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VMware Blockchain Emerging technology

ユースケースから理解するブロックチェーン(第四回:ASX 事例編)

はじめに

これまで第一回第二回第三回では、ブロックチェーンの基礎としてメリットや主要なビジネスモデルを例示しつつ、そのビジネスモデルを実現するための具体的なユースケースを事例と共にご紹介してきました。

今回は、ブロックチェーンの活用が進んでいる金融業界から「オーストラリア証券取引所様(ASX)」の事例をご紹介します。ASX 様は、VMware Blockchain をご採用いただいており、分散型台帳技術(DLT)をマネージドサービスとして提供する「Synfini」を新しく発表しました。

お客様からの実際の声を元に、このサービスが必要とされる背景や期待される効果、VMware Blockchain を選定いただいた理由を解説します。

以下は、グローバルの記事を日本語訳したものです。
(元の記事:ASX Drives Financial Services Innovation with VMware

 

オーストラリア証券取引所様(ASX)、VMwareのテクノロジーを活用し金融サービスのイノベーションを推進

オーストラリアの主要証券取引所である ASX は、VMware Blockchain を基盤とした新しい分散型台帳技術のサービスをスタートさせました。

 

オーストラリア証券取引所様(ASX)について

1800 年代からの歴史を誇る ASX は、時価総額は約 1.6 兆豪ドルにものぼるオーストラリアを代表する世界トップクラスの証券取引所です。上場、取引、清算、決済サービスに加え、様々なテクノロジーと取引後サービスを提供しています。

ASX は、顧客、 株主、投資家、企業をより良くサポートするために新しい技術を積極的に取り入れています。具体的には、業界全体のイノベーションの推進に向けてレガシーシステムを置き換え、ブロックチェーンの分散型台帳技術(DLT)を導入しています。

また、VMware Blockchain のプラットフォーム上に構築された DLT-as-a-Service の「Synfini」を発表し、独自のブロックチェーン環境をデプロイするコストと複雑さを軽減しながら、さまざまな業界のユースケースに対して新しい DLT アプリケーションの開発を加速できるよう取り組んでいます。

 

ブロックチェーンで金融市場の新しい道を切り開く

最初に暗号通貨をサポートしたことでよく知られているブロックチェーンは、ネットワーク参加者間の信頼を高めながら記録管理の効率を向上させる分散型デジタル台帳技術です。 ブロックチェーンは信頼できる唯一の情報源(SSoT)を作成することにより、関係者間で記録を複製する必要をなくします。

ブロックチェーンは、金融サービス業界にとって非常に大きな可能性を秘めています。たとえば、銀行業務や融資から資産管理、支払い、保険金請求処理に至るまで、このテクノロジーを適用することが可能です。ASX は、清算および決済システムをブロックチェーンソリューションに置き換えられると考えました。ブロックチェーンを使用することで、これらの重要な機能のスケーラビリティを大幅に改善し、効率を向上させることができます。

同時に、ASX のリーダーシップチームは、金融サービスやその他の産業におけるブロックチェーンの普及を促進することが、多くの組織やその顧客に利益をもたらすと考えていました。そこで、組織がコストを削減しながら革新的な DLT アプリケーションの開発を加速できるような DLT-as-a-Service の計画をスタートさせました。

その新しいサービス提供を構築し、清算・決済システムのリプレースを進めるためには、パブリックブロックチェーン以外にも目を向けなければならないことを ASX のリーダーシップチームは理解していました。「パブリックブロックチェーンでは、スループット、安定性、予測可能性、サポート性などの要件を満たすことができません」と、ASX のグループエグゼクティブ兼 CIO のダン・チェスターマン氏は言います。「アプリケーションやプラットフォームのサポート、そして開発を継続的に進めていくためには、ベンダーの支援が不可欠です」。

 

VMware が提供するエンタープライズクラスのブロックチェーンの実装

パブリックブロックチェーンの制限を回避しながら DLT を活用するため、ASX は、清算・決済システムをリプレースするプロジェクトと新サービス提供の両方に、VMware の最新かつエンタープライズクラスのブロックチェーンプラットフォームを採用しました。VMware Blockchain は、規制の厳しい金融サービス業界で求められる信頼性と安全性を提供します。さらに、取引量の増加に対応するスケーラブルなパフォーマンスと、複数のクラウドを利用できる柔軟性を備えています。

ASX は、VMware Blockchain を基盤として、Digital Asset が公開する最新のオープンソースプログラミング言語である Daml でコーディングされたスマートコントラクトアプリケーションを導入しています。Daml を使用することで、開発者が新しい分散型ソフトウェアアプリを迅速に作成、提供することが可能です。

ASX は、VMware Blockchain と Daml を活用し、新しい DLT-as-a-Service である Synfini を構築しました。Synfini は、ブロックチェーン向けの革新的な DLT アプリを作成するために必要な、インフラ、プラットフォーム、ソフトウェア、接続サービスのすべてを提供します。Synfini を利用することで、各組織がそれぞれの環境に投資、運用、サポートすることなく、新しいアプリの提供をより迅速に開始できます。

