VCF9で完遂するメインフレーム・モダナイゼーション
第一回:2026年、メインフレーム・モダナイゼーションの現在地 メインフレーム(汎用コンピュータ)は、日本の社会インフラや主要企業の基幹業務システムにおいて、長年にわたり高い堅牢性と信頼性を提供してきました。IBMのz/OS、富士通のXSP/OSIV、NECのACOSなど、各社が独自に発展させたプラットフォームは、現在も重要インフラを支えています。しかし2026年現在、主要メーカーによるメインフレーム事業の撤退・サポート終了方針の提示、および保守を担うベテラン技術者の定年退職によるスキル継承の限界から、事業継続上の実害を伴う課題が顕在化しています。 こうした状況下において企業に求められるのは、単なるシステムの延命ではなく、自社のデータに対する統制(データ主権)を維持し、将来的なデータ活用を見据えたシステムアーキテクチャの再設計です。 本稿では、メインフレームのモダナイゼーションにおける選択肢として、オンプレミス環境や各種クラウド基盤の特性およびリスクを比較・整理することで、失敗しない移行への第一歩を考えます。 1. 確実性を高めるアプローチとインフラの選択肢 メインフレーム脱却において重要な検討事項は、移行後におけるシステム性能、可用性、セキュリティなどの非機能要件の維持です。 プログラム言語の変換のみでは、基幹システムとしての要求水準を満たすことはできません。この課題に対して、VMwareのTanzuアーキテクチャチームが公開している技術指針(An Architecture Path to Mainframe Modernization)では、一括刷新(ビッグバン移行)に伴う処理結果の不一致や障害リスクを回避するため、段階的な移行手法が推奨されています。具体的には、アプリケーション層において、現行システムを稼働させながら、重要な機能やデータを単位ごとに新環境へ段階的に移行する手法(Stranglerパターン)を適用します。そして、それを受け止めるインフラ層として、自社統制が可能なVMware環境上のLinux基盤を採用することにより、既存のビジネスロジックを活用しつつ、メインフレームと同等の応答性や可用性を維持することが可能となります。 一方で、パブリッククラウド各社が公開している情報をもとに直接パブリッククラウドのネイティブ環境へ移行するルートを検討する企業も少なくありません。パブリッククラウドは最新のAI機能や外部サービスと手軽に連携できるメリットがありますが、基幹システムをそのまま持ち込む際には把握しておくべき現実的な注意点があります。 共有環境(マルチテナント)における非機能要件の課題 他社と物理リソースを共有する構成では、ミリ秒単位の低遅延処理や、他システムの負荷影響を排除したリソース隔離の再現が困難です。 専用(占有)環境におけるコストおよび為替リスク 上記の課題を回避するために占有環境を採用した場合、初期費用および運用費用が高騰しやすくなります。また、サービス特有のドル建て課金体系により、為替変動(ドル高・円安)や国際情勢の影響を受けて中長期的なインフラコストが不透明化するリスクがあります。 データ主権に関わるリスク 米国クラウド法(CLOUD Act)に基づく国外法執行機関からのデータアクセス要求の可能性や、暗号鍵の管理権限を事業者に依存することによるデータ閲覧リスクなど、データ統制上の課題が生じます。 現在では、オンプレミスの堅牢性とクラウドの柔軟性を両立させるアプローチとして、国内事業者によるソブリンクラウドや、ハイパースケーラー上で展開される専有VMware基盤(VMC...