共有カタログに対する組織単位でのアクセス制限
vSphere

VMware vCloud Director 5.5 – 新機能紹介

このBlogは、製品出荷前バイナリ及びマニュアルをベースに記載しています。出来る限り正確な情報をお伝えするよう努めておりますが、実際に製品に搭載される機能や表示と異なる可能性があります。あらかじめご了承の上、ご利用下さい。
今回は、VMware vCloud Director 5.5で追加された主な新機能についてご紹介します。


vCloud Director 5.5では、大きく以下の3つのカテゴリについて機能向上及び追加がなされています。
■カタログ機能

  • 共有カタログに対する組織単位でのアクセス制限
  • 複数のvCloud Directorインスタンス間でのカタログの公開/購読
  • カタログ内のコンテンツに対する自動バージョン付け
  • 任意のファイル形式のサポート

vAppの展開及びライフサイクル管理

  • テンプレートからのvAppの展開時における仮想マシンハードウェア設定の編集
  • vAppテンプレートレベルでのゲストOSのカスタマイズ設定の編集(※)
  • 実行中の仮想マシンにおける仮想NICの追加、取り外し、接続及び切断(ホットアド/リムーブ)
  • 実行中/サスペンド中のvApp/仮想マシンのメモリ状態を含むクローンの作成
  • vAppの(カタログを介さない)直接展開及びエクスポート
  • OVAファイル形式のサポート

追加サポート

  • vCloud DirectorセルのオペレーティングシステムとしてCentOSのサポート
  • Google Chrome Webブラウザのサポート
  • Mac OS Xにおける仮想マシンコンソールアクセスのサポート

※注意事項:

「vAppテンプレートレベルでゲストOSのカスタマイズ設定を編集できる」機能は、本ブログ執筆時点では急遽リリース見送りになっています。この決定は各種デモやホワイトペーパーの作成後になされたとのことで、所々で言及されているケースがあります。この機能のご利用を検討されていた場合は、vCloud Director 5.5ではリリースされない予定ですのでご注意下さい。
詳しくは、以下のブログエントリの内容もご確認下さい。

A Summary of What’s New in vCloud Director 5.5
http://blogs.vmware.com/vsphere/2013/09/a-summary-of-whats-new-in-vcloud-director-5-5.html
また、前バージョンと同様にvCloud Directorセルの仮想アプライアンス(SLES 11 SP2ベース)も提供されますが、vCloud Director 5.5においてもPoC/評価目的限定での使用を想定しております。本番環境での使用はサポートされません。
■カタログ機能の向上
1. 共有カタログに対する組織単位でのアクセス制限
組織間でのカタログ共有機能は以前から存在していましたが、これまでは「すべての組織に発行(shared)」か「その他の組織にこのカタログを発行しない(nonshared)」のいずれかを選択することしかできませんでした。vCloud Director 5.5では、ユーザがカタログを共有する「特定の組織」を明示的に選択することが可能になり、よりきめ細やかなアクセス制御を行うことができます。なお、vCloud Director 5.1では組織間でのカタログ共有を「公開」タブで指定していましたが、5.5では「公開」は次節で説明する複数vCloud Directorインスタンスを跨いだ組織間でのカタログ公開/購読(外部公開)の意味となり、共有する組織の指定はメンバーの追加と合せて「共有」指定の一部となっています。

共有カタログに対する組織単位でのアクセス制限

2. 複数のvCloud Directorインスタンス間でのカタログの公開/購読
vCloud Director 5.1以前のバージョンでは、複数のサイト(異なるvCloud Directorインスタンス)で同じ内容のコンテンツを利用したい場合、サイト毎にカタログを管理する必要があり、運用管理にコストがかかっていました。vCloud Director 5.5では、あるvCloud Directorインスタンスのカタログを外部に「公開」し、利用者側で公開されたカタログを「購読」することで、vCloud間でコンテンツを共有することが可能になりました。この公開/購読機能を利用することで、同一のvAppテンプレートやメディアファイルの運用管理が非常に簡素化されます。

