このブログでは、VMware Cloud Foundation® 9 (VCF 9)の新機能である VMware Cloud Foundation® Automation(VCF Automation) を複数回のテーマに分けてご紹介していきたいと思います。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の最重要課題となる中、ビジネス部門からIT部門への要求は、かつてないほど「迅速性」を帯びています。また、セキュリティ対策の観点でもよりスピード感を持ったITリソースの更新や対応が求められるようになりました。
「新規プロジェクトのために、今すぐインフラが欲しい」
「競合に打ち勝つため、AI開発環境を即座に用意してくれ」
市場機会を逃さないために、こうした要求が出るのは当然のことであり、よりスピード感を持ってITリソースの利活用が活発化しています。
しかし、この状況に IT部門はしばしば板挟みになることがあります。安全な隔離を適切に実装するには、アクセス制御、コンプライアンスチェック、テストと検証が必要で、ITリソースに提供には数週間かかることがしばしばです。
この「スピード」と「セキュリティ」のジレンマこそが、多くの企業が抱える仮想基盤/共通基盤の運用で見えてきた課題です。
本シリーズでは、VCF 9 が、この根深い課題をいかに解決し、「シンプルなクラウドエクスペリエンス」を備えたモダンプライベートクラウドを実現するのかを複数回のテーマを使って詳細に解説します。
第1部となる今回は、従来の仮想基盤/共通基盤がなぜ「運用の行き詰まり」に陥るのか、その構造的な課題を深掘りします。
ビジネスの要求 vs ITの現実:具体的な衝突シナリオ
このジレンマがいかに現場を疲弊させているか、具体的なシナリオで見てみましょう。

💼 ビジネス部門(マーケティング部)「新しいキャンペーンアプリを3週間後にリリースしたい。ついては、3環境を今週中に用意してほしい」
- Web / AP / DB の3層構成
- 各ネットワークは分離
- 本番環境は外部公開必須
💻 IT部門(インフラ担当)「承知しましたが、今週中は不可能です。最短でも3週間は必要です」
▼ 必要な手動プロセス
- リソース見積もりと物理空き確認と設計
- NWチーム依頼(VLAN/IP払い出し)
- セキュリティ依頼(FW設定・申請)
- ストレージ依頼(ボリューム作成)
- OS導入・権限設定・テスト
この結果、ビジネス部門は「ITはいつも遅い」と不満を抱き、最悪の場合、情シスに無断でパブリッククラウドを利用する「シャドウIT」に走るケースも考えられます。一方、IT部門はガバナンスを守るために、複雑な手動プロセスに忙殺され疲弊している現実もあります。
従来の仮想基盤/共通基盤が抱える「3つの限界」
なぜ、このような非効率な事態が起きるのでしょうか。それは、従来のアプローチが構造的な限界を迎えているからです。
1. 手動セットアップ:数週間を要するプロビジョニング
前述の通り、新しいテナント環境の構築は膨大な手動作業の連続となります。これは単に「時間がかかる」だけでなく、「人的ミス」を多く誘発するリスクも多く抱えてしまうケースもあります。IPアドレスの入力ミスやFW設定漏れひとつで、重大なセキュリティインシデントや障害につながりかねません。
2. サイロ化した環境:統一性を欠いたセキュリティ
部門やプロジェクトごとにインフラが個別最適化(=サイロ化)された結果、環境全体がブラックボックス化してしまいます。「営業部門と開発部門でセキュリティポリシーがバラバラ」という状態は、管理工数を無駄に増大させ、アップグレードやパッチ適用のような運用業務を阻害する要因になったり、セキュリティホールを生み出してしまうケースにもなります。
3. 雪だるま式に膨れ上がる「複雑さ」
特にマルチテナント環境において、この問題は深刻となります。管理対象、ポリシー、パフォーマンス調整などは、テナントが増えるごとに指数関数的に増大することになります。例えば、10テナントなら管理ができても、100、200のテナント数になった際に管理が破綻してしまうのです。
俊敏性の欠如が招く「運用の行き詰まり」
これらの課題は、単なる作業負担の問題ではありません。ビジネスそのものを揺るがす深刻なリスクでもあります。
📉 IT部門へのダメージ
- リードタイムの遅延:ビジネスの「今すぐ」に応えられない
- コストとリソースの枯渇:手動運用に人件費の多くを消費
- チームの疲弊:慢性的な高負荷と、ヒューマンエラーの恐怖による高いストレス
⚠️ ビジネスへの悪影響
- シャドウITの蔓延:管理外のデータ保管による情報漏洩リスク
- 市場機会の喪失:インフラ準備の数週間の遅れが、競合からの市場投入競争の遅れに
- イノベーションの停滞:「守りのIT(運用)」が優先され、「攻めのIT(変革)」に手が回らない

本来、ビジネスの「推進力」であるはずのITが、その複雑さゆえに「足かせ」を招いていると言えます。これこそが、多くの企業が直面する「運用の行き詰まり」そのものです。では、果たして、「スピード」と「セキュリティ」は両立できないのでしょうか?本シリーズのブログを通して、こうした課題に VCF Automation がどのようにか利用できるかを1つ1つ解説していきたいと思います。
次回、第2部では、この根深いジレンマを解消するVCF 9 のソリューションの1つである、「VCF Automation」と「モダンクラウドインターフェース」について解説します。
VCF Automation 詳細ブログシリーズ
- 第1部:仮想基盤/共通基盤のジレンマと「運用の行き詰まり」(本記事)
- 第2部:VCF 9 が提示する解決策「プライベートクラウドポータル」
- 第3部:VCF 9 の「次世代テナント管理」
- 第4部:パプライベートクラウドへの「VPC」の必要性とネットワークアーキテクチャ
- 第5部:アプリ開発者向け「セルフサービス IaaS」 体験
- 第6部:「App Stack Formation」が実現するガバナンスとスピードの両立