図1.物理環境と仮想環境でのリソース使用の比較
vSphere

新卒 SE 社員が贈る vSphere のキソ! 第7回 ~ 仮想環境となが〜くお付き合いしていくために ~

こんにちは! とうとう本連載もラストとなってしまいました。 新卒 SE 社員が贈る vSphere のキソ! 第7回は私、川崎( Kawasaki )が担当致します。 今回は、「仮想環境となが〜くお付き合いをしていく」をテーマといたしまして、 VMware vRealize Operations Manager (以下 vR Ops)という製品をご紹介して参ります。

〜仮想環境と長くお付き合いする為に…〜

はじめに、環境の運用管理とは何ができれば上手く行えていると言えるでしょうか。状況を正確に把握し、効果的なアクションをとり、より少ないコストで効率的にパフォーマンスを高く維持できれば、良い運用が行えていると言えるのではないでしょうか。この「状況を正確に把握する」という部分が、物理環境から仮想環境へ移行した際に少し難しくなるポイントです。

図1.物理環境と仮想環境でのリソース使用の比較
図1.物理環境と仮想環境でのリソース使用の比較

本連載の過去の記事でも触れておりますが、仮想環境ではリソースが仮想化され、複数のOSで同一の物理ホストのリソースを共有します。また、物理ホスト間でもリソースをプール化して、全体としての最適な利用が行える点を紹介して参りました。
仮想環境ではゲストOSから見てリソースの使用率が高くないか、だけではなく、他のOSとはリソースの取り合いによるパフォーマンス低下はどれほどか、物理サーバ間でのリソース融通による最適化の機会はないか、といったことも考える必要があります。実際、既に仮想環境をご利用いただいているお客様の中にも、管理に課題を感じていらっしゃる方は多く、以下のようなお声を頂いております。

    1. 公共系 A機関 ご担当者様

「どの物理サーバでどの仮想マシンが稼働しているかをExcelで管理していましたが、何かが起こった際の影響範囲の特定が非常に困難でした。また、一部のシステムでパフォーマンスが落ちてきた場合に、リソースが不足しているのか、アプリケーションに問題があるのかなどの切り分けが困難で、原因究明までにかなりの時間を要していました。」

    1. メディア系B社 ご担当者様

仮想マシンの配置やキャパシティプランニングはすべてExcelを使って手作業で行っており、非常に手間がかかっていました。さらに仮想マシンで必要となるリソースの割り当てについても、妥当性の基準が明確化されておらず、システムの健全性やリソース配分の効率性を評価できていませんでした。」
これらのお客様には、vR Ops を導入いただき、こういった課題の解決に役立ていただきました。まずは、vCenter と vR Ops での管理方法を比較することで、vR Ops はどのように役に立つのか見ていきましょう。

〜vCenterのみでOK?〜

vCenter のみの場合と vR Ops も利用した場合、どのように変わるか、参考ケースを見ながら比較していきます。
≪参考ケース≫
IT管理者のAさんは、 vSphere をベースとした仮想環境の管理を任されています。担当している物理サーバの数は20台ほどですが、仮想マシンのパフォーマンスが悪い場合には、まずAさんが問題を切り分けて、必要に応じてネットワークやストレージ、アプリケーションの各担当者に連絡して対処をお願いしています。
物理から仮想に移行したことで、追加のハードウェアなしにサーバ数を増加させることができ重宝していますが、最近仮想マシン数の増加とともに環境が複雑になり障害原因の特定に時間がかかるようになってきました。また、来年の予算を考えるにあたって追加リソースの申請が必要ですが、仮想マシンごとに負荷も違うためどう考えればいいかわかりません。

  • 障害原因の特定

ここでは、障害原因の特定を行う際を例にとり、管理方法の変化を見てみます。障害の発生を確認した場合の対処までの流れについて、vCenter Server のみを用いた場合と、vR Ops を用いた場合を比較します。全体の流れの一例を示したのが、図2です。