チェスターマン氏:
「VMware と Digital Asset のテクノロジーを利用することで、オーストラリアの金融市場インフラのモダナイゼーションと変革に貢献できると考えています」

「両社が提供するスマートコントラクトや DLT に関する専門知識と、ミッションクリティカルかつエンタープライズクラスのソフトウェアやソリューションを提供する VMware が培ってきた知見は、私たちの成功に欠かせないでしょう」

 

信頼の強化とコラボレーションの促進

ブロックチェーンテクノロジーは、多数のネットワーク参加者に台帳を分散させることで、金融資産やその他の情報を交換する際の当事者間の信頼を強化します。ある参加者の記録管理システムが破られたとしても、他の参加者と取引記録は変更されず有効性は維持されます。

VMware のエンタープライズクラスのブロックチェーン技術を基盤とする Synfini は、接続されたマルチパーティーネットワークから、アプリケーションを容易かつ効率的にビルドし立ち上げることができる、フルサービス型の DLT as a Service を提供します。

ASX DLT Solutions ゼネラルマネージャー Paul Stonham 氏:
「VMware Blockchain と Daml スマートコントラクトを組み合わせることで、同じワークフローの参加者間で権限を付与しプライバシーを確保できます」

「競合他社であっても、信頼とプライバシーの両方を備えた分散型台帳で共同作業ができるようになりました。  多くのマルチパーティワークフローにおいて、時間とコストを節約できると考えています」

 

効率性の向上

Synfini により、アプリ開発者は、顧客のトランザクションの効率を高めることができます。Synfini 上で動作するアプリを使用している組織では、データの冗長化、手動によるワークフロー、データベースやスプレッドシート間の整合性管理などを回避することが可能です。これらのタスクに携わるスタッフには、リアルタイムで不変の監査証跡にアクセスする権限が付与されます。もはや、時間とコストのかかる調整プロセスを管理する必要はありません。

「私たちは、業界の効率化に役立つサービスを提供することを目指してきました。信頼できる唯一の情報源(SSoT)を許可された方法で共有することができれば、より効率的に取引を行うことができるはずです」(チェスターマン氏)

 

革新的なソリューションのための基盤の提供

Synfini の利用は、金融サービス業界に限定されるものではありません。「Synfini は、金融市場の内外を問わず、企業が ASX の世界レベルの台帳上で革新的なデジタル・マルチパーティ・ソリューションを設計・構築するための新しい世界を切り開く可能性を秘めています」とチェスターマン氏は言います。

開発者は、業界を問わずアプリマーケットプレイスでアプリをホストすることができ、そこで何千もの潜在顧客やユーザーとつながることができるのです。

KPMG は、ニューサウスウェールズ州政府向けに新しいビジネス・アシュアランス・アプリを開発した、アーリーアダプターの一社です。このアプリは、建物が建築基準法に規定されたとおりにすべての適切な材料を使用して建設されたことをエンドユーザーに保証するものです。

Broadridge も Synfini と共同開発を進めています。グローバルに事業を展開するフィンテック企業である Broadridge は、ある当事者から別の当事者へ市場外での株式譲渡をデジタル化するためのアプリを開発しています。

ブロックチェーン・ジャーニーの推進

Synfini のエコシステムが急速に拡大する一方で、ASX はレガシーな清算・決済システムを Synfini と同じ VMware と Daml のテクノロジーをベースとするプラットフォームでリプレースプロジェクトを進めています。「私たちは、この種のシステムを頻繁に交換するわけではありません。VMware と Digital Asset との協業を通じ、金融サービス市場に長期的な価値をもたらす基盤を導入できたと確信しています」(チェスターマン氏)

 

まとめ

上記にご紹介したように、ASX 様の事例で特筆すべき点は、既存のトラディショナルなシステムの刷新という金融業界のブロックチェーンでは一般的なユースケースだけでなく、DLT as a Service という業界全体のイノベーションを加速するための、革新的なサービスの提供を開始したことです。

DLT as a Service により、参加企業は以下のような恩恵を得ることが可能です。

  • 迅速な分散アプリの開発・実行(ブロックチェーン基盤の用意は不要)
  • DLT  により信頼性・プライバシーが担保された共同作業の実現
  • 各データの調整コスト削減による作業効率化

 

DLT as a Service は、ブロックチェーンにおけるマルチパーティという特性をフルに活かせるだけでなく、金融業界以外にも分散アプリケーションの世界が広がるエコシステムとしての一面を持つことが特長です。

そして、このプラットフォームとして、パブリックではなくプライベートなブロックチェーンが最適と判断された背景には、VMware Blockchain が持つエンタープライズクラスの性能や拡張性、サポートといった強みが理由となっています。

 

次回

今回は金融業界でのブロックチェーン事例をご紹介しましたが、ブロックチェーンのビジネスモデルは様々な業種で検討・プロジェクト化が続々と行われています。

次回以降も、そういった様々な業種別のユースケースをいくつかご紹介していく予定です。