カタログの公開/購読

カタログの公開側では「サブスクリプションURL」を生成し、オプションでパスワードによる保護が可能です。一方購読側では、カタログの新規作成時に外部カタログへのサブスクライブを選択し、購読対象のURLとパスワードを(オプションで)指定します。カタログのコンテンツはデフォルトでは購読時に完全同期し、以降はカタログの更新に合せて自動的に同期します。この動作は変更可能で、購読時にはカタログのメタデータのみを取得し、オンデマンドで同期させることもできます(大規模なカタログを購読する場合に特に有効)。

カタログの公開/購読(2)

また、サイト間のコンテンツのレプリケーションは、デフォルトではVMware独自プロトコルであるhttpsベースのVCSP(VMware Content Subscription Protocol)により実行されます。カタログの公開側では、同期対象のコンテンツをスプール領域に事前エクスポート(キャッシング)することで、同期処理が高速化されます。さらに、スプール領域のコンテンツに対して、VCSPの代わりにサードパーティ製レプリケーションツールを使用することも可能です。
3. カタログ内のコンテンツに対する自動バージョン付け
vCloud Director 5.5では、vAppテンプレートやメディアファイルを含むカタログ上のすべてのコンテンツに対する、シンプルな自動バージョン付け機能が追加されています。バージョン番号は、コンテンツをカタログに追加する際に割り当てられ、更新される度に自動的に加算されます。この機能により、これまでのようなファイルの命名規則ベースの煩雑な方法に代わるシンプルなバージョン管理が可能になります。

コンテンツの」自動バージョン付け

なお、更新の際にはコンテンツが旧バージョンから新バージョンに置き換わりますが、例えば変更履歴や更新者履歴などの(変更監査のための)情報は保持されません。
4. 任意のファイル形式のサポート
これまでのバージョンでは、vAppテンプレート(OVF)及び仮想マシンへのマウントを目的としたメディア(ISO、フロッピーイメージ)のみがアップロード可能でした。vCloud Director 5.5では、カタログが任意のファイル形式をサポートするようになりました。この機能により、例えばログファイルやWord文書、vCenter Orchestratorのワークフローなど、組織間やvCloud Directorインスタンス間での様々なタイプのファイル共有が容易になります。

任意のファイル形式のサポート

vAppの展開及びライフサイクル管理
1. テンプレートからのvAppの展開時における仮想マシンハードウェア設定の編集
vCloud Director 5.5では、カタログからvAppテンプレートを選択して新しいvAppを展開するタイミングで、仮想マシンハードウェア設定(CPU、メモリ及びハードディスク)をカスタマイズできるようになっています。これまでは、構成毎にvAppテンプレートを用意しておく(もしくは一旦展開した後に個別の仮想マシンに対するプロパティを編集する)必要があり、ストレージ容量やテンプレート管理のコスト、あるいは展開時の手間がかかっていました。この機能により、1つのテンプレートでの複数vApp構成への対応や、操作が簡単になります。なお、展開時に設定を変更した場合も、元のvAppテンプレートの設定情報は保持されます。

vApp展開時の仮想マシンハードウェア設定の編集

なお余談ですが、vCloud Director 5.5ではCPU数の設定でソケット及びソケットあたりのコア数の指定も可能になっています。
2. 実行中の仮想マシンにおける仮想NICの追加、取り外し、接続及び切断(ホットアド/リムーブ)
実行中の仮想マシンに対してハードディスクを追加、取り外し及び拡張する機能はvCloud Director 5.1で導入されましたが、vCloud Director 5.5では仮想NICのホットアド/リムーブ及び接続/切断の機能が追加されました。これによって、仮想NICの構成変更の際に仮想マシンをシャットダウンする必要が無くなり、ダウンタイムが短縮されます。

仮想NICのホットアド/リムーブ

制限事項として、実行中の仮想マシンのプライマリNICに対しては、削除やネットワーク・IPモードの変更操作を実行することはできません。また、スナップショットを含む仮想マシンに関しては、NIC構成の変更自体が不可となります。