図2.障害対応方法の違い:vSphere Web Client と vC Ops
図2.障害対応方法の違い:vSphere Web Client と vC Ops

vCenter Server の管理画面である vSphere Web Client や vSphere Client からもホストや仮想マシンに関する様々な情報を収集することは可能です。しかしながら、その情報は多岐にわたるため、広範囲な参照先から得た情報を管理者が統合して判断に結び付ける必要があります。一方で、vR Ops を用いた場合には、障害の監視、関連オブジェクトの参照、各オブジェクトの詳細情報が一括して得られるような設計となっているため、管理者の判断を助け、対処にとりかかるまでの時間も短縮できます。

  • キャパシティ管理

次に、リソースを追加する際の容量計算の流れを例に、キャパシティ管理方法の違いを見ます。同様に vCenter Server のみを用いた場合とvR Ops を用いた場合を比較します。(図3)

図3.キャパシティ管理方法の違い:vSphere Web Client と vC Ops
図3.キャパシティ管理方法の違い:vSphere Web Client と vC Ops

vCenter Server を用いた場合、多くの状況ではそのデータをExcel等で集計しなおすことが多いのではないでしょうか。ホストや仮想マシンの割り当て容量をExcelに集計し、vCenter Server で得られるパフォーマンス情報とユーザーからのヒアリングを元に適切な容量を考えます。
そして、それをもとにキャパシティ不足の仮想マシンや追加の仮想マシン用のリソースを計算します。このような流れの問題点は、Excelでの管理に時間がかかる点、また、本当に必要な容量を知ることはかなり困難で、結局のところ安全策として必要以上のリソース割り当てとなりがちな点です。
一方で vR Ops を用いた場合には、現状の把握はダッシュボードから一目瞭然で、適切な容量の計算も、ホストとしては残り容量の表示が、仮想マシンとしてはサイジングの過不足に関する表示があり、クリックするだけで、一覧で見ることができます。
また、追加リソースに関しては、推奨されるオーバーコミット率に従って考え、実際に任意のサイズの仮想マシンとリソースを追加して試算を行うことで、必要な容量であることを簡単に知ることができます。最後にこれらの情報をファイルとして出力して説明の根拠とすることができます。

以上まとめますと、vCenter Server のみを用いた仮想環境の管理では、以下の2つの課題がありました。
①  vCenter Server だけでは長年の経験と専門スキルを要する (工数と時間がかかる理由)
② 運用メンバーの管理手法が属人化している (人手で集約・集計している結果)
そしてこれらの課題を vR Ops は次のように解決します。
①  vR Ops 上の表示の確認で済む (工数と時間を短縮)
②  vR Ops が自動で集計・分析する (工数の削減と根拠の明確化)

〜vRealize Operations Managerの概要〜

それでは、 vR Ops自体の説明に入って参ります。はじめに、 vR Ops を導入した場合の環境構成から説明いたします。 vR Ops は1つの仮想アプライアンスが展開され、 vCenter Server から収集したデータを解析し、表示します。(図4) vCenter Server は一つまたは複数を対象とすることができます。

図4.vCenter Operations Manager の構成
図4.vCenter Operations Manager の構成

集めたデータは、 vR Ops で解析されます。この解析により、各リソースの数値データは単にグラフ化されるのではなく、仮想環境は良いパフォーマンスを発揮しているのか、何かとるべきアクションはあるのか、といった管理者にとって役立つ情報として表示されます。ダッシュボードと呼ばれる vR Ops の基本画面は以下のような見た目となっております。(図5)

図5. vC Ops ダッシュボード画面
図5. vC Ops ダッシュボード画面

このダッシュボード画面は、左から“健全性”、“リスク”、“効率”の縦3列に分かれており、それぞれ以下のような内容を表しています。

  • 健全性  :「現在の状況」    障害やパフォーマンス低下について
  • リスク    :「将来の予測」    = 今後のパフォーマンス低下要因はないか、リソースは十分か
  • 効率     :「構成の最適化」         = 構成を変更することで、リソース節約の可能性はあるか

