックアップとリストアが可能となります。
- バックアップスケジュールの設定が可能になります。
- クラウド環境へのバックアップが可能となります。
次回から、各機能の詳細な情報をご紹介したいと思います。