このブログでは、VMware Cloud Foundation® 9 (VCF 9)の新機能である VMware Cloud Foundation® Automation(VCF Automation) を複数回のテーマに分けてご紹介していきたいと思います。
第4部では、テナント分離を実現する「VPC(Virtual Private Cloud)」の重要性と、それを支える VCF 9 の次世代ネットワークアーキテクチャ(TGWやVPC GW、Aviロードバランサ連携など)について解説しました。ネットワークの設定変更も包含して、安全に担当者レベルに権限移譲(セルフサービス)できる仕組みをご紹介しました。
今回の第5部では、その強力なマルチテナント基盤の上で、「実際にアプリケーション開発者(アプリケーション管理者 / プロジェクトユーザー)がどのようなセルフサービス IaaS 体験を得られるのか」について、具体的な運用イメージを交えながら掘り下げていきます。
「チケットを起票してインフラが届くのを待つ」という従来の運用から脱却し、パブリッククラウドと同等のスピードと俊敏性をプライベートクラウドで取り入れる、開発者視点のモダンな活用例をご紹介していきます。
1. 開発者が主役となる「テナントポータル」
開発者が最初にアクセスするのは、プロバイダー管理者から個別に割り当てられた、自部門専用の「テナントポータル(ユーザービュー)」になります。全社共通の管理画面ではなく、自部門専用にブランドカスタマイズ(ロゴや名称など)されたシンプルなダッシュボードになります。

このポータルにおいて、開発者はログイン直後から以下のようなパブリッククラウドライクな利便性を享受できます。
📊 クォータ(リソース枠)の可視化
「自分が所属するプロジェクトで、CPU/メモリ/ストレージがあとどれくらい使えるか」がグラフィカルな円グラフ等で一目でわかります。これにより、リソース枯渇による予期せぬビルドエラーやデプロイ失敗を未然に防ぎ、効率的にシステム設計を行えます
🧩 プロジェクト単位のワークスペース
「開発環境」「ステージング環境」「本番環境」のように、プロジェクト単位で安全に分離された領域を自分で選択・移動できます。他のプロジェクトのVMや設定変更の影響を受けることは一切ありません
2. VMテンプレート選択による数クリックでのオンデマンドデプロイ
仮想マシンをポータル画面からサクッとGUIで作ってしまいたい、そうした開発者の方も多くいらっしゃいます。VCF Automation のテナントポータルでは、パブリッククラウドでVMスタックを構築していくかのような対話型GUIウィザードを提供しています。インフラ部門へのチケット起票なしに、開発者がポータル画面から直感的に以下のパラメータを決定し、カスタム仕様のVMを即座に作成できます。

これらのプロセスを実行中、インフラチームとのメール往復、調整、承認、構成の手作業は一切発生しません。開発者が「作成」ボタンをクリックすると、裏側でVCF Automation、vSphere、NSX、vSANがこれらの設計情報をオーケストレーションし、すべてのハードウェア、ネットワーク、ストレージがセットアップされ、OSの初期設定とロードバランサのプロビジョニングが完了したVMが数分で引き渡されます。まさに、オンプレミスのプライベートクラウドに組み込まれた、IaaSポータルと言えます。
3. Day 2 運用のセルフサービス化:作成後の管理もスマートに
インフラは「作って終わり」ではありません。開発における本当の苦労は、デプロイした「後」の変更や管理にあります。VCF 9 は、Day 2 運用(日々の維持管理業務)の多くをセルフサービス機能として開発者に開放しています。

開発者はポータル上の対象VMに対して、以下のアクションをセルフサービスで実行できます。
| セルフサービス機能 | セルフサービス操作 |
|---|---|
| オンデマンド・リサイズ | 「テスト中にメモリが不足した」といった場合でも、ポータルから CPU やメモリの割り当て量を自分でスケールアップ可能。IT部門への中間申請は不要に |
| スナップショット・復旧 | 大規模なライブラリ更新やコード適用を試す前に、自分でスナップショットを取得。もしエラーが発生してシステムが破損しても、即座に安全な時点へロールバック |
| リース期間・自動回収 | 「この VM は開発検証のため、30日間だけ使用する」といったリース設定が可能に。期間が過ぎると自動で削除され、放置リソースやコストの無駄遣いを未然に防ぎ、必要であれば、延長申請もポータルからワンクリックで実施 |
| メトリクス・コンソール監視 | CPU 使用率やディスク I/O、ネットワークトラフィックのグラフ、さらにはWeb ウェブコンソールを直接確認。インフラ起因のトラブルシューティングを開発者自身で完結 |
4. GUI から IaC へ:APIとTerraformによるモダンな開発スタイル
モダンプライベートクラウドを利用する開発者にとって、Web ブラウザでのクリック操作(GUI)が解決策ではなく、CI/CD パイプラインを回し、GitOps による宣言的な運用を行う開発チームにとっては、「インフラをコードで制御できること(Infrastructure as Code: IaC)」が必須の要件であることも多くあります。
VCF Automation は、GUI を介さずに、以下のような開発者フレンドリーなアクセス手段もネイティブに提供しており、開発者が活用することができます。
🛠️ Terraform プロバイダーによる自動化
Terraform を使って、VCF 9 ポータル上のカタログ項目をコードからデプロイ・管理できます。既存のパブリッククラウド向けに記述されたTerraformコードと同等の構成管理モデルを、オンプレミスのプライベートクラウドにシームレスにも適用していくような運用に活用
🔌 豊富な REST API と CLI
ポータル上のすべてのアクションは、セキュアな REST API として公開されています。GitHub Actions や GitLab CI などのCI/CDツールと連携させ、「アプリケーションコードがマージされたら、自動的に検証用VPCとVMを払い出して統合テストを実行し、テスト終了後に環境を破棄する」といった自動パイプラインをオンプレミスで実現
このように、VCF Automation がインフラをサービス(IaaS)として提供し、開発者により良い生産性を提供するような活用例もあります。ビジネスが求めるスピード感に合わせて、インフラ側もAPI主導(API-driven)のスピードで応答してけるような活用方法も提供されています。
第6回にむけて
開発者側の様々なセルフサービス体験はいかがでしたでしょうか。「こんなに自由にインフラを弄らせて、本当にセキュリティやシャドウIT、コスト高騰のコントロールはできるのだろうか?」と心配されたIT部門の方もいるかもしれません。
その懸念に対する答えこそが、次回の第6部で取り上げる「カタログ機能とポリシーエンジン」です。開発者へ「スピード」を提供しながら、IT部門が「的確なガバナンスとコストのコントロール」を維持するポリシー設計、そしてより良いモダンプライベートクラウドの姿ついて詳しくご紹介します。
VCF Automation 詳細ブログシリーズ
- 第1部:仮想基盤/共通基盤のジレンマと「運用の行き詰まり」
- 第2部:VCF 9 が提示する解決策「プライベートクラウドポータル」
- 第3部:VCF 9 の「次世代テナント管理」徹底解説
- 第4部:プライベートクラウドへの「VPC」の必要性とネットワークアーキテクチャ
- 第5部:アプリ開発者向け「セルフサービス IaaS」 体験(本記事)
- 第6部:「App Stack Formation」が実現するガバナンスとスピードの両立