はじめに
前回の第一回では、ブロックチェーンの基礎としてメリットや主要なビジネスモデルを例示しつつ、VMware とブロックチェーン関連性について記載しました。
第二回以降では、上記ビジネスモデルを実現するための具体的なユースケースを事例と共にご紹介し、よりブロックチェーンの活用イメージを膨らませていただければと考えています。
今回は、第一回で例示したビジネスモデルパターンごとに以下の4つの一般的なユースケースをご紹介します。どれも実際に海外でプロジェクト化され、実証されている事例を元にしています。
ユースケース | 業種 | ビジネスモデルパターン |
---|---|---|
① 契約 | 金融・不動産 | トラストレス |
② サプライチェーン | 製造・流通 | 共有・可視化 |
③ 証書発行 | 文京(大学など) | 共有・可視化 |
④プラットフォーム(NFT) | コマーシャル | プラットフォーム |
ユースケース①:契約
金融業界とブロックチェーンの関連でいうと、仮想通貨のイメージがあるかと思いますが、実は違った視点でもブロックチェーンの検討が進んでいます。
金融業界や不動産業界では、様々な契約業務において大量のペーパーワークが存在しています。
例えば金融商品の売買であったり、不動産の売買など、複数の関係者が絡む上に署名押印による承認が必要なため、作業効率やデータの完全性が常に懸念されています。
こういった金融商品、不動産などの大量のペーパーワークをブロックチェーンに置き換えることで作業を簡略化し、さらにスマートコントラクトの活用により、中央集権的な仲介者なしで安全に自動契約することが可能になります。
- 売却者のメリット
- 手数料や契約に関する書類作業コストが掛からない
- 購入者のメリット
- 手数料や契約に関する書類作業コストが掛からない
- 仲介者のメリット
- 低コストな管理
- 詐欺などの防止
ユースケース②:サプライチェーン
製造業においては、ひとつの製品を作り上げるまでに非常に多くのサプライヤー(部品供給者)が絡むことになります。その部品の受け入れ検査や製品化後の問題発生時の所在確認において、部品の来歴を事細かに記録しておくことが重要です。さらに、証拠能力を持たせるためにはデータが改ざんされていないことを証明する必要があります。このことからブロックチェーンの特長を非常によく活かせるユースケースのひとつと考えられています。
流通業においても「食の安全性」に代表されるように、消費者の元に届くまでの食品トレーサビリティを確保することが重要になっています。ブロックチェーンにどの業者が何をしたのか流通の流れを全て記録し、消費者が必要な情報にアクセスして確認可能とすることで、透明性に優れた食の安全性を確保することが可能になります。
このように製造や流通において、各事業者がこれまで個別に保持していたデータベースをブロックチェーン化することで、データの完全性が保証された状態で共有・統合管理できるメリットが得られます。
- 消費者のメリット
- 製造〜手元に届くまでが可視化され、安全性を確認できる
- 販売店のメリット
- サプライチェーンに関わる業者の偽装を防御
- 製造業者のメリット
- 共有データベースによるコスト削減
ユースケース③:証書発行
大学における書類手続きにおいて、卒業証書の発行は頻繁に発生することに加えて書類押印による承認が必要なため、作業効率化が期待されている業務のひとつです。
文書のデジタル化はこれまでも検討されてきましたが、証書となると正しい人が正しく承認した「確らしさ」を証明する必要性が出てきます。そこで、卒業証書をデジタル化した上で承認の履歴と共にブロックチェーンに保管するというユースケースが検討されています。
ブロックチェーン上に格納した証書を共有利用可能にすることで、例えば卒業生が任意のタイミングで自分の卒業書を取り寄せることや、企業側の採用担当が卒業証書が正しいものが検証することも可能になります。
この証書のユースケースは大学だけでなく、公共機関でも検討が進んでいます。海外ではバイタルデータ(日本でいうところの住民票や出生届などの公的書類)をブロックチェーンに保管し、利用者が申請して所得可能になるようなシステムが実際に稼働しています。
サプライチェーンと同様に、データの完全性が保証された状態で共有・可視化できるブロックチェーンの特長と相性が良いということになります。
- 大学のメリット
- 学位情報の安全な保管
- 証書発行の作業コスト削減
- 学生/卒業生のメリット
- いつでも証書発行できる利便性
- 企業(採用担当)のメリット
- 信頼できる提供元からの証書入手
ユースケース④:プラットフォーム( NFT )
NFT( Non-Fungible Token )は、ブロックチェーンにそこまで詳しく無い方でもご存知なようにかなり浸透してきたワードかと思います。NFT はブロックチェーン上で発行される非代替性(他に替えが効かない)トークンのことです。これまでデジタルデータは簡単に複製ができるため、所有者が特定できずに価値は生まれづらいという状況にありましたが、NFT により一つのデータに唯一性(ある人が作成した、あなただけのモノ)を付与することができるため、デジタルデータに希少性という価値が生まれ、作成者・購入者の間で大きなマーケットが形成されようとしています。
特に日本においては、ゲーム・アニメ・漫画・カードなどデジタルコンテンツ力が非常に強いため、海外から見てもNFTのマーケット市場が盛り上がるのではないかと注目を集めている分野でもあります。
企業としては、こういったデジタルコンテンツのNFT トークンを発行し売買するプラットフォームを構築することで、新たな独自市場を形成することが可能です。
- 企業(プラットフォーム運営)のメリット
- 自社のコンテンツを流通、利用料の収益
- 次世代クリエーターの発掘
- クリエーターのメリット
- 作成したコンテンツを販売でき、二次流通(中古)でも報酬を受けとれる
- ユーザのメリット
- 唯一性のあるコンテンツを購入し、ユーザー間での交換も可能
VMware Blockchain はユースケースを実現するためのプラットフォーム
これまで紹介したユースケースを実際に構築するとなった際に、どのようなブロックチェーンプラットフォームを選ぶか、という点がまず最初のステップになります。
ユースケースは全てエンタープライズ用途を想定したものになっています。もちろんブロックチェーンはエコシステムとしても成り立っているので、必要なコンポーネントを無償ソフトウェア等で組み立てて構築することも可能です。
しかしながら、エンタープライズ向けに構築運用をしていくためには、例えばトランザクションを処理するためのネットワークの性能や、悪意あるノードへの対処、耐障害性、運用監視、トラブル時のサポートなど包括的なソリューションが必要と考えています。
VMware Blockchain では、このようなエンタープライズ向け利用を想定したプラットフォームをご提供可能です。
もしご興味がある方はお気軽にご連絡いただければ幸いです。