スナップショットを含む仮想マシンのNIC構成

3. 実行中/サスペンド中のvApp/仮想マシンのメモリ状態を含むクローンの作成
vCloud Director 5.1までは、実行中の仮想マシンのメモリ状態を含んだスナップショットの作成のみが可能でした。実行中やサスペンド中の仮想マシン群をメモリ状態も含めてクローンしたり、テンプレートとしてカタログに登録する機能は、特にアプリケーション開発やテスト、トラブルシューティング環境において求められてきましたが、vCloud Director 5.5で実装されています。

メモリ状態を含むクローンの作成

なお、この機能を利用するためにはvCenter Server 5.5が必要となります。また、カタログからのエクスポートやvCenter Serverインスタンス間でコピーされる場合にはメモリ状態が失われます。
4. vAppの(カタログを介さない)直接展開及びエクスポート
これまで、vCloud Director環境上にvAppを展開する際には、事前にvAppテンプレートをカタログに登録しておく必要がありました。vCloud Director 5.5では、カタログを介すことなくOVFパッケージから直接インポートして展開することが可能になりました。これにより、ストレージ容量やvApp展開までの時間が削減できます。

vAppの直接展開

また、vAppをOVFまたはOVA(単一)ファイルとしてローカルに直接ダウンロード(エクスポート)することも可能になっています。

vAppのダウンロード

5. OVAファイル形式のサポート
vCloud Director 5.5では、これまでのOVF形式のファイルに加えて最近使用するケースが増えつつあるOVA(単一)ファイル形式にも対応しています。

OVAファイル形式のサポート

追加サポート
最後に、vCloud Director 5.5で新たに追加された主なサポート項目についてご紹介します。
1. vCloud DirectorセルのオペレーティングシステムとしてCentOSのサポート
vCloud Directorセルを構築する際には、これまでは商用OSであるRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のみがサポートされていました。vCloud Director 5.5では、これに加えてCentOS(V.6.1 – 6.4)がサポート対象として追加され、vCloud Director導入の際のコスト的な敷居が下がっています。
2. Google Chrome Webブラウザのサポート
これまでサポートされていたIE、Firefoxに加えて、Google Chromeブラウザのサポートが追加されています。
3. Mac OS Xにおける仮想マシンコンソールアクセスのサポート
これまで、Mac OS XではvCloud Directorの仮想マシンコンソールがサポートされておらず、Macユーザにとって不便な環境でした(WindowsやLinux環境を別途用意する必要があるなど)。vCloud Director 5.5では、Mac OS X上で利用可能なFirefoxおよびGoogle ChromeがHTML5ベースの仮想マシンコンソールをサポートしたことで、Macユーザに対するvCloud環境の利便性が高まっています。
なお、HTML5ベースの新しい仮想マシンコンソールの実装は、Mac OSのみで使用されます。Windows及びLinux環境では、従来どおりのVMRC(VMware Remote Console)プラグインが有効になります。また注意事項として、HTML5ベースの実装ではVMRCに比べて以下の機能制限があります。

  • デバイスのサポートなし(コンソールからのCD-ROMのマウント/アンマウント不可)
  • クリップボードのサポートなし(コンソールとの間でのコピー&ペースト不可)
  • コンソール上で自動的にマウスをつかむ/リリースする機能のサポートなし

まとめ
vCloud Director 5.5では、使いやすさ、機能性及び管理性の面で、大きく以下の3つのカテゴリについていくつかの重要な機能追加と向上がなされています。

  • カタログ機能
  • vAppの展開及びライフサイクル管理
  • 追加サポート

また、以下のホワイトペーパーも是非ご参照頂ければと思います。
What’s New with VMware vCloud Director 5.5
http://www.vmware.com/files/pdf/products/vCloud/Whats-New-VMware-vCloud-Director-55-Technical-Whitepaper.pdf