これらの指標(“バッジ”と呼びます)によって、管理者はひと目で環境の特徴を把握できますし、必要であれば詳細な情報も掘り下げて見ていくことも可能です。例えば、ある仮想マシンについて性能劣化の要因を調べる際には、関連するオブジェクトを一括して表示することで、どこに原因があるか突き止める大きな助けとなります。(図6)

図6.関連するオブジェクトを一括表示
図6.関連するオブジェクトを一括表示

また、個別のオブジェクトに関してそれ自体の情報を詳細に見る、という意味では、図7のような画面から確認できます。

図7.個別オブジェクトの詳細情報表示
図7.個別オブジェクトの詳細情報表示

他にも vR Ops では俯瞰的な見方から、詳細に特化した見方まで、情報の表示のされ方は豊富に用意されています。これにより、実際の運用管理の場面でも、その時々の目的に応じた情報を得ることが可能となります。   このような vR Ops の機能は、評価版を展開して実際にご使用いただくことで、さらによく確認していただけます。評価版のインストールガイドは操作ガイドとともにリンク先の記事にございますので、ぜひご活用ください。
http://blogs.vmware.com/vmware-japan/2014/07/vcops_operations_guide.html
vR OpsとvSOM〜
vSOM という製品をご存知でしょうか? vSOM は、「 VMware vSphere with Operations Management 」の略で、 vSphere と vR Ops のスタンダードエディションが合わさったものになっています。(図8)vR Ops のライセンスは通常「25仮想マシン数単位のライセンス」に対し、 vSOM のライセンスは vSphere 同様CPU単位のライセンスとなります。したがって、vC Ops を利用される際に、「仮想マシン数が将来増加する可能性もあるなぁ…」という場合には、vSOM を入手することで仮想マシン数を意識する必要はなくなります。

図8.vSOM は vSphere と vC Ops のセット製品
図8.vSOM は vSphere と vC Ops のセット製品

詳細は弊社ウェブページをご覧ください。(http://www.vmware.com/jp/products/vsphere-operations-management/

〜第7回まとめ〜

vRealize Operations Manager を紹介して参りましたが、いかがでしたでしょうか?本製品のことが少しでも理解され、使うことによるメリットも感じていただけましたら幸いです。こちらの製品は、ハンズオンラボでも体験可能ですので、ぜひお試しください。(http://labs.hol.vmware.com/HOL/catalogs/  ラボ番号:HOL-SDC-1401)

〜本連載まとめ〜

さて、本シリーズは「新卒 SE 社員が贈る vSphere のキソ!」と題しまして、4名の新卒SEにより全7回でお贈りして参りました。”新入社員の目線”として先輩SEの皆様とは多少異なるテイスト?で連載して参りましたがいかがでしたでしょうか?何はともあれ、本シリーズを通じて少しでもVMware製品の理解を深めていただけましたらとても嬉しいです。
私どもは今年の4月に入社しほぼ知識がないところからのスタートでした。VMwareに関する勉強には少なからず苦労しておりますが、わかってくると楽しく、ついつい時間が過ぎてしまうこともしばしばです。今後初めてVMwareを導入されるユーザ様や提案されるパートナー様におきましては、新しい概念や用語で苦労されるかもしれません。
その際は本連載を読み返していただくと幸いです。私たち自身も日々勉強することも多いですが、皆様のご指導も受けながら一緒に盛り上げていけましたらとても嬉しく思います。vForum 2014でもセッションを持ちますので是非お越しください!
最後になりましたが、お読みいただき誠にありがとうございました。
VMware新卒社員 SE 氏田裕次/川崎一青/椨木正博/野田裕二
新卒 SE 社員が贈る vSphereのキソ!
第1回 vSphereを俯瞰する
第2回 仮想環境におけるネットワークとストレージ
第3回 vMotionとvSphere HA/vSphere FTの違いとは?
第4回 仮想マシンの配置管理はDRSにお任せ!
第5回 様々な仮想マシンが混在&混雑しても大丈夫!?ネットワーク と ストレージの帯域を維持する仕組み
第6回 vSphere でココまでできる!データ保護
第7回 仮想環境となが〜くお付き合いしていく
第8回 ( 追加編 ) まだまだあった!ストレージ関連機能